白紙の絵画

@homare0529

白紙の絵画

ある画家の男がいた。彼は計算され尽くした色使いと、繊細なタッチで多くの人を魅了する絵画を生み出していた。彼は完璧にこだわり、一枚ずつ手を抜くことなく丁寧に絵を書いていた。その分、失敗作も多く生まれた。完成した作品は、年に数個しかなく、とても希少な絵画としても有名になっていた。


ある日、彼は過ちを犯した。間違えて失敗作をオークションに出品してしまったのだ。ところが、失敗作であるのにもかかわらず、いつもの値段と同じ、高額な価格で落札されてしまった。


この時、彼はなにか得体の知れない気持ちが生まれた。その後、何かを試すような思いで、彼は雑に描いた絵画を出品した。虚しく、それらの絵もいつもと変わらぬ高値で落札された。彼は思った。

「絵画の美しさは関係なく、誰が描いたのかで値段が決まる」と。

そして彼は、精一杯の皮肉を込めて白紙の絵画を出品した。


白紙の絵画は、インターネットやメディアを通して世界的に話題になった。

そして、今までにない高価な価格で落札された。

彼はこのことに呆れ画家をやめてしまった。そんな彼の気持ちとは裏腹に、白紙の絵画は更に高値で取引された。美術館に飾れば、世界中から客が集まっていた。政府が絵画を買い取り、観光大国にするために利用しようと考える国も出てきた。絵画を盗もうとして命を落としたものや、一生をかけて絵画を守るために働いた人もいた。時が流れるにつれ、価値が上がり続ける絵画に恐怖を覚える人もいた。


いつしか、絵画に支配されるような世の中になっていた。


そんなある日、超高性能な宇宙船が地球にやってきた。人だかりができる中、宇宙人が降りて来た。

そして高圧的な態度でこう話した。

「チキュウデ モットモ カチノアル モノヲ ミセロ」

恐らく地球に価値がある物があることを知っているらしい。

世界中の人は話し合い、迷いなくこの白紙の絵画を出し、貴重さを語った。

しかし、宇宙人たちは話も聞かず、足早に帰っていった。そして宇宙船でこう話した。


「レーダーガ コワレテル コンナ ビンボウナ ホシニハ カチガナイ」

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