第11話 ハイエルフは遺跡に拠点を作る
5階層の拠点化を始めて1周間。
「大体終わった、後は階段前の大部屋だけだ」
「私は一度城まで戻り、この遺跡の管理を私の元で行える様に進言して来ます」
「分かった、俺とシリアはどうしようか?」
「出来れば待機してて頂けると助かります、これが上手く行けば報奨が出ると思いますので」
「そう言うのはいらないかな」
「しかし、これは画期的な事ですよ」
「それなら城に戻った時にお願いして欲しいんだ。
公国内で奴隷解放の行動と闇奴隷商の殲滅を行いたい。
それが叶わないなら何もいらないし、この国を出て行く事にするよ」
「我が国を出たら何処へ行かれるのですか?」
「王国で同じ事を頼んでみるつもり」
エリアは暫く考えた後に、必ず許可を取って来ると誓ってくれた。
「シリアも良いよね」
「もちろん、それが叶うなら時間を見付けて他の遺跡にも出向くわ」
「シリアさん、ありがとうございます」
俺達はエリスを見送った後に、遺跡で商売をしたい人達を探し始めた。
宿屋ではシリアが疑問を尋ねて来た。
「今みたいな方法で行けば、遺跡の無力化も可能なんじゃない?」
「可能だけど、何十年・何百年掛かるか分からないよ」
「外から取り囲んで塞ぐ事は出来ないの?」
「今の何十倍も大きい結晶石がいくつも必要に成るね」
「そっか、中々難しいものね」
「明日も早いし、寝ようか」
俺がベッドに潜り込むと、下着姿に成ったシリアが隣に入ってくる。
追い出したい所だが、久しぶりの宿だから多めに見て上げるかな。
「今日だけだからね」
「うん」
翌日、首都から出発した兵士達が着いたので、遺跡入口側の拠点を移動し宿舎を建て始めた。
国王の命で材料も運び込んだ様である。
「俺達は5階層に行こうか」
「分かったわ」
遺跡入口に求人募集の張り紙をして、交代の兵士達と一緒に遺跡へと入って行ったのである。
何度も交代で潜ってる兵士も多く、5層までは訳無く到達出来る様に成っていた。
「1層から4層まで安全にする事も出来るけど、Cランク冒険者が討伐出来る場を奪ってしまう事に成るからな」
「そうね、弱い者は上で力を付けて下へと降りて行くってのが、良いんでしょうね」
数週間後、兵士の交代に合わせてエリスが5層までやって来た。
「今戻りました」
「国王様は何と言ってた?」
「条件を全て飲んでくれましたわ」
「それは良かった」
「何れは父から謁見の訴状が届くと思います」
「了解、覚えておくよ」
エリスは鞄から5層の地図を取り出した。
「これを見て頂けますか」
渡された地図は図面化しており、冒険者が快適に過ごせる設計がされていた。
「ギルドがよく参加してくれたね」
「結構乗り気でしたね」
「それはそうでしょう、こんな事が出来るのってダスト以外にいないからね」
それが目下の心配事である。
この仕様は噂と成って各国へと伝わって行くだろう。
中には密偵なども入って来るだろう、これが原因で帝国から更に圧が掛からないと良いのだがな。
「エリス、ここの運用は他国から見ても特殊で注目を浴びると思う。
覚悟は出来てるんだろうね?」
「はい」
「シリア、結晶石を2個貰えるかな」
貰った結晶石に「念話」の魔力を込め2人に渡した。
「これは?」
「困った時は握りしめて祈って、俺と会話が出来る様に成るからさ」
「ありがとうございます」
「場合に寄っては一瞬で遺跡の前まで飛んで来るからさ」
「それって・・・・」
俺はエリスの口を人差し指で軽く押さえた。
「今更だけど本当にダストは凄いのね」
「まあね、エルフの王には絶対に知られたく無いけどさ」
2週間後、5層に食堂と宿屋が開店した。
「順調だね、俺達の出来る事は少なく成って来たし、ここを離れようと思うんだ」
「何処へ向かわれるのですか?」
「公国内にはいるとけど、取り敢えずは首都かな奴隷商に付いて調べて見たいんだ」
「それなら公爵家を訪ねてみて下さい。
私の叔父が奴隷解放を唱えてます」
エリスは懐から2枚のコインを取り出した。
「これは王族が後ろ盾と言う意味のコインです。
是非お持ち下さい」
「ありがとう」
「お気を付けて行ってらっしゃいませ」
エリスに見送られながら脱出アイテムを使った。
遺跡の回りもかなり栄、今では首都や近隣の街との交通手段として馬車が運行されている程だ。
「シリアは馬車と徒歩、どちらが良い?」
「馬車は乗り慣れてないし、歩いた方が良いわ」
食料品や小物などを補充して遺跡を後にした。
近くの街に立ち寄らなければ首都まで行けないと思っていたが、遺跡が栄えた事で首都までの道が開拓されたようである。
「砂漠帯は道に沿って、緑が増えて来たら脇に逸れようか」
「うん」
予想以上に砂漠は広大だった。
日差しの強さに体力が奪われて行くばかりなので、通り掛かった馬車に乗せて貰う事とした。
「この砂漠を歩こうだなんて、兄ちゃん達は無謀だね」
「ここまで時間が掛かるとは思わなかったよ」
「普通は近くの街に寄ってから、草原・森林と抜けて行くのが歩きのルートだよ」
覚えておこう。
5台の馬車一行は砂漠の道を快適に進んで行ったのである。
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