あらすじ

 100年前のレトロウイルスの感染爆発により、様々な生物の遺伝子の水平伝播が全人類にもたらされた世界。他の生物の遺伝子が発現したキメラ症候群と呼ばれるその症状が発現した人間の中には伝説の怪物のような姿を持つ者も少なくなかった。彼らは露骨に差別されると同時に軍事利用が行われ、有用な存在と扱われてもいる。

 そんな世界の日本。テロで片足を失った未来予知能力を持つ青年・継彦と下半身が蜘蛛のアラクネと呼ばれる症例の女の子の木乃花の2人の幼なじみが、新しい春に無事結婚を果たし、千葉のちょっとだけ田舎の古民家で暮らし始める。

 2人は小5の時に出会い、木乃花はアラクネということを隠して家の窓越しに継彦と遊んだり勉強をしていたが、あるとき、木乃花はついにガマンしきれなくなり、継彦に蜘蛛の下半身を見せてしまい、継彦は恐怖で逃走する。しかし翌日、反省した継彦は再び木乃花の家を訪れて逃げたことを謝り、2人は無事仲直りして今がある。

 木乃花は高校卒業後は国防軍の特殊急襲部隊に所属していたが、寿除隊で予備役となり、継彦は公務員試験に合格し、新社会人になる予定だった。

 新婚の2人はイチャイチャしつつ、引っ越しの片付けをし、段ボール箱で仮の家具を作り、近所のスーパーに買い物に行き、料理をし、周りの目を気にしつつ、ご近所の挨拶回りをし、新生活を始める。2人は地元に馴染むために清掃活動に参加したりして、新しい環境に適応しようとする。アラクネの木乃花は外見から避けられ、子どもにイタズラされたり差別を受けているが、それでも理解して貰おうと努め、木乃花は明るく対応する。

 しかし木乃花はまだ前職を引き摺っており、国防軍の特殊急襲部隊の訓練にも参加する。

 継彦は無事新社会人になり、地元自治体の環境行政部門で働き始める。地元に残された自然環境を2人で見に行って、守らなければならないものがあることを再確認する。

 国防軍の向坂少尉は特殊な未来予知能力を持つ継彦と対テロ作戦に卓越した戦闘能力を持つ木乃花の監視を続けているが、同時に2人の友人として見守ってもいた。継彦はそんな向坂少尉の事情を暗に理解した上で受け入れ、木乃花と向坂少尉が家飲みするときにつまみを作ってあげたりもする。

 新居での新婚生活が落ち着き始めた頃、都内で大規模テロが発生し、木乃花が出動することになる。在日米軍が撤退し、国際情勢が不安定になった東アジアでは、各国でテロが多発していたのだった。

 テロリストが逃走する中、商業施設に人質をとって立てこもり、木乃花が所属する特殊急襲部隊が出動し、商業施設への突入作戦を決行する。

 しかしテロリストの中には通常の制圧火器では排除できないような強力なキメラがいた。木乃花が危機に陥る寸前、継彦の未来予知能力が発動し、その情報が木乃花にもたらされたお陰で適切に対処でき、無事制圧した。

 2人は日常生活に戻り、新居での生活を充実させるべく、またお買い物にでかける。そしてリサイクルショップで中古の桐箪笥を買う。桐箪笥の寿命が100年と知ると、この桐箪笥が使えなくなるときまで仲良く2人で過ごしたいと願ったのだった。

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蜘蛛の若奥様と一本脚の僕のラブラブな新婚生活 八幡ヒビキ @vainakaripapa

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