交易商人シルバーソウル と 異世界の英語支配

第20話 シルバースクール

 異世界カイベシア(Kiybessia)には、ラテン文字での英語正書法を推進する団体があった。その名を「」という。だが、その正書法は、英語の綴りと発音の関係を少しだけ単純化したものであり、不規則を緩和したものであった。


 テンプルスクールがだとすれば、シルバースクールはなのであった。ただし、全自動脳内変換で異世界の話し言葉が日本語として聞こえてしまうトモキにとって、英語の発音などは無関係になるので、綴りを変える理由が不明だった。


 そもそも、全自動脳内変換は、すべての異世界カイベシアの人々に適用されるのだろうか。


 ひょっとしたら、しばらく文字がカタカナだけになったのがテラトキア限定だったのと同じで、全自動脳内変換もテラトキア限定であり、異世界カイベシア全体には効果が及ばないかもしれないではないか。あるいは、転移者・転生者だけの特典「サクシャータの祝福」だったのかもしれない。まさか、ロン・ターマからチカラをさずかったトモキだけが異世界カイベシアで使える特殊能力でした、などということはあるまいな。(そして、傍観者になっているテツカズもすべてを日本語で把握している。)


 異世界カイベシア生まれの人々は、英語の文字と発音の乖離に苦労しているかもしれないのだ。


 しかし、シルバースクールの英語簡易化正書法は、完全に厳密な表音主義とは程遠い表記法である。英語特有のがそのままのこっていることが多い。たとえば、knee, knot, wring などにおける出だしの読まない文字など。さらに、halve の l、psalm の p や l、salmon の l、talk の l など。(いや、ひょっとしたら、地域によっては、あるいは人によっては、発音するサイレント文字もあるだろう。日本人は bomber の真ん中の b を発音することがあるのだし。)


 シルバースクールを設立した人物は、旧来の地球世界の英語との違いをあまり大きくしたくないようである。スプリットダイグラフ(分割二重音字)の不使用とダイグラフ(2字1音)・トライグラフ(3字1音)の不規則是正がほとんどだ。あとは、OUGHとAUGHとEIGHなど。

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