第7話 ハイエルフは二日酔いを心配する

二日酔いのシリアが頭を押さえながら起き上がった。


「おはよう、水だよ」


「ありがとう」


コップを受け取ると一気に飲み干していた。


「昨日の事は覚えてるの?」


「うーん、ぶどう酒を沢山飲んでいた様・・・・な?」


「ひどいな、昨夜俺を襲ったの覚えて無いんだ」


「え、怪我させて無いよね」


彼女は慌ててベッドから出ると、椅子に座る俺の元へとやって来た。


「そうじゃないよ、自分の姿を見てみな」


「キャッ」


シリアは腕で大事な所を覆うと座り込んでしまった。

更にカモフラージュが解けてる事で理解した様である。


「ごめんなさい」


耳が申し訳無さそうに前へ垂れる。


「怒ってる訳じゃ無いから良いんだけど、お酒の量は程々にしようね」


「うん」


お互い支度を済ませると、宿を後にしたのである。

時間に余裕が有ったので、朝食の為に食堂へ入った。


「私、食欲無いな」


「無理してでも食べた方が良いよ」


それでも彼女は数口食べて諦めてしまったのだ。


二日酔いの気持ちは分からないが、かなり辛そうだし仕方ないか。

今日は馬車で移動するだけだし、直ぐに調子も良くなるだろう。



待ち合わせの正門で待っていると、馬に乗った兵士に囲まれた馬車が到着したのであった。


「おはようございます王女殿下」


「エリスと呼んで下さい、どうぞ乗って下さいませ」


俺達が乗り込むと馬車は遺跡へ向かい、街を出て行ったのである。


少し進んだ所でシリアが調子の悪さを訴えて来たので、仕方が無くおれの足に頭を乗せ、横に成らせた。


「エリス様申し訳ない、彼女酔ってしまった様でして」


「構いませんよ、私も慣れない頃は気持ち悪く成ったものですからね

あと、エリスと呼び捨てで構いませんよ。

命の恩人なのですから、かたっ苦しい言葉使いも不要です」


「分かりました」


「シリア様も同様にお願いしますね」


「は・・・・い」


ダメな相方で、本当にすまない。

俺は心でエリスに謝罪をしたのである。



「ううん、ううん」


俺の膝で唸るシリア。


せめてもの願いだ、王族の馬車で尚且つ王女殿下の前、吐き戻すのだけは止めてくれと俺は祈り続けた。


「エリス王女殿下、昼食を兼ねて休憩をしたいと思いますが」


「お任せします」


護衛の兵士とのやり取りを聞いた俺は、一先ず安心したのは間違い無いのであった。



街を出てから4時間程で馬車が完全に止まると、俺は急ぎシリアを近くの岩陰へと連れて行く。


「ここで、好きなだけ戻しちゃいな、エリスの護衛は俺一人でやってるよ」


「ごめんね、うぅぅ」


早口で言うと直ぐに戻し始めたシリアであった。


エリスの元へ戻ると2人が心配してくれる。


「シリア様の様子はいかがですか?」


「少し待てば落ち付いて戻って来ると思いますよ」


エリスの前には旅の途中とは思えない様な、豪勢な料理などが並んで行く。


「ダスト様も一緒にいかがですか?」


「嬉しい誘いですが護衛も兼ねてますので、見張りやすい場所で自分の物を食します」


「分かりました、よろしくお願いしますね」


俺は2人の元を離れると、エリスとシリア両方の元に直ぐ向かえる場所に座った。


「サーチ」探索の魔法を唱えた。


魔法を発動すると、鞄から干し肉と水を取り出した。


うーん、凄く近いと言う訳では無いが、獣や魔物は潜んでる様だな。

ここに長くいると、臭いを嗅ぎつけ集まって来る可能性がある。

これ以上近く成る様なら、俺から倒しに向かった方が良さそうだ。


「ダスト待たせたわね」


多少は顔色の良く成ったシリアがやって来た。


「思いっきり戻して、うがいをしたら大分良くなったわ」


「それは良かった、何か食べられそうかい?」


「さっぱりした果物にしとくわ」


経験が無いのでアドバイスする事が出来無いが、シリアも初めての経験では無いだろうし、任せるしか無いだろう。


軽い食事を終えたシリアはエリスの所で、非礼を詫びていた。


丁度良いタイミングかな、俺は接近して来た魔物3体を倒しに行く事を決める。


「シリア、少しエリスの側にいてくれるかな、エリス少し俺は離れます」


そう言い残し、魔物のいる場所へと向かったのだ。


「ダスト様は何を?」


「大丈夫ですよ、彼は近づいて来た害に成るものを討伐に向かっただけです」


「お一人で大丈夫なのですか?」


「優秀な冒険者ですから任せて大丈夫です」


シリアの言葉にエリスは納得し、表情から心配は消えて行ったのであった。



俺はトラの魔物を3頭見つけた、ここは先手必勝だ。


「スピードUP」速度上昇魔法を唱えた。


トラに目掛けて走り出す。


「ファイアボール」火球の魔法を唱えた。


「ウォータボール」水球の魔法を唱えた。


2頭を魔法で足止めすると、残る1頭に斬りかかった。


前足の攻撃を交わすと後ろへ回り込み、後ろ足を1本頂く。

倒れた所で左目を短剣の根本まで食い込ませた。


まずは1頭、残り2頭


「サンダーボール」雷球の魔法を唱えた。


1頭を足止めしてる間に、向かって来る魔物の下に滑り込むと、心臓を2本同時に奥まで差し込む。


これで2頭、残り1頭


「アイスアロウ」氷矢の魔法を唱えた。


「フォーリーアロウ」聖矢の魔法を唱えた。


これで完了だ。


俺は結晶を取り出さず、放置したまま皆の元へと戻ったのであった。



シリア達の元へ向かい、戻った事を伝える。


「ご苦労様でした、怪我も無い様で安心しました」


エリスが労ってくれた。


「ダスト結晶は?」


「放置してきちゃった」


「場所を教えなさい」


俺から大体の場所を聞いたシリアは、結晶を取りに向かのである。


こう言う所はしっかりしてるんだよな、近くに危険は無さそうだし、俺は待機していよう。













































































































































































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