第3話 レイトショーデート



4月9日予備校の授業が終わり徒歩で梅田うめだのビッグマン広場へと向かっていた。ビッグマン広場には大きな紀伊國屋きのくにやがあり、店頭にはカイトが興味のある生物の新刊の学術書がくじゅつしょが置いてあった。澪を待っている間、試し読用の学術書を読んでいると


花澤澪はなざわみおなに読んでいるんですか?」

白鳥しらとりカイト「ネイチャーっていう雑誌を、って澪ちゃん。」

花澤澪「澪ちゃんって可愛いですね、でも澪でいいですよ。生物雑誌ですか、私もたまに読みますよ。」

白鳥カイト「気が合うな、俺も未来の生物がどうなっていくのか楽しみで読んでるんだけど。って、映画の時間大丈夫だっけ?」

花澤澪「大丈夫ですよ、それに朗報ろうほうです、今日見にいく映画SFですよ!!」

澪・カイト「やったーーーーーーー!!!」

花澤澪「タイトルは『地底人宇宙ちていじんうちゅうく』です。」

白鳥カイト「おお!地底人が宇宙、、、宇宙?」

花澤澪「ええ、そうです宇宙に行くんです。」

白鳥カイト「地底人が?」

花澤澪「地底人がです。」

白鳥カイト「なんか、おふざけサメ映画の匂いがしてきな。」

花澤澪「いえ、監督はスタンリー・ロック・カットです。」

白鳥カイト「スタンリー作品は大好きだけど、この作品の監督の名前マイケル・ジェファーソンだったよな?おふざけサメ映画作ってる監督の名前だと記憶してるんだが。」

花澤澪「私の知った情報によりますと、監督はマイケルですが、副監督にスタンリーがクレジットに載ってるんです。これが何を意味するか分かりますか?」

白鳥カイト「マイケルがスタンリーの傀儡になったんだな。」

花澤澪「そうです。実質この作品はスタンリー作品なんです。」


実際にミオの情報は正しく、スタンリー監督の前作品の話で盛り上がり、映画まで少し時間があったので、イタリア料理のファストフード店に入ることにした。


花澤澪「決まりました?」

白鳥カイト「モッツァレラのサラダと、ガーリックトースト、マルゲリータかな。ドリンクバー付きで。」

花澤澪「お金持ちですね、私はサーモンのパスタで、カイト君のマルゲリータをつまみますね。」

白鳥カイト「ハハ(笑)ドリンクバーおごるよ」

花澤澪「ありがとうございます!じゃあこの和牛ハンバーグも食べたいです!」

白鳥カイト「おい(笑)」

花澤澪「クーポンあります!」

白鳥カイト「笑笑」

花澤澪「じゃあ頼みますね。」


注文が終わり、話は映画の話に戻っていた。最近のSF映画では注目の新人監督がいて、元々はボクサーだったが、州のボクシング大会で一位を取ると、すぐに引退してしまったらしい。その理由には驚いた。


その新人監督は『僕のボクシングが完成したから辞めることにするよ、僕の人生において自分を納得させることが1番大事だからね。それに映画監督になりたいと今は思っているんだ』ということを言ったらしい。一度でもいいから、こんなかっこいい人生を歩めたらなとあこがれの気持ちをカイトはその監督に対していだいた。


最近勉強で忙しくて、好きな映画関連の情報にうとくなっていたから、こんないい話をしてくれた澪には感謝しないといけないなと思い澪の顔を見ると、口がハンバーグのソースまみれで吹いてしまった。


花澤澪「何がおかしいんですか?」


店の中で澪といっぱい話をした。年は一個下で。妹が一人いるらしい。最近、近所の少年たちに誘われてザリガニを取って遊んだことが1番楽しかったと言っていたが、「顔は泥まみれになってたんだろ」とからかうと、メチャクチャ突っ込んできた。そして、いよいよ『地底人宇宙に行く』の上映時間になり、ポップコーンを買って入ろうと思ったが俺が塩派であるのに対し、みおはキャラメル派だったので、揉めに揉めた結果ハーフ&ハーフで手を打った。


花澤澪「全くもう、全く、、、」

白鳥カイト「ぷんぷんするなよ。」

花澤澪「キャラメルの方が見てる時、集中力上がるでしょうが。」


カイトはびっくりした。塩ポップコーンを澪が気付かずに、美味しそうにバクついてた姿に驚きを隠せなかった。しかし、映画が始まったので、そのことは後で追求ついきゅうすることにした。


映画のプロットを話すと、古代地底人こだいちていじんの先祖たちが、人間の先祖たちに生存競争せいぞんきょうそうやぶれ地下で復讐ふくしゅうの時を待った。


そして2000年後地底人の文明が人間たちの文明を追い越し地球を侵略する。ところが、地底人の男と、人間の女が恋をし、子供を授かり、その子供が宇宙へ行き子孫を繁栄させ、長い時をかけて、地底人の文明を超え、地底人と人間の中を取りもち、地球に平和が訪れましたという話だ。


二転三転にてんさんてんと、展開が変わり、久しぶりに見た映画がこの映画で良かったと思った。この映画の出来に俺と澪は大変満足たいへんまんぞくしテンションが上がって帰りの駅まで手をつないで帰った。


花澤澪「ふふふふ」

白鳥カイト「ははははは」


この日は家の前まで澪を送り、俺も笑顔で家に帰った。今日は大変充実した日だったので、綾瀬にいっぱい自慢してやろうと思った。

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