後宮を舞台にしながら、華麗さよりも静かな悲劇と情念を描いた短篇。本作の魅力は、何より“亡霊が見える妃・雪月”を中心にした語りの構造にある。彼女は怖ろしい存在ではなく、むしろ静かで優雅で、どこか寂しげ。依依の視点を通して、読者は少しずつ彼女の抱えている嘆きと、到底癒えない喪失へと歩み寄っていく。依依が日記を焼くラストも象徴的で、喪失と解放の余韻が深く残る。
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