第3話 湯あがりお姉さんは耳かきとホラ吹き達人……?


夜、和室にて。遠くでフクロウが鳴き声がする


あまね「ふぅ……いいお湯だった。どうしたの? 耳の穴に指あてて。かゆい? ダメダメ、そんなことしたら。ちょっと待ってて」


戻ってきたあまねは畳に座り、


あまね「(自分の膝をポンポンと叩いて)こっち来て、耳かきしてあげるから。恥ずかしい? そんな遠慮しないの。ほーら、はーやーくー」


あまね「それじゃ、頭をお姉さんの膝にのせて。そうそう、素直が一番。――あ、暑いからってちゃんと髪の毛乾かさなかったなぁ。ちょっと襟足のあたり湿ってる。まあ、これくらいなら耳かきしてる間に乾くかな」


※耳かき中は基本「小声」※


あまね「始めるからいい子にしててね。(慎重な雰囲気で)耳の中を……カリカリカリ、と……(息遣い)んー…………」


あまね「力加減で大丈夫かな? お姉さんあまり人の耳掃除したことないから。ん、じゃあこれくらいで続けてくね~。(息遣い)ふぅー…………」


あまねはいったん耳かきをとめて


あまね「ふふ。耳からキミの中を見ちゃうだなんて……楽しくなっちゃうなぁ。今、身体がビクッとしたね。わたしが変なこと言っちゃったせい? ごめんごめん。続けるね」


あまね「(息遣い)んー……よいしょ……」


あまね「(息遣い)はぁ…………もう、かゆいとこはない? じゃあ最後に仕上げに……」



あまね「(優しく息を吹きかける)ふー……ふー……ふー……。――気持ちよかった? 竹の耳かきを持参した甲斐があったよ」


あまね「お次は左耳。ゴロンってして反対向きになって」


あまね「よくできました。あ、キミの髪からはいい匂いがする~。一緒のシャンプー使ってるはずなんだけど不思議。つやつやでサラサラだねぇ。ずっと頭をなでなでしたくなっちゃうけど。こっちの耳も、カリカリ……していくね」


※あまねの耳かき継続中(だた、やや断続的)


あまね「なぁに? わたしが普段何してるかって? うーん……そうだなぁ。一言では難しいけど、この山をどうやって守っていけるかなーって考えるかな。村の人たちも年々少なくなってきてるけど、どうにかできたらいいなって」


あまね「自然保護と地方活性化? キミ、なかなか難しい言葉知ってるね。うん、そうだね。方向性的にそんな感じ。――(しみじみと)昔は暮らす苦労する土地だった……みたいだけど、もう活気があったんだって。でも、若い子は学校とかの関係で街に行っちゃうし、お年寄りが暮らすには不便だからさー、仕方ないのもわかるんだぁ」


あまね「今はインターネットの基地局?っていうのかな。アレが山にも建てられてるしみんなスマホ持ってるから便利にはなってるんだけど。いい解決策は見つからないんだよー」


あまね「……って、辛気臭い話はおしまいおしまいでーす。(ささやき)……ほっぺに負けず柔らかい耳たぶ~。かわいすぎか~……ああ、違うの。耳たぶに誘惑されただけで……わたしにやましい気持ちは。はい、あまねお姉さんはキミのお耳掃除に集中します」


あまね「(息遣い)んー……。カリカリカリ……と」


あまね「(息遣い)はぁ……。ん? わたしのこと、もっと知りたいの? 違う? 河童とか妖怪のこと教えてほしい……? 小ネタ的に学校で話せる感じのやつね……お姉さんが妖怪に負けた気分で悲しいけど、怖くないのを一つ」



あまね「あれは確かねー……明治時代の終わりころ。『幽霊の煮つけ』が流行ってたとか、この辺じゃなくてハイカラな都でのことらしいよ。あと、昭和の頃には幽霊というか『ヒトダマの天ぷら』が珍味として食通の間で話題になったりだとか。ふふ、面白いよね。事実か冗談かはさておき、人の想像力ってすごいと思わない? 幽霊もヒトダマもぺろりと食べちゃうんだからさ」


あまね「きっと食べたらヒンヤリするだろうなって考えたんだよ。幽霊ってなんか冷たそうじゃない? それなのに似たり、揚げたりするんだよ。アイスクリームの天ぷらと同じ発想だよね。キミなら、どんな料理にする?」


※あまねはここで耳かきを一時中断。


あまね「(堪えられず噴き出す)くはっ、あははは♪ 幽霊の冷やしそうめん! わかるぅ、イカそうめんっぽい食感よ、絶対に。今までのどの料理よりも肝から冷えて夏の定番になりそう。きっとこういう連想の中から新しい妖怪が生まれるんだよね。怖がりたい気持ちがある一方で、面白がりたい気持ちもある。人の心はホントわがままね♪」


耳の中を覗き込むあまね。


あまね「――と、そうこう話しているうちに、キミの左耳掃除も……終わりかな。やりすぎはよくないみたいだし」


あまね「(息遣い)ふぅ……もう汚れはないかなぁ。よし、こっちもおしまい。ん? こっちも耳ふぅーって、息かけてほしいの? 可愛くおねだりされたら、お姉さんとしてはやぶさかじゃないよ~」


あまね「(ささやき)それじゃ、お耳に集中して……(優しく息を吹きかける)ふー……ふー……ふー……。こんなことしてくれる人なかなかいないぞー。(気持ち長めに)ふーーーー……」


あまね「ふふ、ご満足してもらえたみたいだね。忘れられないひと時になったかな?」


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