第2話
跳んだ!という脳内意識の先に待ち受けていたのは、右足首の痛みと口腔内に感じる水だか泥だかわからないモノの味覚だった。
そして、右足は、池の真ん中の学校が存在する市をモチーフにした噴水を破壊したようだった。また、ボクの身体は、浅い池の中に横たわり、周りには、野次馬の塊がやいややいや騒いでいた。
そんな僕を優しく抱き上げてくれた先生が
耳元でこう囁いた。
「低学年が池飛び込んじゃだめだよ。」
ショックだった。チビだったボクだが、4年生で低学年じゃない。そして、飛び込んだ訳でなく、池を飛び越えようとした訳で。
小久保先生が、さらに続けた。
「ビショビショだね。着替えなきゃ。
校長先生のところに行くのは、それからか。」
「こ、校長室。いや、あの。」
校長室なんて、日常行く場所ではない。
今、勤務している小学校の校長、つまりボクのボスは、水槽にチンアナゴなる生物を飼って、子ども達を校長室へ誘っている。
あの頃では、考えられない。
校長室は極悪非道の少年少女が送られる昔でいうと網走刑務所、校長室へ担任に連れて行かれるとブラックリストに載ると信じられていた。
最悪だ。なぜ、こんな事になってしまったのだろう。そうか。カールルイスだ。ボクを駆り立てたのは、カールだ。カールくんだ、と言ってもあの「おやつはカール」のカールではない。いやいや、ボクはどうなっちゃうのかなと少年の頭に様々なことが過る。
しかし、校長室行きの前に、最大の悲劇がボクに降りかかることになろうとは。
初老の小久保先生に抱えられて、保健室に向かう自分には、想像もつかなかった。
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コトバノキョウシツ @toto14
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