論より証拠

祭りとは”神仏をまつる儀式・行事”なのだと三太郎が教えてくれた。

そもそも人間が入ることは出来ない空間であること

年に一度の特殊なお祭りで婚約者即ち輿入れ相手と同伴のみ参加できる条件付きである事

参加は二百年ぶりである事

帰り道を教える代わりに人間であることを隠して恋人役をする。


[えぇか?バレたら帰れんどこの話じゃなくなってまうぞ?」

「うんうん」

「ンまに分かってんの?なて」

道中で何度も繰り返し同じ事を言われているのだ重要なことと解っていても単調な返事になってしまう。

「菊玉月様、御宗は大切な事だから繰り返し申しているのです。どうかご理解ください」

「ぁ、すいません」

「菊玉月様、それは私に向ける言葉ではありませんぞ、人は当たり前や相手の好意を蔑ろにする傾向があります。道に迷った菊玉月様に気づかないふりも置き去りにする事もできました。しかし、太三郎様はしなかった。なぜでしょうか?」


「思わず声をかけてしまって丁度よくお互いの利害が一致したからでは?」


「うむ、成程お互いの利害の一致ですか、では、こんなに懸命に話を伝える必要もない。太三郎様はその祭りに参加さえできればいい。約束を守ったからと相手も約束を守るとは限らない。約束とは、信頼関係で成り立っているのです。そして相手は約束を守るだろうという自分を信じているのです。」


「なる…ほど」


「優しさなのです。つまり。人は優しさより強さに憧れる動物の様子ですね。

人にとって優しさは蔑ろにできるほど軽いのだろうと幕丸は人間を見ていて思いました。」


「…」


「幕丸辞めや。儂もしつこかった。」

「いや、俺も悪かった。」

「フンっ」



「今年は本当に参加するのだな?これは驚きだ。」



‼︎−…ッ


気配なく声がし背筋か固まる朔

幕丸は跪き

太三郎は朔をゆっくり自分の後ろに隠す

「太三郎?こんな所で何をしてるんです?」

「隠神(いぬがみ)?参加しようと思ってな!」

「参加?珍事ですね!お相手にご挨拶したい」

「相手?菊玉月ー」

太三郎はそっと朔の口に人差し指を一瞬添える。


腰に手を添え朔を隠神へ一歩前に押し出す

「菊玉…ほぅ…菊玉月よろしく」


『コクン…』会釈をし求めてきた手に両手で対応する。

チクン『痛ッッ』ギリギリで声を抑え隠神の顔を見上げる

「あら、すいません何か?」

首を左右に軽く振り何事もないことを伝える。

「では」冷たい笑顔を残し暗闇に溶けてゆく


ずっと跪いていた幕丸が素早く動く「菊玉月様!手をお見せなさい」

「大したことないです少しチクっとしただけですよ…あ…れ?」

目の前の幕丸や太三郎が歪んで暗闇に溶けてゆく様に見える


「蓮・姶!!菊玉月様を支えるのです!」

「さ…「御宗!!菊玉月様です」菊玉月!約束は守る怖がるな儂を呼べ儂を信じ抜け」と耳に残る。

声が響いた時には目の前は真っ暗になっていた。


「ここは????」

見回すかぎりの暗闇に耳がツンとするほどの静寂に包まれる。

広いのか狭いのかさえ分からない寒くないはずだが悪寒を感じる

「菊玉月様ぁ姶です」

「菊玉月様‼︎蓮です」「大丈夫1人ではないですよ」

「蓮ちゃん姶ちゃん大丈夫?」震えている二人をギュッと抱きしめる

「大丈夫‼︎太三郎は信じろと言ってたから大丈夫だよ」

手先の感覚でしか分からないが二人が頷き暫き抱きしめ返してくれた












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濃い出会いは恋で愛 巳柳 柳巳 @noyume11

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