第3話 初めてのラスソン
隣のララミーさんの体温を温く感じる。僕はさっき見たヒカルドさんの接客を思い出していた。まずは褒めるところから始める。
「ララミーさんの瞳も綺麗ですね。僕がいたところでは青は珍しかったのでとても印象深いです」
「そ、そうか。いや。まあ。普通だと思うが。お前ほどじゃない」
なんか戸惑っているけど、照れ隠しに見える。最初のステップはクリアっぽい。
「お前は新人だといったな?どこから来たんだ?」
「えーっとその東の方から」
「東の方?魔王占領地域?!いやその緩衝地帯か。それはさぞ苦労しただろう」
なんか勝手にいい感じに解釈してくれた。
「そうです。苦労したんです」
「そうか」
ありゃ?話がとぎれちゃった?いかんな巻き返さないと、と思ったが向こうから声を出して来た。
「いくら生活が苦しいとはいえ、お前のシスターたちはこんなところにお前を放り込んだのだろう?私にはそれが許し難く感じるのだが」
ララミーさんなんか怒ってる。
「でもあんまりいい思い出ないので、僕的には構いません。ここで働けて幸せです」
「そうか…健気なんだな…」
なんかしみじみしている。これでいいのかな?と思った時だった。視界の隅にフリップを持ったヒカルドさんが見えた。フリップにはこんなの描いてあった。
『他の女の悪口をいったあと、優しいって褒めろ』
なんだそれ?でも指示だし、やるしかないか。
「ただそうですね。生活よりも女の人たちが大変でした。変な服を着させたり、スカートはかせてきたり、スカートの中を下敷きで仰がせたり…そんなことばかりさせられてました」
嘘はついてないよ。
「なんだと!?なんてことだ!男子は大切にしろとそいつらは習わなかったのか!同じ女として今すぐに懲罰してやりたい!」
ララミーさんは真剣に怒ってくれているようだ。結構ジーンときた。あのときは誰も助けてくれなかった。誰もが遠巻きに見ているだけだった。
「ララミーさん、僕のために怒ってくれるんですね。優しいんですね」
「そ、そんなことない!当たり前のことを言っているだけだ!」
視界の端に映るヒカルドさんがフリップを捲る。
『でも仕送りしなきゃいけないんです。あんな奴らでもシスターだから』
僕は例によって支持されたとおりに。
「でも仕送りしなきゃいけないんです。あんな奴らでもシスターだから」
「そんな奴らにも家族の義理を重んじるのか。私は見誤っていた。ホストなんてクズしかいないと思っていたけど、お前は、ウェリントンは違うんだな」
そしてララミーさんはメニュー表を取ってきて、100万円もするボトルを注文した。
『出たー本日最高額!なんと今日がデビューの新人君だぁ!その名はウェリントン!みんな集まれ!』
「「「「「うおおおおおおおおおお!!」」」」」
ホストたちが僕たちの卓に集まってきて拍手と歓声を上げる。ララミーさんはそんな光景の中で恥ずかしそうに俯いていた。
「顔上げてください。僕はララミーさんのお陰で助かってるんですから」
「そうなのか?私がお前の助けになっている?そうなのか…ふふふ」
『はいそれでは姫様から一言いただきたいと思います』
ララミーさんにマイクが渡された。最初はおどおどしていたけどきっと顔を真剣にして叫ぶ。
「がんばれウェリントン!!」
『まっすぐなお言葉に感動しました!王子様から一言3・2・1』
何の準備もない。
『ありがとうララミーさん。僕は君のお陰で輝けるよ』
『ナイスコンビネーション!ホストとそれを支える姫様にエールを送れ!!』
「「「「ひゅひゅううううううううう!」」」」
盛大な拍手と歓声が僕たちを包む。今この瞬間は僕たちが主人公だった。
そしてその日のラストまでララミーさんと他愛無いお喋りをしていた。そしてラストオーダーの時間になったときにヒカルドさんとメイドさんがやってきた。
「おめでとナンバーワン。ラスソンはお前だぞ」
「なに?!ウェリントンがナンバーワン?!」
ララミーさんがとても驚いていた。
「そうだよ。お姉さんが頑張ったからウェリントンが一番だったんだラスソン楽しんでって」
そう言ってマイクだけ置いてヒカルドさんは颯爽と去っていった。でも歌って何歌えばいいの?カラオケマシーンを弄っても知ってる曲なんて出て来やしねぇ。だから仕方なく僕は立ち上がって。
「オリジナルソング歌います」
僕は現実世界の知ってるアニソンを歌った。みんな僕の歌を邪魔せずに聞いてくれた。
「ウェリントン。素敵」
ララミーさんは瞳を濡らしながら僕の歌を聞いていた。そして歌が終わると拍手が巻き起こる。こうして僕は今日のナンバーワンをゲットしたのであった。
ララミーさんを外まで見送った後、僕はヒカルドさんに肩を抱かれて頭を撫でられた。
「あの童貞姫騎士を墜とすなんてやるじゃねぇか!あいつ絶対お前にハマったぞ。S級冒険者だしまた来るぞ!ちゃんと太い客に育てろよ!」
そうかなんか普通に話してたつもりだったけどララミーさんはお客さんなんだ。そして僕はホスト。そのことに改めて違和感を感じた。本当にここは異世界なんだと実感した。僕は今日女の子からお金を巻き上げたのだ。そのことに高揚感と一抹の寂しさを覚えたのだった。
作者のひとり言
よかったら★★★とかコメントとか入れてってください。待ってます。
男女比1:1000の異世界でチートスキル【オラオラ営業】でナンバーワンホスト目指します!~童貞姫騎士は僕の財布~ 園業公起 @muteki_succubus
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。男女比1:1000の異世界でチートスキル【オラオラ営業】でナンバーワンホスト目指します!~童貞姫騎士は僕の財布~の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます