第9話 ハイエルフは遺跡に潜る (1)

翌日、遺跡に入る直前に陣で打ち合わせが行われた。


エリスの話では、今回の目標は5層までで6層へ降りる階段手前で帰還するとの事。

現れた魔物は殲滅する方向で、宝箱は無視する方向性の様だ。


一通りの説明を受け、荷物を確認した後は6名で遺跡えと潜り込んだのだった。


昨日までのエリスは赤地主体のドレス、装飾品タップリで完全無欠な王女様だったのが、今日は白いローブに身を包み、短めの杖に結晶石を埋め込んだ物を持つ立派な冒険者へと変身していた。


「エリスは魔法主体なんだね」


「はい、風と水の魔法が使えるんですよ」


「頼もしいね」


俺は振り返る事無くエリスと会話しながら先へと進んで行った。


少し進んだ感想だが、エリスから聞いてた程は賑わって無い様に感じた。

やはり冒険者ギルドが無いと言う点で人気が無いのかも知れないよな。


エリスは間隔的に外壁をチェックしている様だ、気配が外壁沿いから動かないでいる。


「1周したら中央のメイン通路へ入ります」


「了解です」


一人の兵士が先頭を歩き始めたので、俺は探索感知の魔法を頻繁に使う事と決めたのだ。


「前方から魔物4体来ます」


俺の言葉と同時に兵士達が剣を抜く。


カチャカチャと言う音と共に現れたのがスケルトン4体である。

1体が杖持ちだから魔法を使うタイプで、残りは剣と盾を構えているので前衛職なのだろう。


「杖持ちは俺が倒します」


最後尾にいるスケルトン目掛け走り出すと、前衛の3体が反応してくる。


「範囲行動不能」と魔法を唱えた


前衛の動きを一時的に阻害する、ダメージを受けると解けるので兵士達に任せれば良いだろう。


「サイレンス」静寂の魔法を唱えた。


魔法使いタイプのスケルトンは魔法詠唱を中断させられたので、杖を振りかざし向かって来たのだ。


「ストロングUP」腕力上昇の魔法を唱えた。


本来スケルトンは打撃属性が有効なのだが、俺にはそれが無いので突属性の短剣か斬属性の片手剣で戦うしかない。

確かに肉も神経も無いスケルトンでは、壊すしかダメージは入らないなと思う。


短剣は確実に骨を砕いて行く、両腕が砕けた所で静寂の魔法が解けたが、既に杖を持てる状態では無いので問題ない。

更に肋を砕き頭を落として終了と成った。


「ふぅ」


振り返ると既に戦闘は終わっていた。

シリアがファイティングポーズを取っていたので、全てを砕いたのだろうと想像出来る。


「カモフラージュ」変化の魔法を唱えた。


俺は落ちてる結晶を拾うと、皆が来るまで探索感知をして警戒した。

今回は少し慎重に成ったが浅い階層は問題なく進めそうで安心した。

遺跡自体が平均ランクC推奨なので、それなりに強いと思ったのだけどな。



その後はウルフやモンキーなどの魔物と戦い、階段前の部屋へと辿り着いた。


「この扉の中にいる、フロアガーディアンと言う階層ボスを倒すと、階段への扉が開く様に成ってます」


「へえー」


思わず声に出てしまったが、とても複雑な仕組みに成っているんだな。

そもそも、魔族は何の為に遺跡など出現させたのかが謎だ、何かしらの役割は持っているのだろうが、各国では何処まで調べてるんだろうな。


毎回変化するそうなんだが、今回の1階層ボスは中型のケルベロスであった。


「姫様をお願いします」


兵士達はエリスを俺達に預けると、剣を抜き向かって走り始めた。


「パラライズ」麻痺の魔法を唱えた。


「ブラインド」暗闇の魔法を唱えた。


「エリスは参加しなくて良いの?」


「はい、私はダスト様を観察してますからね」


「ダストを?」


「あの方は変わった魔法を使われますよね、全く聞いた事が無い系統の魔法です」


とうとう気付いたか、まぁ隠してた訳では無いんだけどな。


「ランクも聞いた事が無い低さに関わらず、何体もの魔物を一人で相手してしまう強さ」


「彼はハイエルフですからね」


「ハイエルフですか?」


「ダストは人族とエルフ族の間に生まれた子なんですよ」


「そうですか、特別な存在なのですね」


「なので・・・・」


「分かってます、口外は致しませんよ」


シリアも口外しない事を分かっていて、エリスに話したんだろう。

その辺の事は口止めしないでも、シリアを信じてれば問題ないかな。


数十分掛かったものの無事にケルベロスを倒し、結晶取りを行っている。


「階段への扉が開きましたわ」


エリスが指差す方を向くと、先程まで無かった入口が現れてたのだ。

結晶を取り終えると、再度陣形を組み進み始めた。

階段を降りて2層目に入る。


「まずは外周から見て回ります」


エリスは新たな地図を取り出し、現在地の確認をしていた。


「先程より広いですね」


「その地図は頼りに成るの?」


「1階層では問題無かったですね、一応地形が変わって無いかの確認も今回の任務に成ってます」


「結構面倒なんだね」


「公国もギルドに任せられれば良いのですけどね」


「他国は違うの?」


「王国や帝国では、国の依頼としてギルドから冒険者に任せてますね」


ギルドが独立した組織だとしても、国を超えての過剰な援助や協力は行わないのだろうか?

確かに自国の流通で、他国のギルドを繁栄させるのは面白く無いか。

ギルド側も今は干渉されないとは言え、不満が続けば国の直轄へと動きが出て来る可能性がある訳か、中々難しそうな問題だな。


「進みましょう」


エリスの合図で第2層の探索が開始されたのである。

































































































































































































































































































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