第12話 ハイエルフは立ち上がる
馬車の一行は砂漠で野営をした後、翌日の昼には草原地帯へと入っていた。
「シリア、次の休憩場所で下車しよう」
「そうね」
残りの距離を考えると数日は馬車で移動が良いのだろうが、シリアの正体が何処で知れてしまうか分からない以上、今は出来るだけリスクを減らした方が得策だ。
昼休憩を取った所で、予定通り馬車を後にした。
「ここから首都まで何日位だっけ?」
「順調に進めれば十日程で着くと思うわよ」
「十日か、まだまだ遠いが焦らず進もう」
数日後、景色はすっかり変わり森林地帯と成っていた。
生態系も森林らしく数も多く成り、戦闘の数も増えて来た。
「良いペースで結晶石が増えて行くわ」
「喜んでいる所悪いが、今度は獣でも魔物でも無いかも」
「それって・・・・」
「行ってみよう」
俺とシリアは木陰から様子を伺った。
奴隷姿をした子供達を庇いながら、エルフの戦士達が野党と交戦していた。
「助けなきゃ」
シリアが我を忘れて飛び出して行ってしまった。
全く・・・・俺が援護に当たるか
野党は10人程、後ろにエルフ達を守りながらシリアに向かう敵を、魔法で応戦して行く。
「シリア下がるんだ」
瞬時に下がるシリアを確認した所で、残ってる野党の行動を麻痺で阻害した。
「一気に倒して」
「任せて頂戴」
エルフ達が数人で倒して行くのに対して、シリアは独り倍以上の速さで倒して行く。
俺は治癒のスキル魔法で、怪我をした同胞を治して周ったのである。
全てを沈めたシリアが戻って来る。
「こっちは終わったわ」
「俺の方も完了したよ」
「助けてくれて、ありがとうございます。
私はトーマ、このパーティーのリーダーです」
「俺はダスト、隣が」
「シリアよ、宜しくね」
俺は食事と水を取り出し皆に与えた。
「トーマ、事情を聞かせてくれないか?
きっと君達の力に成れると思うんだ」
トーマと言うエルフの少年は事の成り行きを説明し始めたのである。
「なるほど・・・・」
彼の話では公国に雇われてるスコーピオン(闇ギルド)の仕業らしい。
彼らは暗殺・略奪・誘拐など、国の依頼なら何でも行う集まりだと聞かされた。
「ダスト、それって」
「ああ、エリスは知ってるのかな?」
俺は彼らを保護する為、遺跡の街へ戻る事とした。
「皆、俺の側に来てくれるかな」
全員が密集した所で目を閉じさせた。
「テレポート」空間移動の魔法を唱えた。
「目を開けて大丈夫ですよ」
「ここは?」
驚きを隠せないトーマの一行、シリアまで言葉を失ってしまった。
「ここは公国内にある、遺跡の街ですよ。
細かい事は後々にして、まずは体を休めたら良いですよ」
「ありがとうございます」
シリアに宿屋まで案内させ、俺はエリスと謁見する為に遺跡に潜ったのである。
地下5階層。
「エリスは何処にいるかな?」
階層入口の見張り兵は、エリスの居場所を親切に教えてくれる。
小部屋に作られた居住スペースの前でエリスに取次を頼む。
「王女殿下の許可が出たのでお入り下さい」
中へ入ると数人の兵達と忙しそうに打ち合わせをしていた。
「エリス」
「ダスト、首都に向かったのでは?」
「途中で襲われてる人達を見かけて保護したんだ」
「そうですか、この街で暮らせる様に致しましょう」
「その前にはっきりさせたい事があるんだ。
逃げてた彼らは公国から依頼を受ける、闇ギルドの仕業だと言っているんだけど?」
「・・・・」
「スコーピオンの存在は知っていた様だね。」
「はい」
「忠告するよ、公国軍はエリスと一緒に街を出て行ってくれないかな」
「そんな」
「無実な人殺しをしたくないんだ」
エリスの後ろに控えていたセイラが、庇うように前へと出て来たのだ。
「エリス様はスコーピオン壊滅の為、実態を掴む努力をしています。
どうか、ここで見捨てないで頂けませんか?」
「見捨てたくは無い、しかし安全な所から調べたって何も解決しないと思う。
俺達は手始めに公国内のスコーピオン壊滅と、関係貴族の抹殺を目標に立ち上がると決めた。
例え相手が誰であろうと戦う。」
「わかりました、私も王族として恥じない生き方をして来たつもりです。
現国王が関与してるかは分かりませんが、城と繋がりが有るのは事実でしょう。
反乱と捉えられるかも知れませんが、一緒に戦う道を選びましょう。」
エリスが差し出した手をダストは強く握りしめたのであった。
そこからの行動は早かった、エリスの率いる兵を全て呼び込み。
王国軍正規兵でエリスに反対する者は街から追放した。
「ここは守りが薄いから、俺が壁を作るよ」
ダストは等間隔に麻痺の魔法を付与した結晶石を置くと、土の壁で街を囲んだのであった。
「急いで頑丈な門を作ろう、東に正門で北に裏門だ」
少しづつではあるが、確実に街は強固な姿に変わりつつあった。
エリスが兵士を追放して約1周間、首都に戻った者達から謀反の方が伝えられた。
「何故だ、あれほど明快な娘が何故裏切る真似をするんだ」
「落ち着いて下さい、理由は分かりませんが事実の様です。
国として手を打たない事には、他国から付け入られる可能性がございます。」
「直ぐに使者を送れ。
それから、エリスの抱えてる兵の倍を向かわせるんだ。」
「場合に寄っては王女殿下を亡くす事に成りますが?」
「仕方あるまい、まずは使者を通して事情を聞くのだ」
「承知しました」
使者がエリスの元へ着くまで更に5日程、遺跡の街を強化するには十分過ぎる時間であった。
独りだけのハイエルフ 月のうさぎ @manapina
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