過去からエール

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高校生になってしまった!?

「またここミスしてる。瀬名さん、もう社会人2年目なんだからさ、このくらいのミスは無くしていこうな。」瀬名凛夏の上司である佐藤さんは、少し呆れたような顔をして言った。

「すみません。」凛夏は酷く沈んだ顔で言った。

ここ最近、凛夏は仕事で失敗を繰り返しいる。

仕事を始めて1年と少し。後輩も入り、今まで以上に頑張らないといけない。少し前まではそう思っていた。しかし、なかなか上手くいかない自分に嫌気がさしていた。


「終わったぁ!」ようやく仕事を終えると、午後8時を回っていた。周りには誰もいない。また最後か、そう思いながら会社を出た。

凛夏は一人暮らしをしていて、1LDKのオートロック付きマンションに住んでいる。

家の前につき、鍵を開け、扉を開ける。

その瞬間、目の前が真っ白に光り、りんかは目を開けることが出来なかった。


光がなくなり、凛夏が目を開けると、朝になっていた。

いつの間に寝てたんだろう。え、今何時!!?

時計を見るとまだ7時前だった。凛夏はほっとした。しかし、周りを見渡すといつもと景色がちがうことに気づいた。でも懐かしい場所。ここは凛夏の実家の自分の部屋だった。凛夏は自分が夢を見ているんだと思った。ふと目の前のカレンダーに目をやった。そこには2017年と書かれている。凛夏は急に目が覚めた。今は確か2024年のはずなのに…

足早に自分の部屋を出て階段をおり、リビングに向かった。リビングでは、お母さんが私のお弁当を作っていた。「凛夏、おはよう。今日は自分で起きれたんだ。お母さんいつも起こすの大変なんだから〜!今日は偉い偉い!!」お母さんは上機嫌で、フライパンに卵液をながしていた。

「ねえお母さん、今日って何年の何月何日?」

「今日は、2017年の、ええっと、7月10日よ。」

凛夏の頭にはある仮説が浮かび上がった。

「私ってもしかして高校生?」

「何言ってるの、当たりまえでしょ。」

お母さんはキョトンとした顔で、凛夏を見ていた。

昨日まで確か私は社会人で、夜遅くに家に帰ってきて………そこからの記憶が無い!!!2017年っていうことは、私は高校生2年生なの!?

私7年前にタイムリープしてるって言うこと!?

「凛夏、何難しい顔してるの、早く準備しないと学校遅れるよ!」

お母さんの言葉で、凛夏はいくら考えてもしょうがないと思い、わけも分からないまま、準備を終わらせ学校へ向かった。


凛夏の通う高校は凛夏の家から自転車で20分ほどの場所にある。自転車を漕ぎながら風の中を走ると、なんだか昔に戻ったようで、懐かしい気持ちになった。

学校につき、教室に入ると、友人である奈々がこっちへ向かってきた。

「おはよー!!!!!凛夏!」

相変わらず、朝からうるさいほど元気だなあと心の中で呟きつつ、最近はお互い仕事が忙しく、会えていなかったため、久しぶりに顔が見れたことに凛夏は高揚していた。

「おはよ!奈々!」凛夏も元気いっぱいの声で答えた。


一限目の数学の授業が始まり、凛夏は高校生に戻ったことを激しく実感した。元々数学が苦手だった凛夏はしかめっ面に教科書を見つめていた。先生の説明は聞けば聞くほど疑問が出てくるし、今聞いてもさっぱりわけがわからないので、後で奈々に教えてもらうことにした。


二限目は体育の授業。男女に別れて校庭でサッカーをする。女子は全員で20人なので、10人ずつでチームを作り、先に試合をするチームとパス練習をするチームに別れた。凛夏は先にパス練をするチームなったので、奈々と一緒に校庭の端でボールを蹴りあっていた。2人がパス練をしながらたわいもない話で盛りあがっていると、男子たちの方から歓声が上がった。気になって近づき、フェンスごしに男子のサッカーを見ると、サッカー部の関くんがディフェンスを抜いて駆け出す。相手チームの3、4人が止めようとするが、関くんは軽々とかわし、味方にパスを出した。パスが繋がりシュートが決まった瞬間、また歓声が上がった。凛夏は思わず見とれていた。スローモーションみたいにスルスルと走っている関くんの姿に目が離せなかった。

「あ、これ覚えてる。」凛夏は忘れていた高校生の頃の記憶がよみがえってきた。

「私関くんのこと好きだったなぁ。」このドキドキ、胸がふるえる感じ。同時に彼に想いを伝えて、振られてしまった時の強い孤独感、空虚感を思い出した。しかしそれ以上に学生時代の純粋な恋する気持ちが胸の中に戻ってきたようで、無性に嬉しく感じた。彼には振られてしまったが、その後も友人として接してくれたことにとても感謝している。

ポン!っと奈々に肩をたたかれて、ハッと我に返った。後ろを振り向くと奈々がにやけた顔で凛夏を見ていた。

「凛夏、関くんに話しかけちゃいなよ!」

奈々は私の背中を優しく押した。

「うん!いってくる」

私は今度こそ、関くんを振り向かせたい。心の中で宣言して、そのまま彼の元へ走った。


恋の話はさておき…

高校生の時、私が悩んでいたことは主に2つ。

1つは恋愛について。そしてもうひとつ、過去に戻った私は学生時代の思い出に浸っていたから忘れかけていたけど、この時期1番悩んでいたものがある。それは高校卒業後の進路だった。私はずっと将来の夢がなくて、行きたい大学も学部も全然決まらなかった。そんな私に転機が訪れる。2017年7月15日。この日私は家から電車を使って1時間ほどの場所にある大学のオープンキャンパスに行った。担任の先生から早く進路を決めておいた方がいいと強く言われ、嫌々来たのだけれど、この選択が私の将来を変えることに繋がったとも言える。

当時の私は何にも興味がわかず、自分が何をしたいのか、自分のことなのに、自分が分からなかった。

周りの子達が進路を決定している中、何も決まっていない私は、ひとり置いてきぼりのように感じた。本当に苦しかった。その様子を見た担任がオープンキャンパスに行くようにアプローチしてくれたのだ。凛夏は大学に入り、受付を終わらせて、案内マップをじっと見ていた。そこでふと気になった“観光学部”に行ってみることにした。旅行や出かけることが好きな凛夏にはピッタリの学部だった。今まで視野にも入れていなかったが、教授の話を聞いたり、模擬授業を受ける中でどんどん興味が湧いていった。観光職についても調べるようになり、その時見つけたツアープランナーという職業に憧れて、凛夏は夢を叶えるため、苦手な教科も必死に勉強し、第一志望の大学に合格した。大学4回生の時、1番就職したかった会社には採用されなかったが、他の旅行会社に就職が決まった。当時の私には悲しいという感情はなく、早く仕事がしたくてたまらなかった。その仕事に対する前向きな気持ちを凛夏はいつの間にか忘れてしまっていたのだ。凛夏がタイムリープして1週間。たくさんの経験を思い出し、同時に初心に返ることの大切さに気づいた。疲れきっていた凛夏の心は回復し、仕事へのやる気が満ち溢れていた。しかし凛夏は未来への戻り方が分からない。

「高校生活遅れるのもこれで最後だし、ゆっくり未来の帰り方探そうかな。」

それから1週間、凛夏は友達と遊んだり、勉強したり、スポーツしたりと高校生を満喫していた。

そんなある日、凛夏は学校が終わり、いつも通り家に着き、扉を開けた。

すると目の前が真っ白になった。とても目が開けられなかった。これってもしかして…


凛夏が目を開けると朝になっていた。カレンダーの日付を見ると、2024年と書かれている。

「元に戻ったんだ!!!」りんかはとても嬉しかった。

急いで支度をし、行ってきます!!!と元気な声で言った!

そして扉を開けた。

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