余命10数秒
涼雨 レモン
余命10数秒
朝の4:30。
私の余命は残り10数秒と言ったところだろうか。
私は今、たった今この瞬間、高層ビルの屋上から地面めがけて落ちている。
自分から。飛び降りたのだ。
理由は色々あるけど、沢山ありすぎて思い返すには時間が足りない。
前々から漠然と消えてもいいなくらいの思いではいた。いつもの通り、眠れなくて、外を見たら、朝焼けがすごく綺麗だと思った。物を綺麗だなんて思えたのは本当に久々だったから、自分でも驚いた。
「あ、今から死のう。」
もう、この先、綺麗だと思えないかもしれない。こんな胸が苦しくなるほど綺麗な空は見られないかもしれない。
そう思ったら、自然と体は動いた。静かに部屋を出て、自分の住んでいるビルの屋上へ足を運び、柵を乗り越える前に目の前に広がる朝焼けを見た。やっぱり空は綺麗だった。
こんなに綺麗なものに包まれて死ぬのならばきっと、幸せなことだろう。
そう信じ、柵を乗り越え、そのまま1歩踏み出した。
「綺麗だな。」
高速で落ちているはずの景色はスローモーションのように見える。
朝日が、見えた。
余命10数秒 涼雨 レモン @remon_0412
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