ハピネスホルモン戦隊 エンジョイファイブ
koyuki
第1話「完璧な生活」
SNSの「完璧な投稿」
ある朝、スマホの画面がキラキラと光っていました。まるでそこには、夢の中の世界が広がっているみたいです。笑顔の女の子たちが、カフェでおしゃれなドリンクを楽しんでいる写真が見えました。「おはよう!」と、元気いっぱいに始まるメッセージ。次の写真には、まるで雑誌から飛び出してきたみたいに、綺麗に片づけられた部屋が映っています。
その部屋の主は、きれいな朝ごはんの写真もアップしていました。ふわふわのパンケーキに、色鮮やかなフルーツがたっぷりのっています。「これが私の朝のルーティーン!」と、その投稿に書かれていました。
続けて、青い海が広がるビーチで、友だちと一緒に笑顔でポーズをとる写真が流れてきます。まぶしい太陽の下で、みんな楽しそうです。誰もが幸せそうで、なんの悩みもないように見えます。
スマホの画面をスワイプすると、次から次へと「完璧な生活」が目に飛び込んできます。みんな、なぜこんなに素敵な毎日を過ごしているんだろう?一緒に遊ぶ友だちや、楽しい旅行先、美味しそうな食べ物…どれもこれも、まるで夢のように輝いて見えました。
スマホを手にした小学5年の少女は、少し眉をひそめながらスクロールを続けます。さっき見た美しい朝ごはんの写真を思い出して、自分の朝を振り返ります。彼女の家の食卓の上には、急いで食べたトーストのパンくずがまだ残っていました。
「なんで、みんなこんなにすごい生活をしてるんだろう…」
心の中で、ふっとため息をつく。最近は学校も大変で、家に帰っても疲れ切ってしまい、そんな素敵な朝を過ごす余裕なんてありません。部屋の片づけも、やるべき宿題も山積み。SNSに映るみんなの「完璧な生活」と、自分の毎日が全然違って見えてしまいます。
「私も、もっと頑張らなきゃ…」
少女はスマホを手放し、無意識に自分と比べてしまっていることに気づきました。友だちが楽しそうに笑っている写真や、遠くの国へ旅行に行っている投稿を見ていると、自分が何かを見逃している気がして、心がざわざわしてきます。
他の子たちはみんな輝いて見えるのに、自分はどうしてこうなんだろう?少女の心の中に、じわじわと焦りが広がっていきます。
その頃、街の上空には黒い雲がゆっくりと広がり始めていました。誰も気づかないけれど、その雲の中には悪の力が潜んでいます。ストレスキングが、人々の心に入り込むための手を伸ばしているのです。
「フフフ…見せかけの平和が何よりも良いのさ…」
ストレスキングは、影の中で微笑んでいました。彼が手をかざすと、SNSの画面に映る「完璧な生活」がさらに輝きを増していきます。朝のキラキラとした投稿、華やかな食事、楽しい時間を過ごす友だちの笑顔…。それを見つめる人々は、少しずつ、しかし確実に心に負担を感じ始めていました。
「もっと良く見せなきゃ…私も、みんなみたいに…」
一人、また一人と、人々は無意識に自分を装うようになります。自分の本当の気持ちを隠し、誰かに認めてもらうために「完璧さ」を追い求める。ストレスキングの策略は、まるで風のように、そっと人々の心に忍び込み、心の奥底で不安を倍増させていきます。
スマホの画面を見つめる瞳が少しずつ暗くなり、ため息が増えていく。ストレスキングはそれを遠くから見守りながら、ゆっくりと不気味な笑い声を響かせます。
「ハハハ…そのまま、もっと苦しめ…もっと自分を見失え!」
彼の笑い声は誰にも聞こえませんが、その影響は確実に街に広がり、人々の心のバランスを崩していきました。外見は何も変わらないけれど、内側では徐々にストレスが溜まり、心の中に重くのしかかる影が濃くなっていくのでした…。
朝の通勤電車の中で…
大学新卒、希望を胸に4月に希望通りの商社に就職した男は、いつものように朝の通勤ラッシュに揉まれながら、満員電車に乗り込んでいた。身動きが取れないほどぎゅうぎゅう詰めの車内。隣の乗客の肩が自分の顔のすぐ近くに迫り、呼吸すら窮屈に感じる。
「今日も遅れたらまずいな…」
男は心の中でそうつぶやきながら、スマホを握りしめる。新卒で入った会社。慣れない仕事に四苦八苦しながら、周りに遅れを取らないよう、毎日必死に頑張っている。けれど、その頑張りがいつも報われるとは限らない。
電車が大きく揺れた拍子に、男はふとスマホの画面に目を落とした。SNSを開くと、同期や友人たちが次々と投稿している「充実した生活」が映し出されている。高級レストランでの食事、綺麗に整ったオフィス、週末に楽しむ旅行の写真。
「みんな、なんでこんなに余裕があるんだ…?」
男の胸に、またしても重くのしかかる感覚が広がる。自分は、毎日朝早くから夜遅くまで働いているのに、こんな余裕なんて全然ない。家に帰れば疲れ切って、ただ寝るだけの日々。週末の予定も、最近は何も楽しめていない。
「もっと自分を磨かなきゃ…こんな生活じゃ、ダメだ…」
心の奥底に、誰かに負けたくないという焦りが燃え始める。自分ももっと頑張らなければ、この「完璧な生活」を送っている周りに追いつけない、そんな気持ちが強くなっていく。男の心の中で、知らず知らずのうちにストレスが膨れ上がっていく。
電車の揺れとともに、男は無理やり身体を押し込められ、頭の中では仕事のことがぐるぐると回り続けていた。プレゼンの準備、上司の評価、取引先とのやり取り…。すべてが自分を追い詰めるように重くのしかかり、ふと、遠くから聞こえるストレスキングの低い笑い声が、彼の耳元に響いた。
「フフフ…そのまま、もっと追い詰められろ…」
男はその笑い声を聞き取ることはできなかったが、心の中に積もっていくストレスの重みは、確実に感じていた。
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ハピネスホルモン戦隊 エンジョイファイブ koyuki @mtg3453
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