異世界のカタカナ支配を打破してアルファベットで共通語を表記法改革
安井鉄和
あなたをみつけることができた
第1話 まるで夢の中のような銀世界
近頃、帰宅して自分の部屋に戻るとすぐ眠くなってしまう。もともと体力も気力もないのだし、無理は禁物だ。
しばらく前から、会社で若い外国人が増えたけど、みんな日本語しゃべるんだよね。かれらは大変だろうな。だけど、こっちとしては、社内の公用語が英語にならなくてよかったよ。まあ、かれらのほとんどは英語圏の出身ではないし、ここは
で、もう寝る。
ん? おれ、自分の部屋で寝てたんじゃないの?
あたり一面に広がる銀世界?
雪は降っていないようだ。寒くもない。
「え? 異世界? おれ、死んだのか?」
「いいえ、死んでなどいません。ここは"現世"ですが、夢の中に近い亜空間です」
「お? おれの部屋にダース・ベイダー?!」
「わたしは、ロン・ターマ。ただの人間です。あなたが、ヤスイ・テツカズ さん、ですね?」
「そうですけど、いきなりなんのつもりだ?」
「はじめましてなのに突然のことですみませんが、あなたのチカラを貸していただきたいと」
「チカラを貸すも何も、とくに何のチカラもないから無理。ほかをあたってくれ」
「"異世界"に来てくださるのなら、魔法のチカラをあたえます」
「"異世界"って、つまり"転生"するの? おれ、まだ死にたくないから、無理」
「"転生"するのではなく、"転移"するだけです。死ぬわけではありません。あまり忙しくなさそうですし、時間の自由がきくのではないかと」
「異世界なんて行ってる時間はない。睡眠時間が確保できなくなったらあぶないんだ。もともと体力ないし、車の運転だって居眠りとか困る」
「ならば、あなたは現世で睡眠をしっかりとればいいです。それでかまいません。本体を現世に維持しつつ、分身をつくって転移します。あなた自身の安全は約束します」
「分身でいいなら、おれじゃなくても、ほかの人の分身でいいのでは?」
「分身の質は本体によって決まります。あなたの場合、潜在的な魔力量らしきものが途方もないレベルなのだと判断しました。魔法が通用しない地球世界では無意味な才能ですが、異世界では事情が異なるのです」
「では、その異世界では、魔法とか、どんななの?」
「いろいろあるのですが、おすすめは防御・移動・回復・水の4種類。すべて比較的安全です。まあ、水の魔法は使い方によっては危険なのですが」
「疲れるのでは?」
「4つの魔法の中に、回復魔法があるので、使えばだいじょうぶです。ただし、おそらく"現世"では使用できないでしょう。異世界から戻るときに、回復・防御・移動の魔法を使うことになります。もっとも、あなた自身が異世界に行かないのであれば、戻るときのことは心配ないですよね」
「分身が戻ってきたとき、居場所が必要になりますね」
「分身は、現世では居場所はないでしょうね。出生届も戸籍も住民票もないので」
「現世では国籍もないか。シティー〇ンターって、いったいどうやって暮らしてるんだ? 〇ンターギルドとか、ないよね」
「ずっと異世界にいたほうがいいのかもしれないですね。居場所はこちらで手配します」
「言葉は通じるのですか?」
「話し言葉は通じます。問題は書き言葉のほうです」
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