不死の龍
ドラゴンは飛び立つと、大きく息を吸い込んだ。
(嫌な予感がする……)
そう思った刹那、ドラゴンは緑の火球を吐き出した。
「やばっ!!」
死を覚悟して目を瞑った。
しかし、死ぬことは無かった。
「蓮、大丈夫?」
どうやら半透明の壁を前方に展開して守ってくれたらしい。
「何とか大丈夫です!」
俺は何も出来てないな……
「しぶといねぇ!」
「これくらい余裕!」
氷柱のスピードは少し遅くなっている。
少女は焦燥感に駆られているように見えた。
(魔力が尽きそうなのか……?)
再び龍の火球が飛んでくる。
彼女は手を火球に向けると、魔法陣が現れた。
その直後、半透明な壁が現れた。
しかし、ガラスが割れるような音が鳴り響いた。
「ごめん……」
魔力で作られた障壁は砕け散ったようだ。
(何か手は無いのか……?)
俺はスケルトンに胸を貫かれた時の事を思い出した。
(あの時、時計を想像して戻って欲しいと願った)
「って事は!」
俺は手を突き出して時計を想像する。
「戻れ!」
魔力を込めながら、火球に手を触れた。
手の皮膚は焦げていった。
だが、痛みに負けずに時計の針が反対に戻ることを想像をした。
「な、なんだとぉ……!?」
緑の火球は空中で消滅した。
「ナターシャさん!」
「任せて!」
少女は一瞬で死霊術師に近付いた。
「これでも喰らえ!」
彼女は至近距離で手を敵に向ける。
すると、氷柱は敵を貫こうとした。
しかし……
「遅いんだよぉ!」
再び防御魔法で防がれた。
すると、砕けた氷は霧の様になった。
(今しかない!)
俺は敵の背後に迫り、敵に手をかざした。
「なっ!?」
魔法陣が現れる。
きっとファイアーボールなら防がれるだろう。
「無属性攻撃魔法っ!」
俺は魔力をそのまま飛ばした。
「がはっ……」
骨が崩れる音が廊下に響き渡った。
「やったね!蓮!」
「おう!」
その時、モルスは骨だけになっている事に気が付いた。
(俺の火力高ぇ!
……ってそんなわけないだろ!)
恐らく元から骨だったのだ。
まるでスケルトンのように。
「モルスって人間じゃないのか?」
「ん?魔王軍の四天王は全員魔族だって聞いたよ?」
心臓が早鐘を打った。
「魔族って事は、体が骨な訳ない……よな」
少女は頷こうとした。
だが、頷く首が無かったらしい。
「四天王がこんなに弱いわけ無いだろぉ!」
階段から知っている口調の男の声が聞こえてきた。
俺はただ飛んでいく少女の頭を眺めた。
理解出来なかった。
いや、しようとしなかった。
「今のはただのアンデッドさぁ!
本体はこの僕だよぉ!」
フードを深く被った男が再び現れた。
(無理ゲーじゃん)
どうしようも無い状況に笑ってしまった。
「気でも狂ったかぁ」
俺を嘲笑った。
「……次はぶっ倒してやるよ」
「次ぃ?」
俺はただ窓から見える月を眺めた。
紫色の光線が体を貫いた。
「呆気ねぇな……
本当に殺せたのかぁ?」
彼は殺した勇者の死体を眺めた。
「……魂がねぇ」
彼は頭を全力で回転させた。
その結果、一つの答えに辿り着いた。
「次ってそういう事か」
時の勇者はそろそろ勝ちたい……!~時間魔法が弱すぎる件~ @kumayarooo
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