最終話 あまねお姉さんはキミだけの…………
バス停にて。セミの鳴き声が聞こえる。
あまね「あーあ、バスもう行っちゃったみたい。まあ、二人してお天道様が高くなるまで寝てたからね。どうする? 暑いし、いったんおばあちゃんち戻る? OK。次のバスが来るまで、そこの待合い小屋で気長に待とっか」
スマホを取り出すあまね(操作音が鳴る)
あまね「うわぁ……今日も最高気温35度だってさ。いつから夏は灼熱地獄なっちゃったのかな。ん、スマホぐらい使えるよ? だってわたし神様だしこれくらいはねー。人間の営みや文化はずっと見てたから何となくは知ってるんだ。契約? あー、そういうのは……まあね、ちちんぷいぷい的な? あはは」
あまね「ふぇ……スマホの操作音って消せるの!? ……知らなかった。もうっ、笑いながらあまねおばあちゃん言うの禁止ぃ! あまね、お・ね・え・さ・んー! 今度会う時までに、お姉さん絶対スマホくらい使いこなしてみせるから! ――そんなことより……なんでおばあちゃんの家にわたしがいたのかって?」
あまね「(ちょっと寂しげに)うーんとね。キミのおばあちゃん……昔はわたしのこと見えてて、よくお喋りもしてたんだよ。キミがまだ小さい頃に、紹介してくれてよろしくって。だから、勝手にキミに期待してたんだ……。今の村の人はわたしのこと見えても、いるなーってくらいで気に留めないんじゃないかな」
あまね「(明るく)もったいないよねー、こんなに見目麗しい山神さまなのにさー。麦わら帽子被った黒髪ロングの白いワンピースの美少女だよ。ほら、あそこに咲いてるひまわりと並んだから完璧じゃない! みんな大好きなはずなのになぁ」
あまね「最近は……ネット怪談の定番になりつつあるの!? 人間……人の想像力だけは無限大ね、お姉さん脱帽だわ……こういうところ、ついていけないんだよね……」
遠くからバスが近づいて来るエンジン音が聞こえてくる。
あまね「あれ、もうバス来た? ひょっとしてバス遅れてただけ? 田舎あるある過ぎ」
あまね「じゃあ、またね。今度は冬休みかな?」
離れようとしたあまねの手を握り、パシと音がする。
あまね「(困惑)えっと、これは……このタイミングで手を握るってことは別れの握手、じゃないよね? なんか力強いし……。まさか一緒に来てってこと? ――たしかにこの村にいてもキミがいないとお喋りする相手もいないけどさ。……本当にいいの? キミの家族にわたしを親戚と思い込ませたりしちゃうよ? キミに会った時みたいに。……いいんだ。どうしよ……山も村も大好きなのに、こんなお誘いは断れないよ」
あまね「(感極まって)困ったなぁ、お姉さんキミにどんなお返しをすればいいんだろ。わたしのお願い、本当に叶っちゃった。叶えてもらっちゃった。ヘンテコな神様になっちゃったみたい……」
あまね「そうだ、お返しにキミだけの神様になってもいいんだよ? お山を離れるから力が弱まって何でもは無理だけど、色々できることあると思う! どうかな? へえ……そかそか♪ じゃあ、わたしは――」
近づいて、顔を寄せててくるあまね。
あまね「これからもずっと、キミのあまねお姉ちゃんでいるね。毎日耳かきして抱き枕したりナデナデしたりしてあげる。
嫌って言っても、もう遅いよ。千代に八千代に憑いていっちゃうから♪」
バスが止まり、ドアが開く音がする。
距離感がバグってる変なお姉さんと田舎で過ごすマッタリベッタリ夏のひと時 霜月ころな @c_novembris
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