第10話 ハイエルフは遺跡に潜る(2)
探索は順調に進み5階層まで辿り着く事が出来た。
「終わったー」
シリアが階段の前で腰を着いたのである。
「お疲れの所済みません、もし宜しければ明日も続きをお願いしたいのですが?」
「え?」
「ええ?」
俺とシリアは思わず顔を見合わせてしまった。
「予定より早く進んだので、もう少し先へ進んで見ようと思いましてね」
エリスは俺達を見てて、まだ余裕があると感じ取ったのだろう。
ここで置いて帰る訳にも行かないし、付き合うしか無いんだろうな。
「分かったよエリス」
「私も付き合うわ」
「ありがとうございます」
明日も潜る約束をしてから、脱出アイテムを使い入口まで戻った。
食堂へ行き席に着くと、シリアが不満そうに口を開いた。
「やっと首都に向かえると思ったのにな」
「仕方が無いさ、エリスも重い責任を背負ってるんだから協力してあげよう」
「でもさぁ・・・・」
「今夜は多めにぶどう酒を飲んで良いからね」
「仕方無いわね。
お姉さん、ぶどう酒のおかわりー」
「少々お待ち下さい」
「フンフン、フフン・・・・」
シリアは単純だな、直ぐにご機嫌に成り鼻歌まで飛び出して来てる。
翌日は昨日より多い人数で出発したのである。
5層までの探索調査は終了してるので、道中はひたすら階段を目指す事に心掛けて進んだのだ。
「昨日より早く付きましたね。
今日と明日で行ける所まで進もうと思います」
「アバウトだね」
「昨日の探索調査で思ったのですが、冒険者が少ないなら兵士が常駐すれば良いかなと思ったんですよ」
「どう言う事?」
「ある階層で兵士が巡回して、そこを拠点にして深く潜る事の出来る状態を作って差し上げれば、少ない冒険者でも深い所まで潜る事が出来ると思うんですよ」
「遺跡の中に街を作るとか?」
「良いですね、街は大袈裟ですが近い物が作れたら自然と人が集まると思います」
確かにエリスの言いたい事は分かる。
現実に成れば深い階層ほど高価なアイテムが手に入るのだから、人も集まり国としても活気が出て利益も出るだろう。
「取り敢えず進みましょう」
一行は階段を降り、6層へと足を踏み入れたのだった。
6層と成ると他の冒険者を見掛ける事が無く成って来ていた。
「前方からウルフ3頭」
「後方からもウルフ3頭です」
「囲まれたか、シリア後方のウルフは足止めをお願い」
「分かったわ」
「範囲麻痺」を唱えた。
俺は前のウルフを麻痺に落とし入れてから、短剣を抜いた。
兵士2人がウルフ1頭を相手にしてる間、2頭の気を引き付けつつ戦う。
素早さを奪ったウルフは手応え無く倒して行く事が出来る。
前方が片付いた所で振り返ると、シリアが器用に避けながら少しづつ傷を与えてるのが目に入る。
「エリス、俺達は補佐に回るから兵士に攻撃させて欲しい」
「分かりました」
エリスの指示で兵士達がウルフと対峙する形と成った。
もし兵士達で倒せるなら、高位冒険者のパーティーでも問題無く戦えるだろう。
そうすればエリスの考えも実行可能と成る訳だ。
兵士達は大した支援を受けずともウルフを片付けた。
「エリス、5階層に拠点を作るなら機能するまで、俺達が常駐して上げるよ」
「本当ですか?」
「シリア、構わないよね」
「え、ええ貴方が言うなら協力するわ」
「それじゃ、5階層に戻り魔物の出現状況を把握しようか」
「はい」
5層に戻った俺達は中央に近い広場にテントを張った。
「貴方は首都に戻り、父に状況を伝えて可能な限り兵を出して貰って下さい」
そう言うと一人の兵士に書状を渡したのである。
1年以上は掛かるけど乗り掛かった船だし、成功させる為に頑張るかな。
「でもさ、遺跡はギルドが管理してるんでしょう?」
シリアが疑問そうな顔でエリスに訪ねた。
「ギルドは教会と共に独立した組織ですが、遺跡の管理は国で行っているのですよ。
少なくとも公国ではの話ですけどね。」
「そうなんだ」
「シリア、持ってる結晶石をくれるかな?」
「はい」
俺は貰った結晶石に魔力を込めると、部屋の四隅に埋め込んだ。
「結界」を唱えた。
「これで広間は魔物が寄り付かないかな」
「シリアさん、ダスト様は一体何者なんですか?」
「あははは、何者なんでしょうね」
「エリス、兵士を貸してくれるかな、他の部屋と通路にも結界を張ってくるよ」
「あ、はい、よろしくお願いします」
「シリアはエリスの護衛をよろしくね」
「任されたわ」
俺は新たに湧いた魔物を倒しながら、全ての結晶石を所々に埋め込み結界を張って周った。
「やっと半分と言った所かな、腹も減ったし一度戻りましょうか」
拠点に戻るとシリアとエリスが昼食を作っていた。
「結界は順調?」
「半分は終わったかな、こっちはどうだった?」
「一度も魔物は湧かなかったわ、近寄って来る魔物もいなかったわよ」
「良し、この階層を結界で包んでしまえば安全な階層に成るね」
「本当にありがとうございます」
「気にしないで良いよ、それより昼食にしよう」
二人の作った昼食を頂いた後は、再び結界張りに出掛けたのであった。
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