6.異世界の車窓から


 魔法王国テラビジアに召喚された勇者たちは、城に招かれて、国王から正式に魔王討伐を依頼された。

 勇者たちは魔王を討伐のために着々と準備を進めていた。


 テラビジアでは魔王討伐は数十年に一度起こるイベントのようなものだ。

 なぜか異世界人じゃないと討伐できないので、召喚は必須だそうだ。



 ソラと僕が、いまどこにいるのかというと。

 王都の郊外にある森の中の邸宅にいた。

 王族の別宅で執事やメイド、侍従や侍女も付いて、至れり尽くせりの毎日だった。


 テラビジア人たちはとにかく僕たちを大人しくさせておこうという作戦のようだった。


 邸宅にはメガネっ子もいて、今日も本を読んでいた。

「女神様からマジックバッグをもらった」

 とメガネっ子は自慢げに語った。

「本がいっぱい入ってる」

「どのくらい入ってるんだ?」

「一生かかっても読み切れないくらい? バッグの中は向こうとつながってて新刊も手に入る」

 マジックバッグのことがよほど嬉しかったらしく、いつになく饒舌なメガネっ子だった。


 トモローとメガネっ子は戦力外通告を受けたらしく、ずっと僕たちといっしょにいる。

 無限バッグで本を呼び出す能力しかないメガネっ子と、無限魔物鉄道乗車券という能力しかないトモローでは、戦力外もやむなしといったところか。

 それからなぜか深窓の令嬢レイと灰色ネズミもいっしょにいる。二人の能力も魔王討伐とはほぼ無関係らしい。


 邸宅の裏には魔物列車の臨時駅ができた。

 トモローは大喜びだった。

 ときどき猫電車がやってきて、僕たちは異世界観光にでかけた。

 メガネっ子もついてきて、電車の中は魔光蟲の光で明るかったので、読書も問題なかった。


 猫電車の車窓から異世界の景色を眺めながら、僕はこれまでのことを振り返った。

 いろいろあったけど、今はこうして平和に暮らしている。

 隣にはいつもソラがいて、子供たちも立派に独り立ちして旅立っていった。


 幻洋兄さんは、面白そうだからという理由で、勇者たちといっしょに魔王討伐に出かけている。


 そんなこんなで、僕たちは異世界で平和に暮らしています。


 しばらくたってから、魔王討伐を終えた兄さんが、魔王の少女を連れて帰ってくるのはまた別のお話。



【Happy END】

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Azure ~ソラとフリオと魔法王国~ シュンスケ @Simaka-La

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