第3話-6
ゾグーをいなくなるとすぐにマスターソフィア様に詰め寄った。
「マスターソフィア様!いったいどういうことなのですか!?」
頭は混乱し興奮が抑えられない。胸の奥から静かな怒りが沸々と沸きあがる。
「ファルマー・オルレイン。お前がここにきて、ウォーロックやゾグー様に出会うことは、運命なのかもしれないな」
立ち上がり、オレの目をしっかりととらえている。頭全体を覆う兜から鋭い目がのぞく。「それでも、語ることはできない。すべて忘れろ。いいな」
「無理ですよ!あのゾグーは魔物ですよね?なぜ「様」と呼んでいるんですか。オレがウォーロックを倒したのを隠しているのはなぜですか!?」
オレは剣を抜いていた。マスターソフィア様と戦ってどうなるというんだ。自問自答する。戦う意味は見いだせない。だがなぜか剣を向け構えていた。
「答えることはできない。忘れろ」
「無理だ!見てしまったんだ。忘れるなんて無理だ」
力を込めて思いっきり踏み込み、剣を振り下ろした。マスターソフィア様はロングソードで力をいなし、そのまま上へとはじいた。オレの剣は宙を舞い、地面へと落ちた。なんという剣さばきだ。オレの全力をいとも簡単にはじかれてしまった。
「知らなくていいのだ。知ってしまうとお前の世界が変わってしまうだろう」
「世界が変わる?」
「そうだ。いままで見てきたもの、感じたこと、学んだこと、すべてが無になってしまうのだ」
すべて無になるだって?確かに魔物は交わることがないと聞いていたのに、こんなに近くにいた。だけどウォーロックと戦った後も普通の生活ができている。これ以上のことがあるというのか?無になるほどのことが。
「では1つだけ教えてください。あのゾグーというのは何者なのですか?」
マスターソフィア様は、少し考えるように目を閉じた。
「魔王の幹部だ」
「魔王の……」
魔物と人間が争い戦ったのは700年前。人間は勝利して魔王と契約をした。生かしておく代わりにお互いの領地を侵さないと。魔物が入れないように高いゲートで街を囲った。しかし立て続けて魔物がいて、魔王の幹部までもが街に入ってきている。さらにマスターソフィア様と面識があり、ゾグー「様」と呼んでいた……。
「これ以上は、詮索するな。その聖剣がお前を選んだのであれば、きっとその先へつながっているはずだ」
地面に落ちた、聖剣クレストソードを見た。かすかに光を放っている。それは闇の中で僅かに灯る道標のようだった。
第3話 完
ラストヒストリア~勇者が魔王を倒し平和が訪れた…というのはすべて嘘だった!本当は魔王が世界を征服していた。それを知ったオレは魔王に従うのか抗うのか~ 平川らいあん @hirakawaraian
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