ホラー系動画配信者の”鬼頭頑鉄”
神崎翡翠
金玉村の祟り
「ギンギン!今日も元気な鬼頭頑鉄です」
毎回、同じ挨拶と共に始まる自分の動画を見ながら、なぜ伸びないのかを考えていた。
動画編集系の専門学校を卒業してそのままネット動画ブームに乗っかろうと就職もせずに動画配信者となったおれはいつのまにか27歳となっていた。
子供部屋でパソコンをいじり親に小遣いを貰いたまに動画を撮影に出かける日々で、おれ自身はネットで揶揄されている人々とは違うんだと思いながらも現実はそうである。
チャンネル登録者数は2万人。
生活出来る収入は全く貰えていないが、なにかキッカケがあれば、もう一押しあればと夢を諦められないでいる。
色々なジャンルの動画にチャレンジしてきたが唯一80万再生を記録した廃墟探索の動画がキッカケとなりこの2年間はそのようなホラージャンルをメインとしている。
そのまま自分の動画についたコメントを読んでいると気になるものがあった。
「私は、T県の恐怖ホテル跡地探索!の動画からのファンです。頑鉄さんの動画はとにかくクオリティーが高く本当に内容もしっかりと深くまで追求しているので大好きです。もっともっと伸びるべきだと思っています。なので、これは本当に極秘で”ホンモノ”の情報を提供したいと思っています。間違いなく撮れ高があると思いますので気になられましたらこのアイコン、ネームと同じ名前のSNSに個別メッセージを送ってください」
おれはスマホでそのネームを即座に検索した。
「左曲りタロウ、フォロー0人フォロワー0人」
日常的に使っているアカウントではなさそうだが、それしかヒットしなかったのでここに個別メッセージを送ることにした。
「いつも動画を見てくれてありがとうございます!コメント読みました。とても気になるのでよかったらその情報を教えてもらいたいです」
メッセージを送って10分後に返信が来た。
「ジコセキニンです。このメッセージを送ったらこのアカウントはすぐ消えます。G県に金玉村という場所があります。イケバわかりマス。それではオダイジニ」
気味の悪いメッセージにイタズラかとも思ったが一応ネットで検索してみた。
”G県金玉村”
何一つ有効な情報も画像も出てこない。
ただ、マップで調べたら実在はするようで近くには店もなにも一つもない山の中にあるようでおそらく車でしか行けないだろう。
「行ってみるか」
直感でそう思った。
中古で買った軽に食料と撮影機材と寝袋を積んでおれは金玉村に向かうために乗った。
高速と国道を通り段々と風景に緑が増えてゆくのにつれてそこに近づくのを感じた。
しかし、そこから道とは呼べない山道を走り数時間が経った。
夕焼けが見え始めた頃、木に白いペンキで書かれた「金玉村」という看板を発見した。
「ようやく着いたか」
まるで自然の要塞の中にあるような閉鎖感のある印象を受けた。
狭い入り口を車を木に擦りながら進んで行った。
そこを抜けると一面に畑が広がっていた。
すると畑で作業をしていた老人が車に近づいて来てノックをしてきたので窓を開けた。
「お兄ちゃん見ない顔だけど、迷ってここに来たのかい?」
老人は心配した表情を浮かべた。
「いえ、この村に来てみたくてT県から来ました」
「なんでこんななんにもない村に来たのかね?親戚でもいるのかい」
「そうではなくて、私はテレビみたいにインターネットで色々な村を特集させてもらってるものです。よろしければ取材させてもらってもよろしいでしょうか」
村など老人に会う機会がが多いので説明はし慣れている。
「いいんじゃけど、本当に老人しかいない小さな村で面白くはないと思うがね」
「ぜひお願いします」
おれはカメラを準備してこの村のざっくりとした説明をしてもらった。
ホラー系動画配信者の”鬼頭頑鉄” 神崎翡翠 @kanzakihisui
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。ホラー系動画配信者の”鬼頭頑鉄”の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます