第19話 逆恨み

19話 逆恨み


 

 いつもの様に学校に向かう俺こと夜波奥渡は今、明らかにカタギじゃない人達に囲まれていた。


「えぇっと……いったい何の用事なんです?」


「夜波奥渡だな?」


「そうだと言ったら?」


「掛かれっ!!」


 その言葉に周りの人間が相棒を出現させて魔法を展開する。


 獣系の相棒を纏い身体強化で獣人の様な姿になった男が引っ掻きいて来たのでタイミングを合わせ顔面の学生カバンの角をぶつける!


 すかさず後ろから飛んで来た炎の玉をメンダコが食べる。……食べる?魔法って食えたのか……


 そこから水鉄砲、礫、ツタなどが飛んで来たが、次々と触腕を伸ばし美味そうに食い始める俺の相棒、これは心強いと背後を気にせず暴れて一通り伸した後にリーダーっぽい奴を押さえつける。


「あんたら探索者だろ?なんで一介の高校生を襲おうとしたんだ?」


「クソッ、なんでタダの高校生がこんな強いんだ……俺はBランク探索者だぞ……」


「だから俺に何の用があるんだ!」


「何年も探索者やってるこの俺が最近相棒を出した奴に負けてたまるかよッッ!」


 押さえつけられてうつ伏せになりながらも襟の小さなポケットから何か錠剤を取り出しそれを飲む探索者、途端に魔力の奔流が立ち上り俺は吹き飛ばされた!


「なんなんだよいったい!!理由を言え!!!」


─GAAAAAAAAAAA!!!!!!


 巨大なコールプローラーサイズの二足歩行の狼が立ち上り俺を蹴っ飛ばす。


 俺は後ろにあったビルを貫通して表通りの車にぶつかりながら、通りを挟んだ反対側のビルの壁にめり込む。


 クッソ痛てぇ……俺がめり込んだ壁から手足を剥がしていると、目の前の大通りに巨大コボルトが着地する。………ッスゥーー……ビルを登って飛び降りて来たの?そんな身軽さ、コールプローラーだと対応しにくいじゃねぇか!


「グァ……GAAAAAAA!!!」


「暴走しているんじゃないよ!!」


 めちゃくちゃに振り回される鉤爪がコンクリートの壁をえぐり取りながら迫る!


「深淵のディープワンッ!」


 ドグン!と鈍い音が響く。俺の右腕が巨大狼の手首を掴み動きを止める。


「止めたぞ!!アレは……」


 崩壊したビルの中には食堂があった。………そういや犬にはタマネギが毒だったりするんだよな。


 メンダコ!頼む!


 細い触手が伸びてバックヤードからタマネギの入ったカゴを引っ張って来る。


「くらえっ!」


 深淵の腕で巨大化した左腕でカゴを握り潰しタマネギの汁が滲む拳を巨大コボルトの口にねじ込む!


「グァフ!グァフ!グァフ!!」


 巨大コボルトは尻尾を巻いてその場から姿を消した。

 残されたのはビルの破壊痕とタマネギ臭い左手だけだった。


「…………いったい何だったんだ………」



─────────



「バカモノ!!!融合薬は使うなとあれほど言っていただろうが!!てめぇは俺の足を引っ張りたいのか!!!」


「ずみっ……すみませっ………すんませんっ………うっ………ぐうっ………」


 銘勲が昼間の探索者に苛立ちをぶつける様に踏みつけていた。


「しかし……融合薬無しであのパワー、あの腕、小太りのあの男の友人だから人質に使えるかと思ったが、難しいか……他はどうなっている!!」


 その勲のセリフに火傷だらけの男が部屋に駆け込んで来る。


「も、申し訳ありません!!!工藤久安の確保に失敗しました!相当な手練れです!!」


「ふざけているのかァァァ!!!」


 火傷だらけの男が何かに弾かれ壁に叩き付けられる。


「ハァ………ハァ…………あのデブの家族はどうだ!」


「はっ、母親を既にこちらに引き入れ、あの男に有栖様を諦める様に説得しろと吹き込んでいます。対価に金をチラつかせれば二つ返事で「息子に諦めさせます」と喜んでいました。」


「ハハッ!俗物で助かったな!ならばあの男を呼べ!有栖と讃の前で自分にはこの家が不釣り合いだと言わせるのだ!!」


「(俗物はどっちだよ)はっ!では出迎えの準備を始めます。」



────────



「ねぇ楠間様、家の者が楠間様もウチに来て欲しいそうです。なんでも話があるとか」


「いやいいよ………また後継者がどうとかお家騒動に巻き込まれたくないし………お兄さんに逆恨みされるのも面倒だし……」


「まあ!私の兄をお兄さんと呼んで下さるという事は私の兄の弟になる準備が出来て居るのですね!!」


「話聞いてた?」


 有栖お嬢様と楠間が漫才をしている横で俺は震えていた。楠間を冷やかす様な事が言えない状態になって居るんだ。


 何故かって?目の前に主部仁倉さんが居「朝戦ってたんですよぬ?何で私を呼ばなかったんですか?私のコールプローラーが必要じゃないんですか?」て光の無い目でこっちを見てるんだよ。


 え?この娘こんなに病んでたっけ?




────────────



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