第20話 現れる

20話 


 はえ〜、デカい屋敷だなぁ


「奥渡、久安、悪いなこんな事に付き合わせて……」


 楠間がげっそりした顔で見やる先には巨大な日本家屋が鎮座していた。


「えーっ、アリスちゃんお嬢様だー」 


「いやそんな……ちょっと古臭いだけですよ…」


「仁倉ちゃん楽しみだね!」


「えぇ、奥渡さんを襲撃した人が居るかもしれないから楽しみにですね。」


「あっ、そっか。私の久安にちょっかい掛けた奴が居るんだよね。」


「「楽しみ」」


 ヒエッ寒気ががが……楠間も久安も心なしかゲンナリしてるな……



 門をくぐり、日本庭園の様な所に通されると恰幅の良いおばちゃんが現れた。


「楠間!あんた銘さん所の家に迷惑掛けたんだって?!何やってんだい!アンタみたいなのがアリスさんって可愛い娘をたぶらかして!そんでケンカしてこの家の長男の醸地さんが帰って来なくなったそうじゃないか!でもアンタが頭を下げたら許してくれるそうだよ!!さぁ、謝りなさい!!」


「母ちゃん………?なんでここに……」


 母ちゃん?って事は楠間のお母さんか?……人質だな。ゲスいやり方をする!


「お母様もこう言っておられる。楠間君、いつまでも意地を張るのは辞めてもらえないかな?」


 奥から現れた何か性格キツそうなおっさんがやれやれと言った風にこちらを責める。


「やい、アリスの親父さん。アンタ話を聞いて無いのか?そもこの楠間が纏わりついてるんじゃなくて、アリス嬢さんの方がこの楠間にベッタリなんだよ。娘のワガママぐらい許してやれよ。あと、プライドが傷つけられて意地になってんのはそっちだろ?楠間の母親を呼びつけたり俺と久安を襲撃させたりさぁ!」


「まあっ!なんて口の利き方!楠間!こんなのと遊んでたら不良になってしまうじゃないの!!早く謝って帰るのよ!!」


「母親なら息子の言い分も聞いてやれよ。やたら謝らせようとしてるけど息子がどういうつもりだったか聞こうとは思わないんか?」


 久安も楠間の母親に聞き返す。


「えぇい!引く気が無いのならば!貴様ら!融合薬ヤクキメろぉ!」


「3人とも!頼むっ!」


 日本家屋を破壊しながら先日のコールプローラーサイズの狼人間が10数体現れる。だが、こちらにもコールプローラーがある!


「メンダコ!やるぞ!」


「キナッ!頼むッ!」


「フォー!見せろ!」


 俺が乗り込み実体化した触手を生やしたタコ頭の巨人となったコールプローラーが立ち上がりながら近くの狼人間を殴り飛ばす!


 すぐ横ではメカメカしい銀の巨人が手首から放つ雷撃で2体纏めてぶっ飛ばしていた。


「2人に見せるのは始めてだな、まあ見ててくれよっ!」


 久安が乗り込んだコールプローラーが相棒と融合し人の姿へと実体化した姿はボロボロのマントを羽織った侍の様な姿をしたコールプローラーだった。


「行くぞ府王丸!ぜやっ!!」


 その掛け声と共に放たれた日本刀が振り抜かれると、府王丸の背後で3匹纏めてずるりと崩れ落ちる。


「てめぇ!こっそり鍛えてたな?!」


「ったりめぇだろ!それより来るぞ!」


「貴様らーっ!この女がどうなっっっ」


 アリスのパパさんが楠間の母ちゃんを人質に取ろうとした瞬間に黒い山羊が跳ね飛ばす。


「乗って!」「え、えぇ……」


「3人ともーっ!楠間のお母さんは回収したから離れるね!好きなだけやっちゃえ!!」


「「「おうさ!!」」」


 その後は消化試合の様に次々と巨大な狼人間を倒した。




その後、アリスの母親が帰って来て家の惨状に頭を抱えていたが。



──────



「それで?あの人は門下生にクスリを使う様に指示して自分はトンズラこいたと?」


 額に青筋を浮かべたアリスの母親が吐き捨てる。


「まさか楠間様のお母様まで呼びつけて謝らせようとするとはおもいませんでした。それに、あの部屋からは特定のワードに反応して呪をかける術が仕込まれていました。謝ったら最後アレに良いように使われていたかもしれません。」


「ハァ………自由にさせすぎましたね。奥渡さん、久安さん、仁倉さん、妙子さん、今回はアレに巻き込む形で迷惑を掛けて申し訳ない。」


「良いっスよそんなの、アリスさんがせっかく良い人見つけたんだから盛り立てなきゃ」


「だな。馬に蹴られたくないからね」


「アリス、良い友人達ですね」


 ズズゥン!!バキバキバキ!!


「何の音だ!」「裏山の方から!」


「仁倉!コールプローラーを!」「ええっ!」


 表に飛び出してコールプローラーに飛び乗る。すぐにメンダコとコールプローラーを一体化させて実体化をする。


 ウオオオオオォォォ!!!!


 デカい屋敷の裏山から巨大なコールプローラーが身を乗り出していた。普通4〜5メートルのサイズに対して15メートルはあろうと言う巨体に豚の頭が乗っかっている。


 身体は岩で出来て居るのかゴツゴツとしていて、先日のアリスの兄のコールプローラーを思い出す様なモンスターだった。


「ンだあれ!なんだよあのサイズ!アレはコールプローラーなのか?!」


「豚の頭……アレは父です。しかし、岩の身体は兄の……?もしや」


「そぉ〜う!化け物退治にいろいろ嫌がらせしてたのに、みんな返り討ちにしちゃうんだもん!だからこっちも化け物を作っちゃった♪」


 暗闇に浮かぶ男が腹立たしげに、バカにする様に唄う。


「それっ!正義の鉄拳だ!いけーっ!」


 そう言うや、巨大な岩豚男が拳を振り下ろして暴れ始める。


「てめぇ!諸合周防か!なんか知らないが蛇魂が言うには俺に恨みがあるらしいじゃねぇか!ぶっ飛ばしてやる!!」

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