「短歌の秋(9月)」投稿作品

塚本 季叡

秋来たりて 紅く染まりゆく 林檎かな ほのかに色付く 時期(とき)を待つ頬

 秋の果実といえば柿や栗など色々あるが、何故か真っ先に浮かんだのが林檎だった。初秋から冬にかけて色が付いていくという林檎。それは季節の移ろいを如実に、実際にこの目で見ることによって感じさせることだと思い、今回季語として取り入れることにした。

 それから冬にかけて徐々に寒さで頬が赤くなるのと林檎の紅くなるのとを掛け合わせて後半の77を詠んでみた。この色の描写を掛け合わせるのは個人的にやってみたかったことでもあるのでこの本文を読む前に

「林檎の紅と頬の赤が繋がっているんだな」

 と気付いてもらえたらとても嬉しい。

 短歌を詠むのは初めてのことなので、57577という31音の中で自由に作れと言われてもなかなか難しい。季語も何となくしか分からないし(例えば今回なら林檎が果たして秋を現すのか分からず、もしかしたら冬の季語かもしれない。そうしたら1からまた考え直さねばとGoogle検索で“林檎 季語”などと打って確認した)、31音の中に言いたいことを上手く詰めて表現するのに苦戦した。行間で伝えることも出来るだろうが、それでも完璧に伝えることは出来ないだろう。こうなってくると長々と本文で解説を書くべきかと思ったが、そうすると何となくこの一首自体が薄味になりそうな気がしたのでこちらからの提示は必要最低限にしたつもりだ。こういう短い文は読み手の解釈で楽しんでもらうことが何よりも大切なのかもしれないと思ったからだ。頬を赤く染めているのは幼子かもしれないし、窓辺から見える林檎の木に想いを馳せているのかもしれない。もしかしたら全然違う情景を思い浮かべた人だっているだろう。これが学術書などの論文ならなるべく祖語の無いように書くべきだろうけど、短歌は大雑把に言えば文学や芸術だ。読み手によって捉え方が多様でも良い。

 貴方はこの一首が表示されたときにどのように読んでくれただろうか。その回答を是非とも聞いてみたいものだ。

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「短歌の秋(9月)」投稿作品 塚本 季叡 @love_violin_tea

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