生ける竜は化石とともに

弘明 縁寺 (gumyou enji)

第1話  生ける竜は空からの贈り物

今日も今日とて連絡はこない。

猛暑が続く夏。照り返しが強く外に出ることすら嫌になる。

ましてや外で仕事をするなど自殺志願者そのものだ。

思想強めにビルを建設作業を見ながら缶コーヒーを飲んでいる

俺 廣永 竜翔(20)も外で仕事をしているのだ。


「他人が働いてるとこ見て飲むコーヒーはうまいな。」


喉に残る苦みを感じながらサボる余韻に浸っていると電話がきた。

相手は上司である。出るか迷ったが仕事時間だし出るしかない。


「はい!こちら廣永です!パトロール異常ないっす」


元気よく電話に出るのは社会の常識である。


「おう。頑張ってサボっているようだな。」


感がいい上司で尊敬するわ


「サボってないですよ先輩。今日も今日と福山駅も福山城も平和ですよ!」

「お前の持ち場はそこじゃないだろ」



あ、ヤバイ。

「それに俺からお前が見えてるからな。公園でコーヒーを飲んでいた姿を」


えぇ怖い。どこのビルだよ。ここはいったん…


「緊急事態です!先輩!空からもみじまんじゅうがー!!」

「そうか。持ち場に戻れ。それと反省文も提出せよ。」


ダメだったか…。


「はい。持ち場に戻ります。すいませんしたー!」


上司との連絡を終え、仕方なく持ち場に戻ることにした。

そういえばまだ俺がどんな仕事をしているか教えていなかったな。


「持ち場に戻れと言われても、こんなビルしかないとこあるのかね。化石は」

職業:竜軍自衛隊


持ち場に戻る際、前の方で女子高生二人が楽しそうに話していた。

まぁ俺も恋にロマンが感じる歳だ。女性に目や耳が行くのは仕方ないのだ。

たまたま会話が聞こえていたが。俺のせいじゃない。

他人に聞こえるように話す方が悪いのだ。

俺はただ女子高生が話してることに耳を貸し同じくらいの足の速度で歩いた


「で、どうすんの。大学落ちてんでしょ葵」

「分かってるよ継。来年のために勉強する」


なるほど大学進学落ちたのかー。俺も落ちたから分かるよ。

可哀想だから合掌でもしとこうかな。


「でも親はそれ許すの?」

「多分働けって言う。」

「なら働きなよ。学校が紹介してる会社に入りなよ」

「嫌よ!見たけどどこも給料低いんだもん。それに休みが少ないし、福利厚生とか

 ひどい会社だと名前からして胡散臭いし。親の言うとおりにしたくない」


花のある女子高生の話じゃねぇだろこれ。最近の女子高生ってこんなに強欲なのか?

てか結構暗い話を公衆の面前でよく話せるな!


「贅沢だよ葵。ちゃんと勉強しなかった罰だよ。」

「継はいいじゃん。中学から頭良かったんだし。大学も東京だし。」

「まぁ私頑張ったし。葵とは高校は別で進学コースでちゃんと将来見据えてるもん」

「なによ。私が将来見据えてないみたいに」

「結果論よ。社会に出て大学行く人も多いし。昔はやることないなら大学いけって言われてたけど、今はやることないなら社会に出て適当にスキル磨いた方が良いってなってきてるし。わがまま言わずにやってみたら」

「…うっさい」

「はい論破。私の勝ちだね。」

「継の正論ずるい!そんなの私が一番分かってるのに…」


なんとも仲睦まじいんだ。俺にはめんどい友達しかいねぇのに。

なんか歳とったなって感じて涙でてくるわ。

そろそろ持ち場につく。女子高生との会話を聞くのはやめにしようっと。


「私ね大学出たら会社設立したいの。そん時に葵のこと誘うから、その時までちゃんとスキル磨いててね。」

「継…」


葵は継を泣きながら抱きしめた


「継…。約束だよ。ちゃんと雇ってね。」

「分かったよ。葵。約束だよ。」

「ちゃんと残業代も福利厚生も優遇してね」


継は葵の腹に一発重いパンチを決めた


「おえぇ。冗談だって。…継?」


継が空を見ていた


「葵…アレ何?」


継の視線の先の空、私も視線を向けると

空から何かが光って落ちてきていた。


「継アレ綺麗だね。光ってるの何だろう?」

「分からない…分からないでもなんか変だよ葵。逃げよ。」

「どうしたの?大丈夫だって。すごく綺麗だよ…」

「おかしいの。だって落ちてきてるの化石だよ!」


え?化石?

すると空一面に輝いていた化石が突然見たことない姿に変わっていく。


「アレ…何?なんなの?」

「葵逃げよう!化石だったら間違いない!あれ恐竜だよ!」


化石から姿が変え、現れた恐竜は目の前の人に襲い掛かった。


「あぁーー!!!」


奇声があがり広がるように被害も増えていき

私は継に手を引かれその場から逃げた


「継!これからどうするの?私たちも…」

「黙ってて葵!私も何が起きてるか分からないの!でも走って!黙って走って!」


怒ってる継を見るのは初めてではない喧嘩もたくさんした腐れ縁の中だ。

でも今の継は怒りより怖いなのかもしれない。

そんな私たちの前に突如恐竜が現れた。


「継!囲まれる前に逃げよう!」


私は反対方向に継の手を引っ張った


「葵!ダメだよ!背中を向けたら襲われる!」


継の方を見ようした時恐竜で目があった。

恐竜は叫びだし私に鋭い爪で攻撃してきてきた。

怖くて目を閉じた。


「あぁあああーーー!!!!」


悲鳴で咄嗟に閉じた目を開けたら継の胸から腹にかけて爪で引っかかれ

腕は噛まれて…


「継…。」

「あ…あぁ…あぁあああ!!!」

「継!大丈夫だよ。落ち着いて!」


咄嗟に出た言葉。友達がこんなひどい状態なのに。

適切な言葉が出ない。どうしよう。どうすればいいの?

警察は?誰かこいつら倒してよ。ねぇ…

考えてるうちに恐竜に囲まれていた。


「…れか…誰か。助けてよ。ねぇ継を助けてよー!!!!」


誰か…

目を閉じ祈るしかない状況であたりの音が消えた


「大丈夫か。大学落ちて恐竜に遭遇してとんだ災難だな。」


目の前に男の人がいた。恐竜が倒れてる。

この人が倒したの?


「こちら廣永。駅前通り恐竜に襲われてる人多数。一人じゃ全員助けるの困難です。

至急増援お願いします。」


恐竜を倒せる人って何者なのよ。頭が真っ白に…


「え。おいおい倒れないでくれよ!恐竜相手にするだけで手いっぱいだぞ。

おい聞いてるのか立って逃げてくれよー!」


廣永は女子高生に言うが起きない。恐竜も音に釣られて集まってきた。


「おいおいまだアレ使っていい命令出てないのに」

「その心配はいらん」

「お!この声は!笹山先ぱ…えーー!!!」


電話をしていた上司 笹山先輩は車で恐竜に突っ込んでいった。


「先輩やりすぎっすよ!!てか誰の車ですか!」


恐竜をひき殺し出てきた笹山先輩は


「襲われそうになった人の車を横取りしただけだ。助けたのだからいいだろう。」

「いやダメでしょう!後でクレームは行ったら反省文じゃすまないっすよ!」

「その時は一緒に書いてやるよ。竜翔」

「巻き込まないでください!」

「それよりアレ使っていいように話通して使用許可が出た。」

「いいすか。アレ極秘って言ってませんでした?」

「市民の安全が第一だ。使用しろ。これは命令だ。」


俺は少し笑みを浮かべ


「了解した。廣永竜翔 裂傷解放します。」


承諾しました。測定開始します。

血が燃えるように熱く血管が体内から出ていき、気持ちいいような気持ち悪いような

変な感覚になる感じ。久々だな。

派手に暴れてもいいんだよな。理性ぶっ壊れてもいいんだよな。


「傷を開け」

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生ける竜は化石とともに 弘明 縁寺 (gumyou enji) @murakamihiroaki

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