第21話 バトル

巨大な怪物をけしかけてくる諸合


「俺の相棒がてめぇは危険だから潰さないといけないってんだよ!!だから死ね!!」


 拳を振り回しながら暴れる岩豚巨人は諸合の苛立ちに感化された様に破壊を始める。


「何が危険なんだよこの危険人物め!ぶちのめしてやる!!」


 俺はメンダコと息を合わせ岩豚巨人の足を全力で殴りつける。

 凄まじい破壊音と共に殴った部分が砕け散るが、中にはぶよぶよとしたスライムが通っていてすぐに岩が再生してしまった。


「身体が硬いのに再生すんのか!卑怯だな!」


「鍛えた訳でも無いのにいきなり1級のパワーを振り回せるお前の方が卑怯じゃないか!コレをずっと準備してたのに!!」


「地元の有力者なら対抗出来るかもってか?!だったら普通に協力してもらえば良いだろ!!」


 レスバを繰り返しながら足を砕く。


「仲間を信用してなかったんだろ。事実、蛇魂とか出てこないしな」


 久安が岩に刀を突き立てる。そこから火柱が立ち上り、岩豚巨人が膝を付く。

 

 楠間がガラ空きのボディに強力なアッパーをかますと岩豚巨人はそのまま倒れ伏す。


「詳しく話は後だ!今はコイツを行動不能にする!深淵の腕!行くぞ!!」


 コールプローラーの状態でも腕に触手を巻きつけ巨大な腕を形成する。その腕があおく輝きながら唸りを上げて豚顔に突き刺さる!


「ぶち抜け!!!」


 めしり……と肉を引きちぎる様な音と共に岩の身体と豚の頭が泣き別れになり、そのまま豚頭は崩壊を始める。


「よっしゃ見たか!」


「いや、見ろ奥渡あそこ!!」


 首無し巨人の切り口に諸合周防、魚目蛇魂、庭院ダロスが現れる。


 庭院ダロスが腕を振ると、巨人の首に巨大なデッサン人形の様なモノが現れる。


「あれは……コールプローラー?!」


「夜波奥渡!お前の相棒のそのタコ!俺の相棒のスライムは大昔、そのタコの奴隷だったんだってよ!だからお前が許せねぇお前は許せねぇ!なんで素直にぶちのめされてくれねぇんだテメェは!なんでそんなに強いんだよテメェは!気に入らない!死ね!」


 そう叫ぶとコールプローラーを起動する諸合、蛇魂とダロスを取り込んだからか、深海魚を思わせる輪郭に犬のマズルが伸びている顔の形容しがたい頭部が岩巨人の首から生えてくる。


 それと共に岩の内側にあったスライムが全身から吹き出し身体の表面を覆う。


「うわっ、合体しやがった!どうするよ奥渡!」

 

「決まってるだろ!こっちも合体だぁ!」


「「おう!!」」


 楠間のブリキの人形の様なコールプローラーがバラバラになり俺のメンダコの身体に鎧として装着されて行く。


 久安の侍のコールプローラーは上下に分離し、下半身が一直線になると、それが巨大な刀の鞘に変化する。上半身が変化してできた柄を握り鞘に当ててから引き抜くと、巨大な日本刀が姿を現した。


「よっしゃあ!名付けて冒涜の夜会だ!ショゴス!テメェをぶった切る!」


「ふざけるな!!俺は能力で取り込んだがテメェが合体したのはどういう了見だ!!」


「テメェを潰すって了見だ!」


 刀を振り下ろすが、いつの間にか生え揃っていた鱗に防がれる。


「ふぅ、危なかった。そして俺はこういう事も出来る。」


 ショゴスが得意げになると体内の岩を飛ばして来る。


「今更そんなものに!!」


 さして特殊なモノではない岩を避け攻撃を続けると背後から犬の形のスライムに襲われる!


「くそっ!コイツ何処から!」


 ふと見ると先程撒き散らされた岩から空間を捻じ曲げて犬が現れては俺達に体当たりを仕掛けて来る。


 出現する頻度がだんだん早くなり、気づけばスライム犬の嵐の中で立ち尽くしている状態だった。


「フハハハ!ダロスは腕力は無くて転移させるぐらいしか能が無かったがなかなか使えるじゃないか!ホラ!蛇魂も行け!オールレンジ攻撃だ!!」


 スライムの嵐の中に鋭い鱗を持つ魚が混じり始めた。楠間の鎧と鋭い鱗がぶつかりにぶい金属音が響き渡る!


「奥渡!ここは拙者に任せて欲しいでござるよ!キナ!最大出力!プラズマバースト!!」


 身体に付けられた鎧が開き内部からアンテナが展開されるとバヂッバヂッとスパークし始める。


「バーストオン!うわぁぁぁぁ!!」


 銘家の裏山を削り取る様に紫電の球体が現れる!


「最大出力だぁ!!」


 カスン……としぼむ様な音と共に球体が消えるとガラスのクレーターが出来ており、その中心には刀を持った触手のコールプローラーだけが立っており、銀の鎧は消え失せていた。


「楠間、ムチャしやがって……」


足元に横たわる楠間とその周りに崩れ落ちているデッサン人形の残骸。


「くそっ、ヤケクソになりやがって!異次元を開いてたせいでダロスにエネルギーが逆流したか、もうコレは使えないな」


 ずるりと頭部から庭院ダロスが現れ落下する。


「蛇魂!お前の力を貸せ!」


 ジャラララララと音を立てて鱗が生え槍が現れる。


「次は俺の番か!燃え上がれ府王丸這刀!」


 久安が叫ぶとメンダコの持つ刀が燃え上がる。


「ああああああああ!!はあっ!」


 槍を叩き折りながら名状しがたい巨人の内部まで刀身が食い込む。


「爆ぜろぉ!」


 どちゅん!と巨人が内部から弾ける。


「ぐあああああ!おのれおのれ!ダロスや蛇魂まで盾にしなければならないとは!!貴様の仲間をよこせェ!!」


 巨体が弾け飛をだが、残った頭部がスライムのコールプローラーに姿を変えると力を使い果たして巨大な日本刀が崩れ中から現れた久安を取り込もうとする。


「なにをする!しばくぞ!」


 飛んできたショゴスをシバいて弾き飛ばす。


「やっとお前を直に殴れる!」


 ショゴスを殴り飛ばし地面に叩きつけ、エネルギー波を浴びせる。次第にコールプローラーを維持するエネルギーが尽きたのかデッサン人形だけになり、腹部のシートから諸合周防が姿を現す。何処かにぶつけたのか額に傷が走っているが、傷口からはスライムがデロリと流れていた。


「お前……やはり相棒に身体を乗っ取られて……」


「ぐがが、くそっ!叶わなかった!だが、どれだけ俺を痛めつけようと俺は諦める事は無いぞ!!今は負けを認めよう!しかしいつか必ずしアッ」


 俺を指差し宣戦布告していた諸合周防、しかし背後から近づいた黒山羊が傷口からスライムを啜り始める。気付いたら啜る黒山羊が一匹、二匹と増えていき、みるみるうちに黒い毛に覆われて諸合の姿が見えなくなった。


「これで奥渡くんを襲おうとする人間は居なくなったね。めでたしめでたし」


「えっ、主部仁倉?」


「もう、ニクラって呼び捨てにしてよ」



──────



 その後、銘家の跡地は新しいダンジョンの口が開き、楠間はアリスさんと忙しくやってるらしい。楠間のオタク趣味を反映して半ばテーマパークの様になり人気も上々だ。


 久安は妙子と修行の旅に出た。なんでも燃え尽きてしまった事が心残りであの程度では尽きない炎を探すのだとか。


 そして俺は、今日も黒山羊に追い回されつつダンジョン探索に励んでいた。



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深淵幻想 コールプローラー コトプロス @okokok838

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