レンズ
かけふら
レンズ
今は夕方だ
紫から赤の雲が山にかかっていて
昼見れば美しい青々とした山
けれどもその登山道にいれば
たくさんのゴミを見ることになるだろう
崇敬されているなんて思えないぐらいに
今はお風呂だ
手でお湯を掬う君は
透明なそれの中にいると思っている
けれどもそのお湯の中をじっくり見れば
色んなゴミが浮かんでいるだろう
清潔だとは思いたくないぐらいに
それを君はさも何も無かったかのように
最初から何も無いとして
無視という自覚のない無視を決め込んだ
道路のポイ捨ても
ちょっとの犯罪でさえ
「何もない」という絵の具で塗りつぶしている
時を重ねるにつれて
何も見ないようになっていないか
見れないようになっていないか
昔々の君なら1つ1つの細かい所を
ありのままのレンズで見つけて
鬼の首を取ったかのように自慢していた
今の君はどうだい?
そのレンズを全く外してしまって
アバウトなリアルに身を委ねていないか
それは完全に悪いことじゃない
全てを見ようとしなくても
君が生きることにたいして影響はないから
でも世界は美しい
少なくとも僕にはそう見える
だからレンズで見ることを恐れないで
今君は夜の中
真っ暗闇と冷たい空気
湯上がりの身体を覚ましている
見上げても街灯ばかりで
空はに何も無くて
1Lあたり約1.2gのそれは身体を抜けていく
でもきっと君はその絵の具を
「何もない」という黒色を
塗らなくてもよくなるから
暗闇を見てごらん
文明に邪魔されても
辛くても目を凝らしてみて
いつか一筋の星が見えてきたら
もう一度見上げた時にきっと
星空が見えてくるはずだから
この世界は決して綺麗なだけではないのは確かだ
それでもきっと君が
レンズをつけるだけの価値はあるから
レンズ かけふら @kakefura
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