もしもあの時の君に出会えたら

@karincahn

第1話

夢を見た。

海のように広い湖が写し鏡となって星空を照らす、星空は七色に光る星だった。そこにずっと遠くから1人、青年が夜明けと共に来た。青年は白銀の髪に金色の瞳を持っていた。風になびかれながら、私の元へ歩いてきた。

「あなたは、一体何者?」

その問いに青年が、口を開いた瞬間、霧が私を包み込んだ。いくら手を伸ばしても走っても、青年の元へは届かない。霧が濃くなり、やがて目が覚めると寝室の光景へと変わっていた。ベッドから起きると目覚まし時計の音が鳴り響いていた。私はボサボサになった髪を手櫛で整えてベッドから起き上がり、時計を止める。時間はちょうど朝の7時だ。

「ただの夢か…」

と思わず口にする。もう一度あの夢をつづっても思い出せない。私は頭を切り替えるため、声を上げた。

「よし、学校行くぞ!」

寝室のカーテンをバッと開け、窓の外を見た。晴天の空とキラキラとしたビルや人を乗せる電車など、人々がそれぞれ違う目的で行き交えていた。それを窓際で見ていると寝室のドアの向こうから聞き慣れた声が聞こえた。

「ごはんだよー」

甲高い、母さんの声が聞こえたので、クローゼットからセーラー服を取り出し、パジャマから着替えて声を上げた。

「はーい、今行く」

寝室を出て廊下から、下の階段を駆け下りる。階段の手前は玄関で、その隣がリビング、リビングでは、だいたいテレビを観るか食事をする為の場所になっている。リビングに入ってすぐ、焼きたてのパンとほんのりバターの香りがした。キッチンには、三毛猫のエプロンがよく目立つ母さんがノリノリで料理の支度をしていて、食卓には、イニシャルのTシャツがよく目立つ弟のるいがオレンジジュース片手にスマホゲームをしている。

私は椅子に座り、ご飯が揃う所を見て、気持ちがワクワクして言葉が漏れる。

「おいしそー。」

目玉焼き、ソーセージ、ブロッコリーなどがお皿の上に鮮やかに盛られ、最後にメインのバタートーストが盛る。そして母さんが元気に言った。

「朝食が揃ったわ!いただきましょう。」

みんなで手を合わせる。

「いただきます。」

フォークを持ち、私は好きな目玉焼きを食べる。外はカリっ、中はトロっとして美味しいし、他のご飯も美味しい。さすが母さんだ。ご飯を夢中で食べていると母さんが何か思い出したように私に言ってきた。

「美(み)夜(よ)、学校、もうすぐなんじゃない?」

それに気づいた私はハッと、壁に立て掛けてある時計を見ると。あまりの驚きを隠せず、声が荒げる。

「ヤバ!!遅刻だ!!」

残ったご飯を詰め込んで、手を合わせる。

「ごちそうさま」、行ってきます。」

リビングの棚からスクールバックを取り出し、玄関に行き、ローファーを履いてドアを開ける。

外は秋風が吹いてちょっと寒し、ガヤガヤと人だったり、車だったりで緊張する。家から歩道に出ると、一人、女子高校生の松坂雪、通称“まっちゃん”が何かうずうずとした様子で私を待っていた。その光景を見て、私は首をかしげ質問をした。

「どうしたの?」

「良い質問だ、桜木美夜さん。」

始まった。彼女はこういう事になるとサスペンスドラマっぽい事を言ってしまう。まっちゃんは、自分の私物である虫眼鏡を使って私を見ながら、探偵のように話してきた。

「とても嬉しい発表だ。転校生が来るぞ。」

心が躍り、思わず声をあげた。

「ヤバ!!サイコー!!」

あまりの嬉しさに二人して声がハモった。歩行者に一斉にこっちを見てきたので恥ずかしくて顔を赤らめてしまった。それをさとったまっちゃんは、気遣いながらしゃべってきた。

「とりあえず学校、行こう。」

「うん。」

駅のホームに着くと通勤ラッシュで人がいっぱいだ。そこでまっちゃんは焦り気味に言った。

「あっ、あの電車に乗らないと、次、15分後になっちゃう。」

二人、離れないように手をつなぎ、人混みの中を移動し、やっとの思いで電車に乗った。

「危なかったね。」

私たちは腰に手をあてて息を切らしていると、電車のドアが閉まり発車した。

電車の中では、あまり座る所が無かったので、出入口のドアで立って外を眺める事になった。外を眺めているまっちゃんに

「こうして見るとまっちゃん、スタイル良いんだな」

とか

「ポニーテールで可愛いな」

とか、まっちゃんに言ってみると、まっちゃんに

「おぬし、もしや拙者の事が好きなのか。」

と時代劇風に言われたので、その答えに苦笑いをしてしまった。多分私は何かを求めているのだろう。それは何かは忘れてしまったけど。


学校にはギリギリ着いた。教室ではみんな席に着いて先生の話を聞いていた。私はバレないように後ろから自分の席に行こうとした時に先生に気付かれてしまった。

「桜木、次遅れたら、ただじゃおかないからな。」

と脅してきた。私はただ「はい。。。。」としか言えなかった。その時まっちゃんは(ごめん)の身振りをして、その場をしのいでいた。私は(あとで覚えていろよ)と身振りをした。まっちゃんは手を上げて降参の合図をした。お互いに笑いをこらえながら席に着くと、チャイムが鳴る。すると、さっきより一段と周りが静かになった。そして先生の話だけが耳に入った。先生は息を詰まらせながらこう言った。

「これから転校生の紹介をする。」

生徒たちは転校生の紹介にざわめく。先生は教室の外に向けて声をかけた。

「もう入っていいぞ。」

教室の中へ歩いてくる音と共に転校生が現れた。優しい声で話をしてきた。

「乃彩です。よろしく。」

それは、おとぎ話に出てくる魔法使いのように現れた。白銀の髪に金色の瞳を持つ青年。誰もが思う彼は、その透き通るような表情と声で自分の紹介をしている。私はその顔を見た瞬間、夢で見た青年だと確信した。


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