玄関から聞こえる声
口羽龍
玄関から聞こえる声
昼下がり、光江(みつえ)はのんびりしていた。夫の宗之(むねゆき)は仕事に出かけている。1人娘の七恵(ななえ)は中学校に行っていて、夕方まで帰ってこない。家には光江しかいない。とても静かな日だ。だが、こんな日は多い。光江は全く気にしていない。夜になれば、みんなが集まり、家族団らんだ。全く寂しくなくなる。
「ただいまー」
突然、七恵の声がした。誰だろう。光江は首を傾げた。七恵は夕方まで帰らないのに。今日は半ドンの土曜日じゃないのに。日曜日でもないのに。明らかにおかしい。でも、行かないと。
ダイニングにいた光江は大広間にやって来た。
「おかえりー、ってあれ?」
だが、そこには誰もいない。あの声は何だったんだろう。明らかに七恵の声だ。まだ授業中なのにな。
「何だろう」
ダイニングに戻ってきた光江は、椅子に座って考え事をしていた。最近、こんな事ばかりが続いている。宗之にも七恵にも相談したが、その理由が全くわからない。近所の人に聞いたが、それでも全くわからない。
「うーん・・・」
光江はいつのまにか寝てしまった。家事でとても疲れているようだ。静かなダイニングだ。その先にはリビングがあるが、誰もいない。
光江は起きた。午後3時だ。そろそろ買い物に行かないと。
「さて、買い物に行くか・・・」
光江は振り向いた。だが、そこには誰もいない。あの声は、何だったんだろう。
「誰も・・・、いないよな・・・」
光江は戸締りをしっかりして、スーパーに向かった。戸締りをしっかりしているのに、どうして誰かが来るんだろう。ひょっとして、幽霊だろうか? いや、そんなはずがない。幽霊のうわさなんて、全く聞いていない。
1時間後、光江はスーパーから帰ってきた。やはり誰もいない。光江は首をかしげた。やっぱりこの家おかしい。数か月前にこの家にやって来たのに、こんなにおかしい事が起こるなんて。
夕方、1人の中学生がやって来た。七恵だ。部活を終えて帰ってきたようだ。七恵は家の庭に自転車を停め、玄関に向かう。いつもの夕方だ。もうすぐ家に帰れる。そう思うと、気持ちが高ぶってくる。
「ただいまー」
「おかえりー」
光江が大広間にやって来た。だが、光江は何かを考えているようだ。いつもはまったく悩んでいないのに、どうしたんだろう。
「どうしたの?」
「3時ぐらいにただいまって聞こえたんだけど」
七恵は首をかしげた。その頃は授業なのに。いったい何だろう。明らかにおかしいな。
「えっ、帰ってきてないよ」
「そっか。何だろうね」
やはり授業だったか。あれは七恵本人じゃないんだな。だとすると、あれは誰だろう。全く想像できない。
「わからない」
「うーん・・・」
と、七恵は肩を叩いた。悩んでいたら、毎日に影響してくるから、明るく生きよう。
「大丈夫だって」
「そうかな?」
結局、その理由がわからずじまいだった。だが、明日になればきっとわかるだろう。
翌日、光江は考えていた。あの声は七恵なのに。どうして七恵じゃないんだろうか?考えれば考えるほど、おかしいと考えてしまう。
「うーん・・・」
「ただいまー」
その時、再び声が聞こえた。だが、時間は明らかにおかしい。午後2時だ。まだ授業を受けている時間だ。今度こそ七恵だろうか?
光江は1階にやって来た。だが、そこには誰もいない。やっぱり七恵じゃないんだな。
「あれっ、やっぱりいない・・・」
だがその時、光江は後ろに誰かがいると感じた。光江は振り向いた。だが、そこには誰もいない。どうしたんだろう。
「えっ!?」
光江は前を向いた。目の前には血まみれのゾンビがいる。今さっきはいなかったのに。おかしいな。
「ギャー!」
光江はそのショックで即死した。だが、誰もそれに気づかなかった。
夕方、七恵はいつものように家の前にやって来た。今日は友人と一緒だ。とても楽しいな。
「じゃあね、バイバーイ」
「バイバーイ!」
七恵は庭に自転車を置いて、玄関にやって来た。だが、七恵は違和感を覚えた。ついているはずの玄関の明かりが消えている。母が帰ってきていないんだろうか? この時間は絶対に帰っているはずなのに。
「ただいまー」
七恵は玄関から家に入った。七恵は驚いた。大広間で光江が倒れているのだ。どうしたんだろうか? 急病だろうか? ならば、早く救急車を呼ばないと。
「あれっ、お母さん?」
七恵は体をゆすった。だが、光江は起きない。意識不明のようだ。
「お母さん! お母さん!」
七恵はそれでも体をゆすった。だが、起きない。そして、七恵は気づいた。体が冷たいのだ。
「し、死んでる・・・」
どうして死んだんだろう。と、七恵は誰かの気配を感じ、後ろを振り向いた。だが、誰もいない。七恵は首をかしげた。
「えっ・・・」
七恵は顔を上げた。目の前にはゾンビがいる。
「ギャー!」
そして、七恵も倒れた。ゾンビはその様子を、じっと見ている。
これは噂による話だが、この家では昔、一家が何者かに惨殺されたらしい。そして今でも、その家族のゾンビが出るという噂だ。
玄関から聞こえる声 口羽龍 @ryo_kuchiba
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