SとNの間

闇にゆっくりと溶け込んでいっていると錯覚する場所だ。

暗い闇の間にゆとりがあるとするなら多分ここだろう。


どうして我等がここにいなければいけないのか?昔は良かったと言いたくない。

しかしそれは今の不満を認めたくないからだ。



”ゆっくりと流れる時間の中で私は何を得たんだろう…。

一体どれほど許せば分かり合えるのだろう。”



「太三郎は何をしてるんだ?」

「今年の神在月には参加するそうですぞ」

「あれ程、拒んでいたのに?ついに諦めたか、せいぜい犬か猫か…子か」

「それが…。先刻報告が、人型の様でして…」

「人…?まさか…あやつ300年本当に待ったのか?フッフハッハ」

「隠神(いぬがみ)様?」

「いや、執念だな。ククッ今回は守れるかなぁ?楽しみが増えた。さて、あいつはどう出るのか」

「…隠神様よろしいのですか??」

「何が?」

「…いえ、意のままに」

「稜威丸(いつまる)…幾年の時間に選択肢が同じと思う方がマヌケだと思わんか?」

「選択肢が意思表示とは限りません。私たちは此の200年で何が選択出来たんでしょうね」

「殊勝なことを言うな。さて、見に行って本当なら連れてこようか選択肢の為に…クククッ」

数十年ぶりに笑ったように、ぎこちなく歪む。

表情があることすら数十年ぶりなのかもしれない。

稜威丸はどこか感慨深くも憂うように隠神に付き従う。


「この隠神刑部(いぬがみぎょうぶ)が動くのだ、楽しくなるぞ!!」


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