第2話 カタカナだけって、ラクショーじゃないの?

「言葉は通じるのか?」


「話し言葉は通じる。問題は書き言葉なのだ。」


「話し言葉は通じるのに、書き言葉は通じないの?」


「話し言葉は全自動で脳内変換。すべて日本語に聞こえる。だが、書き言葉は、そうはいかない。言語によって異なる。」


「まあ、そうでしょうね。」


「問題なのは、すべての言語がカタカナで表記されるようになってしまったという点にある。」


「すごいなあ。どんな言語でもカタカナ? 読みやすくて最高かも、ですね。」


「そりゃあ、あなたにとっては、そうなのだろうな。読みやすさということで言えば、日本語もカタカナだけの表記になってしまったぞ。


「読みづらいだろうな、それ。ところで、異世界の転生者・転移者は、みんな日本人ばかりではないのですね。」


「国籍も言語も多種多様。書き言葉も多種多様。話し言葉がすべて日本語として聞こえるのは、あくまで異世界での脳内変換のおかげなのだ。だが、書き言葉には自動変換などない。すべてがカタカナになってしまって大変になっただけだ。もともと、カタカナは日本語専用の文字。日本語にはなじむ。だが、すべての言語にカタカナが適用された場合は大混乱する。それに、言語によって音声が異なるため、言語ごとにカタカナの使い方が異なる。日本語のカタカナと、外国語のカタカナとでは、同じ音をあらわすとは限らないということになる。」


「なんでもカタカナで書いてある通りに読めるから便利、ってことじゃないのか。」


「カタカナの使い方・読み方が言語によって異なる場合、たとえそれがカタカナだったとしても日本語ネイティブにとっては悲劇でしかないと思う。」


「ラクできないのか。残念すぎる。」


「かりにラクができたとしても日本人だけだ。カタカナは日本語での発音をあらわす文字だった。日本語には向いている。だが、ほかの言語にはカタカナで表現できない発音が存在する。お手上げなのだ。あとは、発音がわからない単語をカタカナで書く場合も困る。いままでなら、発音・読み方がわからない単語でも、それぞれの言語の文字を使ってスペリングすればいいだけ。それができなくなった。」










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