第8話 ハイエルフは遺跡に着く

一行は再び遺跡へと向かい始めた。

馬車が動き出すとエリスが問い掛けて来る。


「遺跡に着いたら内部を見回ってみようと思ってるのですが、ご一緒しては頂けませんか?」


「良いですよ、馬車で楽させて貰ってますしね」


エリスが僅かに安心した様に見えた。


「本来なら全部の遺跡内部を少しでも探索したかったのですが、強い冒険者が雇えなくて困っていたんですよ」


「私達はそんなに強く無いですよ?」


「いえいえ、兵士達が敵わない数の魔物を相手に出来るのですから十分ですよ」


エリスは知らないのだ、俺が規格外にランクの低い事を


「これから向かう遺跡は、砂漠のオアシス近くに出現した物です」


「今日中に着くの?」


「夕暮れには着くと思いますので、探索は明日から行いましょう」


俺とシリアはエリスの言葉に納得し頷いた。


「二方には私の護衛を優先とし、どの位の強さを持つ魔物が出るのか確認します。

更に・・・・」


シリアの話では5層までの探索を5年置きに行っていて、エリスは今回が初めての探索視察に成るのだそうだ。

現地で簡単に冒険者が雇えると思っていたそうだが、公国の様な小さな国ではランクの高い冒険者は余り多くは無くて、予想外の進行状況で困っていた所だったと言う。


「もちろん、安全に行ける階層までで結構ですのでよろしくお願いします」


「セイラさんも潜られるのですか?」


「私は遺跡の側で兵士達と陣を取り、戻られるのをお待ちしてます」


「セイラ、2・3名の兵士を連れて行きます」


「かしこまりました、首都の部隊から古参を選びます」


「お願い」


馬車は順調に進み、草原から徐々に岩や砂が多くなり日が暮れる頃、オアシスへとたどり着いたのだった。


オアシス周辺から遺跡周辺には食堂・宿屋・武器屋など一通りの店はある物の、冒険者ギルドが無いと言う所に問題を感じてしまった。


ギルドがあれば、もっと冒険者も増えると思うんだがな。


セイラから王宮仕様に作られたテントを張り陣を構えるので、一緒に住まないかと誘われたので案内されて見たが、余りにも豪華過ぎるので宿屋へ泊まらせて貰う事としたのである。


遺跡外の護衛は騎士の方々にお任せしよう。


「宿を探す前に夕食としようか」


「うん」


俺は出来るだけ賑やかな食堂を探すと、シリアの手を引き中へと入って行った。


「いらっしゃいませ、お席へご案内します」


案内された席に腰掛けると、シリアは早速ぶどう酒を頼んでいる。


「明日から遺跡なんだから程々にしてよ」


「はーい」


ぶどう酒が届くまでに料理の注文を決めた。



公国の料理は本当に美味しいと思う。

こんな即席の街みたいな所でさえ、村では食べた事も無い数多くの美味しい料理が存在するのは素晴らしい。


「公国って料理が盛んな国なのかな?」


「特別凄いと言う訳では無いと思う、人族の作る料理が美味しいのよ」


「なるほど」


「数多くの調味料と調理方法、どれを取っても他種族には真似出来ないわね」


俺達は他愛の無い話をしながらも、周囲の会話に注意を払う。


今回潜る遺跡に付いていくつかの情報を手に入れる事が出来た。

遺跡の内部は余り広く無い様で、どの冒険者も3層位までは魔物や宝箱を探すより、先に進む事を優先するそうだ。

1・2階層の宝箱には大した物は手に入ら無いと言うのも理由らしい。

5層位までなら平均Cのパーティーでも到達出来るそうだ。


俺はシリアが満足そうな笑顔を見せたので、切り上げて宿を探す事としたのである。


「今日は別々のベッドで寝ようね」


「え、ええー、いやだー」


「それなら2部屋にしようか」


「それは・・・・分かった別々のベッドで良いから、一緒の部屋にして」


多少酒が入ってるせいもあるのだろう、頬を赤く染め甘えた表情で言われると流石に断れないよな。

結局の所、俺もシリアが好きだって事なんだなと思ってしまう。


宿屋に入ると2人用の部屋を頼み、鍵を受け取って階段を上がって行った。


部屋に入ると僕は首を傾げ、シリアは喜びの声を上げていた。

受付の女性は何を勘違いしたのだろう、確かにベッドは通常の3倍位あるので、2人で寝るには十分なんだけど。

今更違いますから変えて下さいと言っても、シリアの機嫌が悪く成るだけで得は何も無いだろうな。


「今日も一緒だね」


「そうだね」


余り酔ってはいない様だし今夜は大丈夫かな、きっと大丈夫だろう。


明日の準備を済ませると、茶を入れ一休みした。


「遺跡に入ったら、俺は2人の騎士さんと前方担当するから、シリアは1人の騎士さんと後方の警戒をお願い」


「分かった」


「一応、探索感知の魔法も使うけど発動中は常に魔力が消費してくんだよね」


「大丈夫、遺跡なら雑音少ないし暗くても夜目は聞くからさ」


「流石の猫人だね」


簡単な打ち合わせも済まし、馬車の疲れを残さない様に少し早いがベッドへと入ったのであった。

シリアは服を脱ぐと下着姿でベッドへと潜り込んでくる。

俺の肩に腕を回し抱き着くと、キスをして直ぐに寝息を立て始めた。


丸一日馬車で移動、半日は調子を崩してたんだし疲れてたんだろうな。

薄着に成りたいのは種族特性みたいな物なのか。


俺も疲れたし寝かせて貰おう・・・・ZZZZ















































































































































































































































































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