最終話 系譜

 当千華学園高校では、夏休み明けから文化祭の準備に取りかかった。


 生徒会会長は《天女》が就任し、副会長二名と書紀は旧生徒会で経験を積んだ計三名、会計はちょっとは継人のサポートに役立つ経験かもしれない、と思った直人が引き受けた。

 五名の庶務の一名は旧生徒会から、残る四名は新人を募集して採用し、活動が始まった。


 そして、文化祭では《天女》こと生徒会長・高天原紅が発案した『愛を叫べ大会』が最終日に開催されることになった。


 参加は男女問わず、壇上からマイクで思い人へ愛を叫ぶ。

 既に両想いの者には1万円、片想いの告白の者には2万円の商品券が景品として保証され、振られた場合は3万円の慰謝料が上乗せされる。


 会場の投票による『愛を叫んだ大賞』は、1位には10万円、2位には5万円、3位には2万円の商品券も付いてくる。

 この景品の予算は高天原本家からの寄付金があてられた。


 景品が全く中高生らしくないが、実に高天原家らしい『小遣いの使い方』だ。

 振られてもいいバイト料だと思って自分を励ませるので、決死の覚悟で参加する生徒は予想外に多く、片想い優先で残りはくじ引きとなった。


 そして、直人は紅にきらきらした期待の眼差しを向けられてしまったので、参加しないという選択肢は無い。

 くじで外れればいいと思ったが、直人の運がいいのか悪いのか、トリを引いてしまった。


 因みに、生徒会発足時の会長挨拶で、

「実は、私と直くんは兄妹じゃなくて、お父さんが異母兄弟で、おばあちゃんが違う半分だけいとこでーす!」

と《天女》が喜色満面で言ったので、男子生徒はショックと嘆きと祝福を込めて《殺し屋の嫁》という二つ目の異名を捧げた。


 《殺し屋》は、居眠りする紅を起こそうとした英語教師に、直人がシャープペンを投げてクラッシュした事件で『殺し屋みたいなコントロール』と言われた事に由来する。

 本当過ぎるので止めて欲しいが、言えない。


 愛を叫べ大会は、笑いと涙、祝福と野次、激励が飛び交うまさにお祭り状態だったのだが、チョー達様でダンク様で殺し屋様の直人が壇上に立つと、校長の挨拶よりも会場がしんとした。

 いっそ、ヒューヒュー野次を飛ばされる方が気が楽だった……と思いながら、マイクを握った直人は、特に叫ばなかった。


 いつも通りの無表情と淡々とした口調で、


「べに、最速でお前が18歳になったら俺と結婚して欲しい。大学卒業後の22歳でもいい。俺は、花嫁衣装はよくわからないから、ドレスでも打掛でも好きなのを着てくれ」


 と言った瞬間、会場はその日一番の盛り上がりとなった。

 紅は、壇上へと駆け上がると、全力で直人に飛び付いて「うん!18歳がいい!!全部着るよ!!」と、愛を叫んだ。


 参加景品と告白大賞の商品券は、生徒会予算の雑収入として会計簿に記録された。






 ―――高天原家系譜―――



高天原家当主・高天原直人と高天原紅の子


《壱》悠人ひさと

《弐》虹人にじと

《参》心奈子みなこ

《肆》しずか

《伍》いさお



高天原財閥総帥・高天原継人と早乙女桃子さおとめももこ(旧姓)の子


《壱》初花ういか

《弐》章人ふみと

《参》さとる

《肆》淑香よしか



副総帥・高天原忍とグレース・ウィナー(旧姓)の子


《壱》アレン(Allen)

《弐》ビアンカ(Bianca)



後継者・高天原あきら唐橘舞からたちばなまい(旧姓)の子


《壱》さく

《弐》双葉ふたば

《参》清人さやと



 高天原本家は四家に分かれ、常に複数の家から当主・財閥総帥・後継者・影を輩出し、後世に続いていった。





 ――了――

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殺し屋と天女は兄妹かもしれない 真髪 芹 @seri_472

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