第6話 氷が解けて


「綺麗なホワイトカラーさん、夜遊びは初めてかしら」

 少しずつ詰め寄って、顔の距離を近づけた。

 淫靡な視線が蛇のように男を捕らえて逃さないでいる。

 彼は喉を鳴らして、釣られたように熱い息を吐いた。

「ええ、それはもう――」

 そういうや否や、女は男の唇を塞いだ。

 啄むようなバードキスだったが

 雰囲気に浮かされた二人には十分過ぎるもので

 甘い口づけは数分に渡って続いた。

 氷が解けて崩れる音を境に

 湿ったそれは名残を惜しむようにゆっくりと離れていく。

 視線だけはまだ縛り付けられたようにして離れない。

 きっとお互いの気分は最高に昂っていた。

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