喜楽土町シリーズ

@morinaga25

第1話 喜楽土町にようこそ!!

 『喜楽土町』。

 その名前が知れ渡ったのは十年前。

 最初は避暑地として、その名前がSNSを中心に話題になった。

 「暑いけど、それどころじゃねえ!?なんだって、俺がヒーロースーツ着て、怪人と戦ってんだ

!?ガハハハ!!」

 「なんだよ、この町。何だかわかんねえけど、空から女の子が降ってくるって、本当にあるんだな!?で、なんだって、逃げまわんなきゃいけねえんだ?!」


 陽気な動画投稿者達のが始まりで、初めは一部のファンが知った程度だった。

 だが、少しずつ変わっていく。


 「この町、すげえいい。なので、移住します!」

 「みんなは意味わかんないかもしれないけど、楽しいだけじゃない。でも、ここ。ここには求めていたものがある」


 始まりの投稿者達が移住をキッカケに、その町の様子を映し出していった。

 

 当たり前のように現れる怪獣。

 頻発するテロ予告。

 それを通りすがりの住人達が、武器やら不思議な光を使って倒していく様子。

 撮影中に巻き込まれた投稿者達も、なぜかドラマのような展開に巻き込まれていった。


 実在しているのか、フィクションなのか。

 不思議に思ったファンがその町に行って実態を知り、移住する。

 それを聞きつけた動画投稿者、配信者、インフルエンサー達が遊びに行き、引き込まれていく。

 やがては新聞、テレビなどの大手メディアなども報道を始めた。


 報道が始まって一週間。

 大手メディアは報道をやめた。

 取材班の多くが辞職をし、その町に移住し始めたから。


 動画投稿者、配信者、インフルエンサーの多くは、かの町に移住した者、しなかった者でその明暗が大きく別れて行った。

 移住した者達の動画や配信は、全てが現実に思えないフィクションが展開され、共通する謎を追い求める考察班が生まれるほどになった。


 何より誰の動画を見ても、映画のようなとんでもないことに巻き込まれている。

 それが視聴者の目を引きつけ、既存の流行を一新していった。


 インフルエンサー達は己の『やりたい事が100%出来る』と、次々に移住し、鎬を削り合うようになった。


 明日には流行が変わっている。そんな状況を求めて来る人が多かった。


 当然、視聴者やファン、リスナー、噂を聞きつけた人達も、町を訪れに行って、移住を決める人が多かった。


 町からの正式な宣伝もなく、町役場のウェブサイトも簡素なものにも関わらず、人口は千人から地図にも町の様子は表示がされていない。


 そんな不確かな町に、人が移住していく。

 それを恐怖する人が現れるのは、必然だった。



 国は一部の地域への人口の流動を推奨しない異例の声明を発表した。

 大手報道各社は行った事も無い人達と、自称行った人達の証言で報道していった。

 残った配信者、動画投稿者、インフルエンサーはその事に触れるのを、避け始めた。

 かの町に行ってない人達は移住者を頭がおかしい集団のように扱った。


 

 そして、『喜楽土町』の住人達はーーーー。


「おい、町長!池田さん家の奥さんがキレて世界の危機ってのはマジかよ!」

「ええ本当です。六区の皆さんも待機していますが、牛丼アパートの力、今こそ見せる時です」


「町長ぉぉぉ、聞いてないよぉぉ。シェフ千葉が、キ新作スイーツのゲリラ販売始めちゃったよぉぉ。それだけでも大変なのに、インフルエンサー:ワタガシが動いちゃった。シェフの千葉のいる七区にティーン女子集団が、雪崩れ込むよぉぉぉ」

「困りますね。・・・仕方ありません。以前から申請のあった配信者:六砲を使いましょう。ゲリラにはゲリラを。お神輿配信を許可して、少しでも人の流れを分断。警察にも応援を」


「町長!ネットでみんながウチの町を悪く言ってんだけど!!どうしよう?」

「何もしないでいいですよ。そんな事より四区です」

「四区!?世間の評判より優先する事態とは、一体何が!?」

「私が最初から見ている歌手がライブをするんです。現地参戦をするために、あらゆる雑事を片付けます」

 

 今日もこの町は国にいながら、町の対応に追われている。

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