第7話 別嬪さん


「いけないわ、お酒が水っぽくなっちゃう」

 女はスプモーニの冷たいグラスに手を付けて

 一息に飲み下した。

 舌の上をさっぱりとした味わいのそれが流れていく。

 混ぜたグレープジュースのせいか甘味が強い気がした。

 良い夜だ。女はそう思った。

 好みの男性を捕まえて

 それが上流のお金持ち。

 高級ホテルも取れそう。

 こんな幸運はそうそうない。

 ようやく酔いが体中に回ったのか、呂律が回らない。

 優しい眠気が彼女を抱き込んだ。

 眠り歌のように穏やかで

 男性らしい落ち着いたバリトンの声が耳に触れた時、全てが手遅れだった。


「別嬪さん、今夜の君はツイてる」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

スプモーニの悪魔 八柳 心傍 @yatsunagikoyori

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画