第3話 生贄文化と丸呑みには密接な関係があるお話

昔々あるところに大きな神様が村を守っていたという。だがその神は大蛇であった。日頃は外敵カルムらを守ってくれる御神体だったが、時には暴れまわり、落ち着かせるために神の元へ村の少女を御神体にお捧げしなければならなかった。


村の少女たちもその文化に慣れて数百年も続いているので、逃げ出したり運命に逆らうことなく、丸呑みの儀式に向けて着々と準備を進めていた。


丸呑みの儀式では専用の白い着物を着て、丸呑みをしていただく際の神様を起こす演武、踊りが次々と披露され、最後には服を脱ぎ…全裸になって儀式の間へと消えていく。


無邪気な子、明るい子、根暗そうな子、毎年この日を境に消えていく。そしてそれを見守る村の住人、腕を組んで今年も安泰といったご満悦の表情を浮かべ腕を組みながら見守る村長。


だが、古文書に書かれていない歴史の闇に包まれた出来事もいくつかは存在していた。








「いやだ!私死にたくないよぉ!」


一人の少女が泣いている。

白い儀式の衣装を身にまとっているが、涙で濡れてしまっている。

そしてそれをなだめる妹たちと母親。


「おねぇちゃん…元気だして。村の神様になれるんだよぉ?」

続けて母親もいう。

「そうよ。この村を災害から守ってくれるのも大蛇様のおかげなの。あなたが大蛇様と一つになることで救われるのよ。どうかお願い、ヘビ様のことを好きになってあげて。」



そう。丸呑みが行われるのは事実だが、次の儀式まで1年間合間が開くのだが、その1年間、呑み込んだ少女を神様の妻として責務をまっとうする形で大蛇の胃袋にこもり続けるのだ。そして子作りもさせられる。


1年間経過し、次の生贄が現れるようになったら呑み込んだ少女は用済みとなり、消化されてしまう。



泣いていた今年の生贄となる少女はこの事実を知っていた。

村のお祭りで楽しんでいた彼女。だが、お祭りでにぎわうさなか、トイレに行こうとしたとき、村長らで密会している話を盗み聞きしてしまった。


「今年の小娘は美貌だよなぁ。あんなえっろい体してんのにまんまと神様に侵されるなんて当の本人はどんな思いしてんだろうなぁ…肉壁の中でお侵され続けて、ヘビの子どもを次々と産む苗床になっちまうとは…いや、本人はこの事実は知らないんだっけか…ガハハハw」


酒の入った村の幹部らの酒臭い密会を聞いてしまった…


私、神様に侵される…そんなの嫌だ…まだ生きていたい…

いやだ…死にたくない!





そして心の結界は崩壊し、ついに家族の前で泣き出してしまったのだった。


「別に死ぬことなんてないのよ。あなたは神様の体の一部となって、この村の上空で見守ることができるのだから。ある意味、永遠に生きられるのと同然のことよ。可愛い子供もたくさん産めるんだから…」


母親はなだめてくれるが、「うるさい!」と枕を母親に投げつけてしまった。その様子をうかがっていた父親が乱入してくる。そして胸ぐらに掴みかかり、首を絞められながら持ち上げられる。体が宙に浮く。


「おい!お前がこの村の安泰を守る存在なんだぞ!何こんな泣きべそ書かいてやがるんだ!ここで儀式を受けないんだったら村から出ていけ!と行っても、周りには低階級の男どもが飢えてうようよいるから、性奴隷にされるのが目に見えているがな。その事を考えて判断しろ!」


父親は私の体を振り投げるように乱暴に手放した。

ばん!と壁に体を打ちつけ、足の骨を折ってしまった。

「あなた!そんなひどいことするなんて何事ですか!?」


パシン!と平手打ちされる母親。

「ざけんな!俺の娘は貴重な御神体の奉納物として選ばれたんだ。こいつが喰われれば俺らの家には大量の報酬金が送られるんだぞ!」


結局金目当てなんだ…

私はその事実を聞いてから、もう誰とも喋らなくなった。

そして立つことすらできるものの歩行速度も落ちて、あるき辛い生活が続いた。


あっという間に儀式の日が来る。

虫の音が鳴り響き、神殿の前では焚き火を囲んで村の仲間たちが楽しそうにお祭りを楽しんでいる。


ピーっと笛の音が鳴る。村の人達は一つの家から出てくる白い娘の姿に注目した。シャラシャラシャラと美しい楽器の演奏をバックにおしとやかに足を差し出しながら、神殿へと向かっていく私。

キラキラな装飾やティアラなどを身に着け、神殿への階段を上る。


階段手前までは母親や妹たちが付き添ってくれたが、もうここで最後のお別れとなる。手を握りしめてくれる母親、腰辺りに抱きつく妹たち。


「じゃあ、元気でね。いっぱい神様の子どもを産むんだよ!」


「…………」

私は死んだ魚の目で母親の顔、妹の顔を見て、階段を上った。

そして階段を上りきった先には薄暗い神殿内部へと続く廊下があり、歩いて進んでいく。


軽く度にシャラシャラとサンダルの鈴の音が鳴る。

そしてついに儀式の間に到着した。

巨大なヘビがドぐろを巻いて寝ている。


私はそのまま踊りを始めた。靴を脱ぎ、裸足になり、軽やかに体を動かす。ふわりと舞うスカート、シャラシャラと音を立てる装飾品。


その姿を見たヘビはムクリと体を起こし、私の方を見つめる。

起きてくれた。踊りをやめて、ヘビを誘惑するように服をゆっくりと脱ぐ。

巨大なヘビは私の体に巻き付いてきて、足から順に呑み込み始めた。

足裏はグニュグニュのお肉を踏む感覚で柔らかくて気持いい。

ズブズブとぬめり込む形で私はヘビの中へと呑まれていった…


死ぬのではない、この子といっしょに夫婦となって、1年間の村の平和を守るのだ…


私は胸に手を当てて、村の平和を祈願した。


たくさん侵され、たくさんのヘビの子、神様の子を産み続けた。

そして最後にはもうお疲れ様と言わんばかりに彼に優しい消化液をとろとろかけてもらいながら粘液の中へ沈んでいった…



そして、私は今、ヘビの血肉となり、この村の平和を守り続けている。もうあれから何年経っただろうか。新しい村の子たちがまた呑み込まれて胃袋に収まった感触がする。辛かったんだろうね…怖かったよね…でも大丈夫だよ…彼は優しいから…私も居心地がいいように胸をもんであげたり、気持ちよくしてあげるから、どうか、この人生が楽しかったと思えるように…ね…




と、ここで古文書の書紀は途切れている。


「ふーん。なかなかおもしろい本あるじゃない。適当に手に取った本がこんなに君、嬉しそうに読んでるなんてね」

「そりゃそうだよ。自分、この村で女の子として生まれ育ちたかったなぁ…って。」


女先輩とは以前の裏山での騒動から一段と距離を縮めるようになり、図書館などで一緒に丸呑みに関する研究を行っていたのだ。そしてこの古文書も彼女が見つけ出してくれた。


本当に、昔から女の子は生贄、丸呑みの対象として語り継がれるほどに歴史のピースとなっていたとは、色々考え深いものであり、より一層、自身も女の子としての呑まれたい決心が高まったところだった。

(つづく)

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丸呑みのための性転換 冷凍ミルク @icemilk1

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