第13話 「蜜の味」
私が失踪して3週間が経った。毎日毎日私の事がニュースで報道されている。甘い蜜、私が大好きな蜜。もっと溺れたい。だけど最近パトカーが沢山この辺りを行き交っている。怖い、もし見つかったら?警察に通報されたら?私達の甘い日々が終わっちゃう。そんなの嫌だよ!無理だ、お引越ししたとしても、隣町、隣県に行ったとしても、見つかっちゃうかもしれない。苦い、怖い、辛いよ。自然と涙が溢れていた。
「桃果、?どうしたの?怖くなっちゃった?」
「うんっ、カナタぁ、!怖いよぉ!このまま続くならいっそ┈┈!」
と言いかけた時、アパートの前にパトカーが止まる。沢山の警官がパトカーから降りてアパートに向かって来る。苦い、苦い、見つかった?嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!カナタは私をお姫様抱っこし、持っていたライターの火を付け、ライターを投げ、お部屋を飛び出した。火が燃え広がっていく。煙がどんどん私達を追いかけて来る。何処に行くの?非常階段を登って行くと、屋上に通じるドアが見えた。カナタはそれを開け、私を屋上の床に降ろした。周りを見渡すと倉庫が見えた。
「桃果、倉庫の中見てみたい?」
私が頷くとカナタは私の手を取り倉庫に連れて行ってくれ、鍵を開けるとそこには、沢山の人の死体が転がっていた。私は怖いとは感じなかった。顔が滅多刺しにされてる人、頭が潰されている人、そんな人達が沢山居た。そっか、私と同じなんだね。カナタ。なら、もう終わりにしよう。こんな苦い世界、要らないよ!
「ねぇ、カナタ。甘いまま終わりたい。」
「そうだね、桃果。行こうか。」
私達は手を繋ぎながらフェンスが無い屋上の端を目指して歩いて行く。近づいていく、どんどん近づいていく。私達は最後に思いっきり強く抱き締めあった。そして、屋上から、手を繋ぎながら、飛び降りた。幸せだった。この日々に、甘い蜜に、苦い恋に。さよならを。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
『次のニュースです。失踪していた水無桃果さん17歳と、大学生の穂村カナタさん20歳が立ち入り禁止のアパートの屋上から転落死したというニュースがありました。アパートの303号室には生活していた痕跡が見つかっており、穂村さんが水無さんを失踪させたとして警察は捜査を進めています┈┈┈┈』
嘘だ、嘘でしょ?桃果、?ごめんなさい、救えなくて、ごめんなさい。苦い蜜に毒されていたのに、救ってあげられなくてごめんね。
苦い蜜に、甘い君に、さようなら。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
甘い蜜苦い恋 羽音リネ @rine3987
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます