夢空SS集

夢空莉羽

過去に戻ったなら、うまくやってみせるのに

 今年の終わりが近づく十二月。クリスマスイブという名の、今年のわたしを嘲笑う日がやってきた。

 きっと子供たちはプレゼントを心待ちにしながら眠りについた、そんな夜遅くの時間帯。

 そして、大通りから一歩でも外れると、真夜中の暗さに覆われてしまうほど暗いこの時間は、この街の人々がイルミネーションを見る、定番の時間帯だった。

 そんな中、みんなそれぞれ大好きな人たちと一緒にこのイルミネーションを見ている。


 ……わたしはひとりぼっちだった。


 いつのまにか孤立していたわたしは、大親友に縁を切られ、声をかけてくる人なんて一人もいなくなっていた。


 ……去年はこんなことになるなんて思ってもいなかったな……。


 去年はあんなにも幸せな気分だったのに、今年はとても悲しい気分だ。


 目をつむり、去年の今頃を思い出す。


 仲が良かった大親友。一緒に遊んだ幼馴染。

 すべてが懐かしくてたまらない。


 ジャンパーに、もこもこ靴下に、フードに、マフラーに、耳あてに、手袋に。

 そんなにも防寒対策しているのに、どこか薄ら寒く感じるのは何故だろうか。

 こんなにも騒がしくて、にぎやかなのに、どこか静かなのは何故だろうか。

 去年はこの格好よりも寒い服を着ていたのに、暖かかった覚えがある。

 去年は今よりももーっと騒がしすぎて、耳を閉じた覚えがある。


 そんな、小さな暖かさは、騒がしさの楽しさは、失ってから気づいた。気づいてしまった。


 何故かなんて、わたしは分かっている。知っている。でも……。


 (それを理解してしまったら、わたしはいきていけなくなるような気がする)


 そのことに自嘲の笑みを浮かべる。


 遠目から見るみんなはわたしと一緒の時よりもずっと幸せそうな笑みを浮かべていた。

 あんな輝くような笑顔、一度も見たことがない。

 その様子は、わたしが邪魔者だったと伝えてくる。

 苦しくて、辛くて、見たくないに、それに吸い寄せられるように目が離せない。


(不満があるなら言ってくれればよかったのに。嫌なら注意してくれればよかったのに)


 そう思ってしまうけれど……。


 (きっと、わたしもそうだったとしても、わたしだって言わないだろうから、言う権利はないんだろうなぁ)


 最初は単なる喧嘩だった。いつものふとした時に起きる言い合いだった。

 でも、いつもよりエスカレートして行き、わたしにたいしての不満に引火した。

 そこから爆発的にわたしを彼女は責めたて、縁を切られた。


 そして彼女はわたしの悪いところのみ、学校中に広めた。

 そして、いつのまにか孤立した。


 いじめ、とかではあるのだろうけれど、彼女に、わたしの人生の一部を壊されたんだろうけど。

 でも、わたしは彼女が噂を広めているのを知っていた。わたしはそれで彼女の心がおさまるんだったら、と黙認した。


 だから、自業自得でもあるから、わたしも悪かった面があるから、とわたしは彼女を責めることも、噂を消すこともできないままでいる。


「過去に戻ったなら、うまくやってみせるのに」


 わたしはそう小さく呟くと、わたしはその場を後にした。

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