第19話 交易共通語の重要性と難点

 異世界の言語は1つではない。地球世界と同じで、多種多様な言語が使われている。


 それでも、地球人類と同じ言語が通用しているのは、地球世界との交流・交易があったからである。


 だが、宇宙にはさまざまな異世界が存在するだろうし、地球との交易もなく言語も通用しない異世界も複数あるはずだ。


 "ほかの異世界"と区別するために、地球の言語が通用する"この異世界"を便宜的に(Kiybesse)と呼ぶこともあったが、昨今では(Kiybessia)と呼ぶことが多いだろう。


 ラテン文字は、おそらく異世界カイベシアのすべての大陸で通用する。


 そして、便宜上の共通語は、いまのところ(主に)英語であるらしい。


 だが、繰り返しになるが、英語は文字と発音の対応が複雑なので、読み書きの学習は困難を極める。テラトキアでのカタカナ支配は、英語の書き言葉の複雑さへの反発もあったのだろう。


 だが、では話し言葉が全自動で脳内変換されるのだから、英語で会話をしないにとっては英語の発音は問題でないはず。発音とは無関係に書き言葉の綴りが存在しているのだ。


 困っているのは、英語をしゃべる人々である。そして、英語の話し言葉を習おうとする人々にとっても問題である。


 テンプルスクールは、(異世界カイベシアというより)テラトキア大陸が活動拠点であり、英語カタカナ正書法を教育していたのだが、日本語勢力の転移者・転生者や生粋のテラトキア人にとっては、それなりに意味があったのだろう。地球世界との交易では、異世界カイベシアの全自動脳内変換が通用するかどうか、わからないのだから、口頭でのコミュニケーションを視野にいれておくことになる。もちろん、英語カタカナ正書法も通用しないのだから、ラテン文字での英語正書法が前提で、カタカナは補助的に使うということになる。そのカタカナでさえ糾弾されるとしても。



 テンプルスクールとは別に、カタカナではなくラテン文字での英語正書法を推進する団体があった。その名は「シルバースクール」である。


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