5.深窓の令嬢と灰色ネズミ
古代闘技場の片隅に、一連のバトルを静観していた二つの姿があった。
深窓の令嬢生神レイと二年B組の灰色ネズミこと星河しのぶである。
「ちょっと、レイさん、今の見た? Gが、Gが」しのぶは興奮してなかなか言葉にならなかった。
「あらあら、しのぶさん、そんなにあわてなくても、ちゃんと見てましてよ」
レイは右手を頬にそえて頭を少し傾けた。いつものレイのしぐさだ。
「みなさんGを魔法で倒そうなんて、どうしてそんな面倒なことをするのかしら」
「え?」
「Gなんて見つけたら叩けばいいだけじゃないの? こんなふうに、ほら」
レイは床にいた白いGをパシンとたたき、手のひらにのせてしのぶに見せた。
「いやーっ、近づけないでーっ!」
キャーキャー騒ぐしのぶを見て、レイは首を傾げた。
「たかがGですよ?」
「無理なものは無理。それよりレイさんの能力っていったい」
「ステータスオープン」
【名前】生神レイ
【職業】クマリ
【能力】プレコグ
【称号】深窓の令嬢
「私の能力は、プレコグね」
「プレコグ、未來視ね…」
よく見るとレイの額には第三の目のようなものが浮かび上がっていた。
「何が見えるの?」
「蓋然性が高いというだけで、決まった未来が見えるというわけではないの」
しのぶは空を見上げた。サファイアのように青く澄み切った空がどこまでも広がっていた。
「五木くん強みは、相手がGを生理的に嫌っているということよね。それが大きなアドバンテージになっているんだわ」
それが通用しない相手なら。
「ねえ、レイさんならが五木くんと戦って勝てる方法が分かるんじゃないの?」
「うふふ、それはもう過ぎたことよ、しのぶさん…」
「分かるんだ…。プレコグだもんね」
闘技場の舞台の上では決着が着いたようで、五木フリオたちは帰り支度をしていた。
結果はGの完全勝利で、今後テラビジアは無暗に攻撃を仕掛けないという約束をさせられた。
レイは闘技場から去る彼らを目で追っていた。
「それよりもしのぶさんは、五木くんたちと一緒に行かなくていいの?」
「え? なんで?」
「だって、しのぶさんの能力ってたぶん、ネズミ関係よね?」
「違うから!」
しのぶはぶんぶんと首を横に振った。
「ぜんっぜん違うから、あたしの能力は星占いだからね!」
【名前】星河しのぶ
【職業】占い師
【能力】星占い
【称号】二年B組の灰色ネズミ
「言ってみただけよ、そんなに怒らなくたって」
「知ってて言ったでしょう!」
レイはいつものように右手を頬に添えてにっこりとほほ笑んだ。
すくっと立ち上がったレイは五木たちの後を追って歩き出した。
「え? あ、ちょっとレイさん?」
「ここにいては勇者たちの邪魔になりそうだから。私も行くわね」
「ちょっとまってよ、置いてかないでよ!」
しのぶはあわてて追いかけた。
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