死者の王
「火の精霊よ
火球で敵を燃やし尽くせ
ファイアーボール!」
俺は詠唱を終えると、スケルトンの大群に火球を放った。
「よし!」
火球は一体の骸骨に当たると、その骨を砕いた。
(訓練の成果出てるな!)
「やるな!蓮!」
どうやらファイアーボールは無属性の攻撃魔法より威力も命中精度も高いらしい。
「あたしも負けてられないね!」
少女は手を下から持ち上げると、同時に地面から無数の氷柱が現れた。
それはスケルトン達の体を貫いた。
「すげえ!」
俺は思わず声をあげた。
「蓮もいつかあたしみたいになってね!」
彼女は微笑んだ。
その時だった。
「凄いよなぁ宮廷魔術師様は!」
氷柱の奥から声が聞こえてきた。
「誰だ!?」
ナターシャそう言った。
「魔王軍、四天王が一人モルスだぁ」
氷柱の隙間から杖を持った男が見える。
フードを深く被っていて、顔が見えないが声で男だと分かった。
「ところでぇ、他の勇者いねぇんだけどぉ!?
話が違うんだけどぉ!」
「さあ、どこだろうな!」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
2時間前……
「こんな時間に集めてどうしたんだ?」
「実は、夜にモンスターが出てくる。
だから、避難してくれないか?」
「本当なんですかー?」
桃色の髪の少女が尋ねる。
「澪、こんな真剣な顔で言ってるから本当だろ!……多分」
「海人君ってすぐ人に騙されそうだねー」
「う、うるせぇな!」
「直美も逃げてくれるか?」
「逃げるのはいいけど、蓮はどうするの?」
「俺は……戦うよ」
「どうしても?」
「ああ。勝算はあるぜ!」
本当は嘘だ。
勝てるかどうか分からない。
けど、俺なら負けた時にやり直せる。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「ちっ!まあいい!
ここに勇者一人はいるんだからなぁ」
その時、彼から発せられる魔力が強まったように感じた。
(やべぇかもな……)
「蓮、逃げろ!
ここはあたしが食い止める」
「逃げるわけないだろ!
俺ならやり直せるから気にすんな!」
俺は弱いから出来る事は少ないかもしれない。
でも、万が一にも備えて逃げるという選択肢は無かった。
「……分かった
でも、逃げたくなったらいつでも逃げていいんだからね」
「お話は以上かなぁ?」
杖が紫色に輝いた。
「何だ!?」
床が振動した。
すると、粉々になった骨が集まり、骸骨を形成した。
そして、再び動き出した。
「何体召喚されても相手にならないよ!」
ナターシャは氷柱を生成して飛ばした。
骨が砕ける音が何度も響く。
「どうやらそうみたいだねぇ」
モルスは骸骨に隠れながらそう言った。
「術者を攻撃しましょう!」
俺は提案した。
「分かった!」
その瞬間、少女は消えた。
すると、モルスの真上に現れた。
「風魔法まで無詠唱で使えるのかぁ!
おっかないねぇ!最近の魔術師はさぁ!」
少女が下に向けて氷柱を放つと、
モルスは半透明の壁を上に出して守った。
(防御魔法か……!?)
俺は今がチャンスだと思った。
「火の精霊よ!
火球で敵を燃やし尽くせ!
ファイアーボール!」
なけなしの魔力で火球を放つ。
「遅いよぉ」
再び魔法防がれてしまった。
「もう終わりかぁ?」
その刹那、杖は眩しく輝いた。
「スケルトンなら余裕ですよ!」
彼女は俺のところまで戻ってくると、そう言った。
「ははは!
スケルトンな訳ねぇだろぉ?」
何度も「カランカラン」と骨がぶつかり合う音が聞こえてくる。
すると、骨は集合して一つの物を形成した。
「ドラゴン……?」
「正解!アンデッドドラゴン!
僕が召喚出来る中で最強のアンデッドさぁ!」
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