ノンフィクション

@fishes

第1話

目が覚めた。だからってどうこうってことはない。大学がもうすぐ始まるがいつも10時に起きるため、もう少し早起きできるように、と目覚まし時計をかけているが今日はなることはなかったように思える。というか毎日鳴ってないような気がするくらい熟睡している。深夜の2時に寝る生活はそろそろ直さなきゃと思いつつも、直せないものが人間の動物的な欲求の残存している部分である。となんの理論にもなっていない意味の分からない言い訳をしつつスマホの時間を見ると8時前であった。目覚まし時計より早いわけでもないが自分の中では上出来だ。どっと安心し、そのまま瞼を閉じる...いや、せっかく起きれたのだから寝てはいけないと理性を叱咤し、スマホを手に取り無心でLINEやDMやらの返信をする。彼女からの返信がまだなのにガッカリしつつ、そのままYouTubeに指が赴く。それにしても、shortを見てると時間が経つのが早い。自分の周りの時間がきっと加速しているのではないかと私は信じている。そうでないと説明がつかない。9時頃になり1階とはいえロフトも温まって汗もかいてきた。窓も開けているが無風のためかなり暑い。ロフトの高さが微妙なため首を傾けながら四つん這いでハシゴまで向かい、下に降りエアコンの冷房のボタンを押す。すかさず、ドアを閉め密室にするがこもった汚い空気だったら嫌だな...と思いつつも邪念を振り払うように頭を振ってトイレに籠る。その後洗面所で顔を洗い、そこで初めて顔を見る。そこで違和感に気付く。「誰だ、お前は」と鏡に問う。この顔は自分のではない...なんて妄想をしながら酷い寝癖を手ぐしで直す。こんな寝癖救いようないなとすぐに諦め、バイトも予定も何もないことに安堵した。

一人暮らしをするにあたって、食パンの味の違いがわかるようになってきた。数ヶ月までは本当に分からなかった自分としては大きな進歩だ。まあ、できればもっと舌バカでいたかったなあと自虐気味に考えながら5枚切りの食パンから、2枚取り出しチョコを塗りたくる。甘すぎるし1枚だけでいいのになあ...と思いながらもう1枚も平らげる。流石に3枚目は食べれないというか食べたくない。と思い、食パンを片ずける。ソファーに腰掛け、タブレットで漫画を読む。たまに息抜きにゲームをしたり、その息抜きに漫画に戻ったり...と繰り返した。なんで息抜きに読んでた漫画をやめて息抜きの息抜きをしているんだろうとふとなにもかもがバカバカしくなって、将来の不安がどっと襲ってくる。落ち着かせるようにスマホを見ると好きな配信者が配信していることに気付く。自分はこの配信者のことがほんとに好きなのだろうかとふと考える。好きって理論的ではないのだと、理論的に考えて裏切られた時に好きを裏切られることはあるのか、今はつい考えたくなくて配信をラジオのようにして聞く。たまにコメントなんてして読まれたときは素直に嬉しくなる。この時に自分に承認欲求があるのだと気付き毎回ジーンと来る。自分の知らない部分というのはなんとも面白いものだなんて考えてたら配信が終わった。ぐうたらして時計をふと見ると既に12時半だ。しかし、12時34分を12時半で済ますのはナンセンスである。なんて考え、特段奇跡と言う訳でもないが無性に嬉しくなりながらソファーから立ち上がる。クラっと来る立ちくらみの中で、ほんのりと来る焦燥と、暇でいられる今現在の幸せを噛み締める。

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