本編2

「そんじゃあ!いっくよー!!」

(タイシ見てるかな〜?)


とまぁ、こんな感じで、俺は読心術を手に入れたわけだけど…


まさか…ここまで印象が違うとはな…


人は見かけによらぬものとはまさにこれのことだ。


「なぁ…あのコマリさん…めっちゃ美人だよな?」

(一発はやってみてぇ〜)


バレーの授業中。

それはもう、跳ぶことが多いこの競技は、頻繁に女子の胸が揺らぐ。


そして男子の心も。


「えぇ?そうか?」

俺の友人の辰馬タツマがコマリを見ながら俺に話しかけた。


「てか、お前、今どうせ一発してみたいとか思ってるだろ?わかるぞ俺には」


「お?やっぱわかるか?さすが!読心術を身に着けたと言われたタイシさんだわ。中学の頃から変わんねぇな!」


元々俺は、相手の表情と性格から相手が何を思っているのかわかる。

だから、読心術を得たとて、俺の生活が大幅に変わることはない。


「あ、私行くね!!」

(タイシ見て!!この私の揺れる胸を!!!)


あいつ…色気出して落とそうとしてやがんな…


だが、生憎、その攻撃は俺には効かないぜ!!


「うひょー!!あの胸よ!!パイナップルかって程の大きさしてるじゃん!!」

(あのデカさ…俺のタツマが元気ビンビンだぜ!!!)


ちなみにこいつにはめっちゃ効くんだけどな。


「てかさ!!お前幼馴染だろ!?そんでもって隣の席!?これもぉカード揃ってるだろ!?なんで何もねぇんだよ!!!」

(地味にタイシとコマリさんのカップリングも案外似合ってたりしてな…)


「なんで勝手に期待してんだよ!てか全然コマリと性格合わねぇし!」


まぁ、既に始まってたらしいんだけどな…

俺は気づかなかっただけで…


「んなわけねぇだろ!!!コマリさんとお前、めっちゃお似合いだって!!」

(コマリさんからくっつけて欲しいって言われたんだ!!ここで引くわけには行かねぇ!!!)


コマリあいつ…裏でそんな事を…


「お前…しぶといな…まさか誰かに命令されたとかねぇよな?」


俺の放った言葉にうげ!!と声を漏らすタツマ。


そんな分かりやすくて良いのか!?

と心配になるが、まぁ、ここまで来て鈍感系を演じてみるか…


「ははは??そ、そんな、そんな、そんなわけねぇだろ?????流石にお前、人を疑いすぎだぜぇ???」

(やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい…)



わかりやっす!!

分かりやすすぎる!!


流石に親友よ…お前のそのメンタルは見過ごせんぞ!!!!!

まぁ、今回は仕方なく見過ごすけどね。


「そ、そんな事よりも、お前…告白してみたらどうなんだよ!」

(まじここで決めないと殺される!!!!)


だいぶ圧をかけられてんのかな?

まあ、ここは匂わせくらいはしてやってもいいか…


「ああ〜…でも、まぁ…コマリは良いよな…幼馴染としても近くに入れて誇らしいぜ。」


ちなみに1mmもそんなことは思っていない。

いや、2、3mmくらいは思ってるかも。


「おお!!まじか!!!じゃあ勇気出そうぜ?行ってみようぜ!?」

(うぉぉぉぉぉ!!!!!これはいけるぞ!!!やれやれやれやれぇぇぇ!!!!)


でもまあ、俺もこいつの困った顔見たくなってきた。

よし、反抗しよっと。


「ええ?でも、まあ、今は良いかな〜…まだ友達の関係で居たいからな。まだ良いかな!」


「はぁ〜!?俺がこんなに勧めてやってんのに無視かよぉ〜!?」

(はぁ〜!?俺がこんなに勧めてやってんのに無視かよぉ〜!?)


焦ったような顔と少しばかりの怒りを交えたこの顔はとても見応えがあるな。


「ま、残念だったな。そんじゃ、そろそろストレッチの時間みたいだぜ?」


「あ、ほんとだ…」

(くそ…ここまでか…)


俺はバレないうちにタツマから少し離れると、一度、溜息を吐く。


ああいうやつを捌くのもちょっと面倒だな。

でも、まあ今回はコマリのヤンデレ度が分かったし…まあ、良いか!


「よし、そんじゃーペアとストレッチやってくれー」

(今日は偶数か…じゃあ、あまりの生徒は居ないし、大丈夫だな…)


みんながすでに決められたペアとストレッチの準備する。

そういえば、俺のペアは今日は佐藤さんだけど…


「すいません先生…今日って佐藤さん居なかったような気がするんですけど…」


「え?そうだったか…?ああ…ほんとだ…」

(偶数だったからあともう一人ペアのいない生徒がいるはずなんだが…)


「先生…ペアがいません…」

(あ…タイシ…)


先生にそう報告してきたのは、なんとコマリだった。


「ん?ペアがいないのか?丁度いいな!ちょっとタイシもペア居ないみたいだし、ちょっと二人でストレッチしてくれないか?」

(男子と女子のペアというはまあ…目を瞑っておこう…タイシにとってもご褒美だろ…)


おい、このクソ教師。もし俺がこんな人気女子の体ベタベタ触ったらどれだけ男子の反間買うか分かってねぇだろ


「へー…ッチ…」

(え?やったアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!)


外付けは嫌そうに舌打ちをするが、その中身はこんな歓喜しているなんて…誰がわかるだろうか…


「ふん…悪かったな俺で。」


「下手な真似しないでね!!まじぶっ殺すから!!はぁ…ほんと最悪…」

(早く触って…もう…我慢できないいよぉぉぉぉぉ!!!!!!タイシぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!)


「はいはい…」

まじでこいつどんだけ心と口調が矛盾してるんだよ…


「それじゃ、とりあえず、足開いてもらって前倒すからな…」


俺は両足を大きく開き、背中を押して、前に倒す。


「う…痛たたた……………」

(ああ…気持ちい……この時間がずっと続けば良いのに………)


欲望が凄いな……

ってあ。


手が滑って…


俺は背中に手を当て、体重をかけていたせいで、手が滑って、間違えて後ろから抱き締めるみたいな体制になってしまった…


って、どうやったらこんなことなるん?


「は、はぁぁぁぁ!?!?!?」

(ふぇえええええええ!?!?)


一気にクラスの視線が集まる。


「ちょ…タイシ…な、何様のつもり!?」

(あ…あったかい…ゴツゴツしてる…肩広い……もっとこうしてたい…)


柔らかいし、良い匂いがする…

なんて感想を言ってる暇があったら早よ抜け出したいんだけど!?!?!?


全男子の注目集めてるって…!!!今これ!!!!!


「あ…す、すまん…今…っておおい!!!!」


「逃がさないよ!?そう軽々と少女を抱き締めるなんて…この不埒!!!!」

(待って待って!!!まだこうしてたいの!!!!!!!離れちゃだめ!!!)


コマリは俺の腕を掴むと、逃がさないというように、また、先程の抱き締めるような体制に戻される。


く!!!逃げられない…!!!!!

あああ!!!!男子の目がギラついている!!!!


(あのインキャ…ぜってぇ殺す…)


(でしゃばんなよインキャが!!!!)


(何興奮してるんだよ…キモいな!!!)


赤く光ってるようだ!!!!!

やばいってこれ後でしばかれるって!!!!!!!


クッソ!!!!って力強いな!?


「へへへ…逃がさないもんね!!!!」

(うへへ…良い匂い…今なら唇狙える…抱きしめられてる…ウヘヘ………)


「ちょ、まじで離してくれ!!!!男子に殺される!!!!!」


「それも含めて罰だからね!!!痴漢男!!!!」

(まだ逃がさないよ…幸せな家庭を築くまで……逃がさないから…ウヘヘ…)


やばい…こいつすらハンターの心してやがる!!!!

全然心と顔が合ってねぇ!!!!


大丈夫なのか!?


バアン!!!!!


「おい、そろそろ良い加減にしろ?」

(授業中にイチャイチャすんな、こちとら彼女いない歴=年齢の男だぞ。)


少し若い体育教師が、感情のこもったバインダーの角攻撃を俺の頭に喰らわせられる。


「痛で!?」

俺は、頭を押さえて、コマリから離れた…

でも、これで男子の熱意は抑えられるはず…


「もう…本当に困っちゃいますよぉ〜!!」

(殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す)

そう言いながら、コマリは腰から細長い何かを取り出す…


俺は、慌ててコマリが先生の横に行くのを抑えて、「そ、そうですね〜!先生!!!早くストレッチ終わらせないと〜!!!」

と良いつつ、俺はコマリの手を握って、強引に引く。


「ちょ、ちょっと!?」

(手暖か…おっきいし、ゴツゴツしてる…)


とりあえず、俺は一度その場から離れると、コマリを一旦座らせて、ストレッチの続きをさせる…


やっぱり俺はコマリを落ち着かせる能力があるようだ…

良かった…てかさっき、先生に近づくとき、尖った鉛筆みたいなの持ってなかったか…?


ま…まさかな…


はははははは………


その日の体育は、ストレッチの時も、洒落にならん殺意を先生に向けるコマリと、終わった後に男子にしばかれた所為で、終始、笑えない体育だった。

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コマリの矛盾恋愛論 最悪な贈り物 @Worstgift37564

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