疫病ウィルスホラプシー

加賀倉 創作【書く精】

疫病ウィルスホラプシー

 ある星の、映像メディアで、こんなものが流れた。


「朝の血液型占いっ! 今日の運勢第一位は……該当者無し! 二位もいません! 三位もいません! 同率四位、A型、B型、AB型、O型のあなたは今日、サイアクの一日になりそう! 何かとんでもなくヤバいことが起こる予感です! ラッキーアイテムは、付和雷同しない周りに流されない強い心! それでは今日もみなさん、お気をつけていってらっしゃい!」


 人々はこれを受け……


は非科学的な話に興味はないからな! くだらない」

、この手の占い、嫌いだわ。根拠もなく他人様ひとさまを否定する感じがして、絶妙にムカつくもの。ま、どうでもいいけど」

に災厄が降り注ぐ? そんなわけないだろう! 大ボラ吹きめ!」

 と、に受けず、馬鹿にした。


 しかし、その日の真昼間まひるま……


 人々の頭の真上、天球そらいただきに現れた、白い輝きを放つ点。


 それは、いつもの太陽ではなかった。


 点は、みるみるうちに、地上と距離を縮めていった。


 やがて点は、小さなまるとなり、ついには巨大な傘となった。


 傘は、星に蔓延はびこる高層建築群スレスレのところまで降下して、静止した。



——≪〔◉巨大な宇宙母船マザーシップ◉〕≫——

⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬜︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬜︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎

⬛︎⬛︎⬛︎⬜︎⬜︎⬜︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬜︎⬜︎⬜︎⬛︎⬛︎⬛︎

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 かげる街。


 暗闇は、まばゆい光に照らされた。


 人々は、妙な涼しさを感じた。


 圧倒され、逃げることも、攻撃することもできなかった。


 空を覆う巨大な宇宙母船マザーシップをぼーっと眺めていると……


 奇妙な雑音ノイズが聞こえてきた。



「ГЮ§ Ц ИД凵§! ГЮ§ Ц ИД凵§! ГЮ§ Ц ИД凵§!」

 と、巨大な宇宙母船マザーシップは意味不明の音声を発した。



 そして次の瞬間……


 

——≪〔◉巨大な宇宙母船マザーシップ◉〕≫——

⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎液⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎液⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎

⬛︎⬛︎⬛︎液液液⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎液液液⬛︎⬛︎⬛︎

⬛︎⬛︎液液液液液⬛︎⬛︎液液液液液⬛︎⬛︎

⬛︎液液液液液液液液液液液液液液液⬛︎


 

 怪しげな液体が、大量散布され……


「うわぁ!! なんだこれ!? 危険な物質じゃないだろうな? くっそぉ、のお気に入りのを水浸しにしやがって!」

「きゃあ!! なにこの液体!? なんだか、痒い気がするわ。、アレルギー体質なのよね」

「ああっ!! の卒業論文がぁ!! 血と汗と涙の結晶が、台無しだ……!」

 人々は液体を全身に浴びた。


 液体は星じゅうに三日三晩、途切れることなくかれ続けた。


 散布が終わると、巨大な宇宙母船マザーシップはどこかへ去っていった。


 するとすぐに人々は……


のスーツをお釈迦しゃかにした、あの液体の正体を調べてくれ!」

「そうよ! たちの体に影響がないとは限らないもの! ああ! 本当に気持ち悪いわ」

「液体の成分を調べたら、宇宙船がどこから来たかわかるかもしれない! は、奴らを地獄の果てまで追うぞ!」

 と、真相究明を求める声を上げた。


 が、液体の成分は一向に調べられず、巨大な宇宙母船マザーシップが発した音声の解読の方が優先された。


 惑星中から言語学者や音声学者が集められた。


 解読の結果、巨大な宇宙母船マザーシップからの音声は……



✌︎('ω'✌︎)ГЮ§ Ц ИД凵§これは、ウィルスである!(✌︎'ω')✌︎

 と、翻訳された。



 それを知った人々の体には……


「なんだか最近、体の動きが鈍い感じがする。、どうしちまったんだ……」

「痒い……痒い……痒いわ! 、前よりもアレルギーが酷くなった気がする……」

「ああ! なぜかいい論文が書けない! の脳みそはこんなものじゃなかったはずなのに……」

 様々な不調が出始めた。


 そしてそれらの不調を……



「「「きっとあのウィルスのせいだ!!!」」」



 と、当然のように、ウィルスのせいにした。




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——巨大宇宙母船マザーシップの襲来より二年後。



 人々は不調を治そうとするあまり、薬漬けになっていた。


 症状と、薬の副作用とで、人々は心身ともに疲弊した。


 働き手は減り、経済活動は停止した。


 世界は荒廃した。


 負の連鎖の末……


 星から、人々は消え失せた。


 そして、星には再び、あの巨大な宇宙母船マザーシップが現れた。



——≪〔◉巨大な宇宙母船マザーシップ◉〕≫——

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⬛︎⬛︎⬛︎✌︎('ω'✌︎)⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎(✌︎'ω')✌︎⬛︎⬛︎⬛︎



 宇宙人たちが、降り立った。


 その中の一人が、一体のしかばねを見つけた。


 服を着たまま、白骨化していた。


 彼は、屍を覆っている服をつまみ上げた。


 生地が伸び切って、ところどころ裂けていた。


 それは、やけにサイズの小さい上下セットアップ


 彼はつぶやいた。


「マサカ ホントウニ アノ エキタイ ヲ ウィルス ダト オモイコム トハ。タダノ ミズ ダッタ ノニ。コノホシ ノ ジュウニン ハ ヒジョウニ ソウゾウリョク ガ ユタカ デ シンジンブカイ ヨウダ」


 宇宙人たちは、ウィルスと称したただの水をくだけで、その星を乗っ取ることに成功したのだった。


〈完〉

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疫病ウィルスホラプシー 加賀倉 創作【書く精】 @sousakukagakura

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