第19話

『グレッグ様、お待たせしてすみません』


私はグレッグ様に軽く頭を下げる。


「いや。待ってない。大丈夫だ。気に入ったものは見つかったか?」


グレッグ様は、そう言って立ち上がると、私へと近づいて来た。



『はい。』


私は笑顔で答えた。


「そうか。それは良かった」



グレッグ様も軽く微笑んでいた。


「では次は…スイーツ系の店だったか。決めた店があるのか?」


『いえ、特にどのお店とは決めてなくて。

あの辺りを見てから考えてもいいですか?』


私は気になる方向を手で示した。


「あぁ。では行こうか」


私達は一緒に歩き出した。


「荷物を」


『いえ。これは、大丈夫です。

ありがとうございます。』


「…」


グレッグ様は私の荷物を持とうとしてくれ

たのだけど、これは、自分で持っていたくて…お断りしてしまった。




スイーツ系のお店が立ち並ぶ通りは、人も多くて賑わっていた。順番待ちで並んでいる人も多かった。 


『甘い匂いがしますね。これだけあると、悩みますね』


「そうだな」   


『あまり人が並んでない所はないでしょうか』


「人が多いお店の方が人気があるのではないか?」


『えぇ。そうなのでしょうけど…』


私は言い淀んでしまった。

グレッグ様を付き合わせて、長時間並ばせるのが申し訳ない。 


「ソフィア…?」



『グレッグ様は…

お時間大丈夫ですか?』


私は正直にお尋ねした。


「ハハ。ソフィア、もしかして私を気遣ってくれたのか? 

前にも言ったと思うが、今日は休みだ。それに、ソフィアに付き合うと言ったのは私の方だ。」


グレッグ様は、そう言って私の手を取り歩き出す。私は驚いて、自分の手とグレッグ様の顔を交互に見る。


「では、この店に並ぼう。」


『こ、ここですか?』


「あぁ。」


グレッグ様は私にしか聞こえないように、耳元に近づいてきた。


「この店は、並んでいる人数が3番目に多い。この辺りには6軒店があるようだから、ちょうど真ん中だ。

 

ソフィアは、私を並ばせたくないようだし、私は別に構わないと思っている。だからお互いの意見を尊重した結果だ。」



私は耳がくすぐったくて、赤面しながら手で押さえる。


『えっ?か、数えたのですか?』


「あぁ。」


グレッグ様はなんでもないことのように言った。


『そ、そうですか…

ありがとうございます。』


いったいいつの間に、この人数を?と疑問が湧いたけど、それ以上何も言えずに、お言葉に甘えることにした。


私達は、お互いにどんな食べ物が好きか、とか他愛もない話をしていた。グレッグ様は甘いものもお好きらしい。

話していたので、待ち時間はあまり長く感じなかった。



私達が並んだお店は、チーズケーキ専門店だった。様々なチーズ系のケーキが並んでいた。


私はルイーザさん達へのお土産に買いたかったので、自分の分も含めて、3つ購入することにした。

グレッグ様も何か購入されていた。


「ソフィア、喉が渇いてないか?飲み物を買ってくる。少しあそこのベンチで待っていてくれ。」


『私が買ってきます』


「いや、私が行く方が早い。ソフィアは休んでいてくれ。」


『あの…。分かりました。よろしくお願いします』



私はグレッグ様を見送り、ベンチへと向かった。











  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

傷だらけの令嬢〜逃げ出したら優しい人に助けられ、騎士様に守られています〜 涙乃(るの) @runo-m-runo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ