愛で生きる

2人の過去の話をしているうちに時間はすぎ終点の県境に着いた。

電車から降りると生ぬるい風が僕の頬をゆっくり撫でた。嫌な予感と気持ちの悪い空気を感じ後ろを振り返るとそこには制服姿の4人の警察官が立っていた。

「西 那月くん。 東 愛生くんだね。2人を保護に来ました。」

4人の警察官に囲まれた僕らは逃げられるわけがないと悟り強く手を2度と話さないと言わんばかりの力で握りあった。

夕日は僕らの心を表しているかのように沈んでいった。それを背景に2人の逃亡劇も未遂であっけなく終了した。

僕は神林を殴ったことと教室を混乱させたこと駆け落ちをしようとしたことで2ヶ月の停学になった。愛生は事情も事情だったため2週間の停学で済んだのだが愛生は学校を辞めてしまった。

警察からは愛生との2年間の接触禁止を言い渡され連絡も取れなくなった。


ー3年後ー

あれから僕は無事に高校を卒業して都内の大学に進学した。早くももう2年生だ。

愛生はもう地元には残っておらず上京して働いていると風の噂で聞いてから勉強をしっかりこなして2年を乗り越えた。

大学生活もずいぶん慣れてきてもう2度目の冬にさしかかった。いつも通り居酒屋のバイトを終えるとしんしんと静かに雪が降る公園のベンチで暖かいココアを片手に僕の誕生日を迎えようとしていた。

「19歳も会えんやったな。20歳では絶対見つけるけん。僕は、、ナツはさ幸せやけん」

そう呟いて冷たい風と共に20歳を迎えた。

「ナツは幸せになったんやね。はいあめちゃんどーぞ」

後ろから優しくて大好きな声が降ってきた。

「愛生。」

僕は突然のサプライズに戸惑ってしまった。

「3年目の返答まだだったよね。僕もナツのことが好きだよ。いつも僕のことを見てくれていたナツは優しくて繊細で少しドジででも真面目でそんなナツに僕も惚れていた。もちろん今も」

「ナツ。もう離さない。ずっと今度こそ一緒にいよう。」

冷たい雪と冷たい空気の中小さな公園で僕らは雪をも溶かすほどの熱い口付けを交わした。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

愛で生きる ましし @macc_o7

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画