秋の夜長に聴いてみたい『英国の三美神』

榊琉那@屋根の上の猫部

マニアなら常識かもしれないけれど、一般人には全くの無名。でも素晴らしい作品だから、是非聴いてみてください

 秋の夜長といいながらも、これを書いている段階では、『残暑が厳しいざんしょ』と言いたくなるような暑さが続いています。年々、秋が短くなるように感じているのは、気のせいではないと思います。エアコン代が気になる今日この頃です。如何お過ごしでしょうか?


 自分の作品は、音楽関連のエッセイやら短編ばかりで、他に書けないのか?と言われても、音楽の知識に全振りの頭でっかちなので察してください。しかも取り上げてきたものは、爆音で聴かせたら拷問にも使えるようなサイケデリックなグループとか、嘗ては政治色が強いとの評価が強かったけれど、本来は音楽性豊かな、でもちょっと難しい単語も出てくる通好みのアーチストとか、まるで石で殴られるような衝撃を感じるフォーク系アーチストとか、一般人に勧められないような個性的な曲をブレる事もなく演奏してきたような、ある意味骨のある人達ばかりでした。


 ですから今回は、一般の人にもお勧めできるようなアーチストを紹介しようかと考えてみました。でも在り来たりのものを紹介するのは、自分としても納得出来ない部分もあったりします。我ながら難儀な性格です。ごめんなさい、素直になれなくて。

 秋の夜長に聴いてみたい曲。いや、素直にエンヤ辺りでいいじゃないかと思ったりもしましたが。エンヤ、いいですよね。『ウォーターマーク』は、35年以上前の作品になりますが、未だに色褪せる事もない、美しい情景が見えてくるような素晴らしい作品です。何百回とダビングを重ね、ほぼ一人で各パートを歌っているという、非常に手間をかけているものです。まるで女版マイク・オールドフィールドですね。え?マイク・オールドフィールドって誰って?映画『エクソシスト』のあの印象的なテーマ曲を演奏している人です。自分にとっては、『オーメン』と並んで、幼少の時に見て以来、深いトラウマとなっているホラー映画です。そんな事聞いていない?こりゃまた失礼しました。


 ここまで800字近く書いてきて、未だ本題について何も出てきません。コンテストなら最初の部分だけで選外でしょうけれど、自分はコンテストを目指さないから気にしません。それ以前に、タイトルだけで大したものじゃないとわかるでしょうから。じゃあ、何の為に書いているんだと言われたら、まぁ自己満足の為としか言えないですね。いいんです、自分が納得出来るのなら。


 1000字近くを無駄にしましたので、いい加減に本題に入ろうかなと思います。

 秋の夜長に聴いてみたい『英国の三美神』とは何ぞや?ざっくばらんに説明すると、70年代初期にイギリスで発売された英国フォークの傑作アルバムである、

 Mellow Candleの『抱擁の歌』、Tudor Lodgeの『チューダーロッジ』、Spirogyraの『Bells, Boots and Shambles』の三枚のアルバムの事を指します。それぞれのグループには、魅力的な歌声を持っている歌姫がいまして、多くの人を魅了してきました。大半はマニアやコレクターの方々ですけど……。

 発売してから半世紀以上が経つような作品ですが、これをマニアが楽しむだけの存在にしておくのは勿体ないと思ったりしています。とはいえ本当ならオリジナル盤を聴いてもらいたい所ですが、如何せん入手は困難ですし、6桁価格はすると思いますし、(勿論、自分も持っていませんが)、そもそもその辺に転がっているようなシロモノではありません。とりあえずCD、それも無理ならYoutubeとかSpotifyとかでもいいですので聴いてもられば幸いです。


 最初はメロウキャンドル。1972年にデラムから発売した『Swaddling Songs抱擁の歌』1枚で解散しますが、後に未発表のデモ音源も発売しています。二人の女性ボーカル、アリソン・オドンネルとクロダー・シモンズによるハーモニーに虜になった人は多数いると思われます。勿論、自分もその一人です。フォークを基調としていますが、時にはロック的にアピールする部分も。曲はバラエティに富んでいますが、どれも粒揃いの曲ばかり。最初の曲が気にいったならば、残りは一気に聴いてもらいたいですね。

 因みにクロダー・シモンズは、前述のマイク・オールドフィールドのアルバムのボーカルにも何度か参加しています。



 https://www.youtube.com/watch?v=F1z0ENzeISk



 続いてはチューダーロッジ。1971年にヴァーティゴから発売された『Tudor Lodgeチューダーロッジ』は変形ジャケの名盤です。

 ジョン・スタナードとリンドン・グリーンの男性フォークデュオにアメリカ生まれのアン・スチュアートが加わった男2人女1人の3人組のグループとなります。牧歌的でゆったりとした感じの1曲目を聴いて気に入ったら、残りも残さず聴いてもらいたいです。管楽器とかも使った曲は、もしかしたら秋の夜長にはこのアルバムが一番相応しいかもしれませんね。素晴らしい内容でも当時は売れず、結局、この一枚で解散してしまいますが、90年代後半にジョン・スタナードとリン・ホワイトランドのデュオでアルバムを出したりしています。そして日本に在住していたリンドン・グリーンも参加しての来日公演も1999年に行われています。

 ブリティッシュフォークに管楽器が加わり、美しいコーラスで彩られるアルバムは、自分もお気に入りの1枚です。


 https://www.youtube.com/watch?v=AXjp7B4INcc



 そして最後はスパイロ・ジャイラ。(同名のアメリカのフュージョンのグループがあるので注意)マーティン・コッカーハムが中心となって結成されましたが、ポリドールから1973年に発売された3枚目のアルバムとなる『Bells, Boots and Shamblesベルズ、ブーツ、アンド・シャンブルズ』では、マーティンとバーバラ・ガスキンとのデュオとなっています。所謂、アシッド・フォークと言われる気だるい感じのボーカルが特徴的ですが、何度も聴いているうちに癖になる感じです。他の2枚と比べると、透明さは劣るかもしれませんが、こちらはしっとりとした歌声が魅力的かと。結局、このグループも、この傑作アルバム発表後に解散してしまいます。

 

 https://www.youtube.com/watch?v=cTtN5pO2iYw&t=9s



 以上、簡単ですが3種類のアルバムを紹介してみました。必要以上に詳しく書かなかったのは、アルバムを聴いて判断してもらいたかったから。正直、この駄文に感想を書いてもらう必要等はないですが、是非書いてもらいたいのは、紹介した3枚のアルバムを聴いてもらっての忖度のない感想です。半世紀の前に発表されたアルバムで、長年、マニアの間では傑作と言われてきたアルバムですが、果たして現代に生きる一般人の耳にはどう聴こえるのか?正直な意見を聞いてみたいと思ったわけです。人によって、古臭いとか、今の時代に合わないとか、やはり日本のグループがいいとか様々な意見があるはずです。思いつくままの意見を書いてもらえれば幸いです。反応は乏しいのは覚悟の上ですけどね。


 今回、紹介したのは有名どころですが、ブリティッシュ・フォークというジャンルは沼のようなものです。一回ハマったら脱出は不可能。次から次へと魅力的なグループが見つかりますし、自主製作レベルのものにも侮れないものがゴロゴロしています。自分は早々に撤退しました。音楽の世界、特にマニアの道は獣道なのです。何かを犠牲にする覚悟がなければ、歩くべきではないかと。でも『三美神』のような素晴らしい作品とも出会えた事ですし、これからも無理のないペースで歩いていく事でしょう。何処かしらから白い目で見られる事は諦めていますが。


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